生ごみ・下水汚泥・家畜糞尿からのメタンガス利用


 メタン発酵は嫌気性発酵とも呼ばれ、酸素の存在しない条件下で微生物の働きにより、有機物がメタンガスに変換されるプロセスである。
メタンガスは、牛のげっぷや人間のオナラにも含まれているが、天然ガスの主成分で質のよい燃料である。メタンガスは、天然ガスのインフラストラクチャーを利用することが可能であり、その点からも、普及しやすいバイオマス資源利用の形態だと考えられている。
よく沼やドブからぶくぶくと泡が出ているが、これはメタン発酵現象である。余談だが、メタンガスには、二酸化炭素の約20倍の温室効果がある。パームオイルなどの農産品加工工程において出る廃棄物(しぼりかすなどの生ごみ)が腐敗し、メタン発酵の結果発生したメタンガスの大気中への放出は、温暖化の原因となっている。
 メタン発酵は世界中で行われており、EUを中心とするヨーロッパで特に盛んである。ドイツでは現在400基の農業廃棄物バイオガスプラントが稼動しており、オーストリアでも70基が稼動している。インドでは、バイオガスプラントの製造を援助する国家プロジェクトが行われており、1991年には1万9千基の発酵槽が設置された。中国では家庭用のバイオガス発酵槽は525万個に上る。
日本では、第一次石油危機以来、大規模下水処理場にメタン発酵処理を採用する都市が増えている。最近の例を挙げると、2001年3月に完成した新潟県の奥阿賀汚泥再生センターでは、し尿、浄化槽汚泥、生ごみ等を併せてメタン発酵させ、処理している。
家畜糞尿からメタン発酵を行っているバイオプラントとしては、京都府八木町、北海道江別市、北海道網走市などですでに稼動中である。1999年の家畜排せつ物リサイクル法、2001年の食品リサイクル法の施行により、有機ごみの処理としてのバイオガスプラント建設が今後さらに増えていくものと見込まれる。
 バイオガスプラントの普及阻害要因としては、全てのバイオマス発電に言えることだが、電力会社による電力買取価格が明確でない、または低すぎるということであろう。また、エネルギー効率を高めるためには、発電と同時に廃熱をいかに有効利用するかが課題となる。
バイオガスプラントは、二酸化炭素削減、メタンガス削減といった温暖化対策、臭気防止、水質汚染防止、土壌防止などの観点から環境維持に大きく寄与するものであり、相応の優遇策、助成策が行われるべきであろう。

参考文献
横山伸也『バイオエネルギー最前線』森北出版
新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用バイオマスからの実用的なメタン発酵技術及び産生メタンの工業原料技術の研究開発」平成13年3月
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)北海道支部「北海道バイオガスエネルギー利用ガイド」平成十三年三月
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「バイオマス系廃棄物の有効利用技術とその普及シナリオの調査」平成13年3月