T 制度・法律の動向
シックハウス対策としてのバイオマス資源の活用
 シックハウス症候群は、室内の建材や家具に含まれるホルムアルデヒドなどの化学物質による室内空気の汚染が原因となって、目の傷み・頭痛・吐き気・アトピー性皮膚炎・身体疲労・ストレス・情緒不安定などの症状が出るものであり、潜在的な患者は、全国で数百万人に上るとも言われている。
 シックハウスの原因とされる化学物質については、厚生労働省が室内の濃度基準の指針を定めている。また、住宅建材も化学物質が出る程度がわかる等級分けが、日本工業規格等で定められている。
 学校に通う子どもたちに症状が現れる「シックスクール」、職場などで発生する「シックビル」の被害も、徐々に明らかになりつつある。2001年9月、厚生労働省は、「職域における空気中のホルムアルデヒド濃度低減のための指針について」というパブリックコメントを発表している。 2002年7月、建築基準法が改正され「シックハウス症候群対策」が織りこまれた。この改正により、一定の気密性を有する建築物の居室には換気設備の設置を義務付けられ、クロルピリホスおよびホルムアルデヒドを含む建築材料の使用が規制される。
 全国の消費生活センターに寄せられるシックハウス症候群に対する相談も急増しており、2000年度以降、年間300件を超えている。
 
 そこで注目されているのが、漆喰、リノリウム、コルク材、竹、麻、珪藻土、漆、柿渋、和紙、古紙やホタテの貝殻などでつくられた壁材といった自然素材の利用である。これらは、地域のバイオマス資源を原料したものが多い。
 「住む人の健康を守る」という重大な理由から、施工時に多少割高であっても、有害な化学物質を接着剤や塗料などに使っていないこうした内装材を利用したいという消費者は増えつつあり、こうしたバイオマス製の内装材・建材への関心は、今後ますます高まっていくものと見られている。
 
写真:エコハウスの施工例。
   地域産の間伐材や天然素材による壁材を多用している

   
         
  参考:中野博著『シックハウスよ、さようなら』TBSブリタニカ 2002年他      

 
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