NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
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2004年の動向
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(1)拡大するバイオディーゼル燃料利用

 バイオディーゼル燃料は、植物性油脂(食用油、廃食用油など)等を加工したディーゼルエンジン用の燃料の総称である。植物性油脂にメタノールを添加し、アルカリ触媒により脂肪酸のメチルエステル変換反応を行い、脂肪酸メチルエステル(軽油に近い性質を持った物質)を製造するのが一般的である。この時、グリセリンが副産物として産出する。
 バイオディーゼル燃料の原料としては、欧州、とりわけドイツ、フランス、イタリアでは主に菜種油が利用されており、米国では主に大豆油が利用されている。日本では現時点では主に廃食用油が利用されている。欧米ではバイオディーゼル燃料の利用が一般化しつつあり、軽油との混合燃料などは広く普及している。
 日本でも家庭、飲食店、給食センターなどから出る使用済みてんぷら油を利用しバイオディーゼル燃料をつくる動きが、「菜の花プロジェクト」を中心に広がっている。
 バイオディーゼルに代表されるバイオマス由来の燃料は、化石燃料由来の軽油(ディーゼル燃料)とは違い、大気中のCO2を増加させない炭素中立(カーボンニュートラル)というメリットを持っており、その普及が期待されている。

菜の花畑(提供:滝川市)

(2)注目される京都市の取り組み
 とりわけ注目されるのは、京都市の取り組みである。2005年2月に発効した「京都議定書」で世界的に注目を浴びる同市では、地球温暖化防止京都会議に先立って1997年からバイオディーゼル燃料を市内のゴミ収集車に利用するとともに、家庭からの廃食用油の回収システムの構築にも着手、現在、市内約800拠点において年間約12万リットルの回収が実現している。
 また、2000年4月からは一部の市バス約80台の燃料(20%混合)としての使用を開始し、年間約150万リットルのバイオディーゼル燃料を使用することにより、同量の軽油の使用により発生する年間推定約4000トンの二酸化炭素排出削減に成功した。
 さらに2004年6月からは、京都市南部クリーンセンターで日量5000リットルの日本最大級のバイオディーゼル製造プラントが稼働している。

(3)自治体による自主基準づくり
 さらに京都市では、バイオディーゼル燃料のより一層の普及のため、品質が規格化されている欧米にならい、日本ではまだ規格化されていなかった空白を埋めるべく、学術経験者などの協力を得て、暫定基準(京都スタンダード)の制定に乗り出した。
 新しい分野で地方自治体が中心となって基準づくりに乗り出すことは、過去の例が少なく、今後の行政の手法として、バイオガスなど様々な分野で応用されるべきものであろう。
 こうした京都市の動きなどを全国に広めていくために、バイオディーゼル燃料利活用推進自治体フォーラムが開催され、バイオディーゼル燃料利活用研究会のサイトが2005年2月にオープンするなど、回収ルートの整備やバイオディーゼル加工技術が発展途上といった多くの問題を抱えつつもバイオディーゼル燃料への取り組みは活発化しており、今後が期待される。

参考: 菜の花プロジェクトネットワーク
  京都市廃食用油燃料化事業HP

表 主なバイオディーゼル燃料利用の取り組み (地方自治体が関っているものが中心)
地     域
取  り  組  み  の  内  容
長野県 長野市、松本市、上田市などで廃食用油の回収及び菜種植物の栽培などを開始。給食センター車、農業用機械、観光施設などで活用。
新潟県上越市 廃食油からつくられたバイオディーゼルが、市の公用車と上越市環境衛生公社のゴミ収集車で使用されている。
千葉県 菜の花の栽培、菜種油の食用としての利用、廃食用油を回収し、せっけんやバイオディーゼルとして加工、利用をめざす「菜の花エコプロジェクト」を開始し、2004年は4.3haで収穫。
静岡県トラック協会 静岡県大東町他で栽培された菜種を原料にしたディーゼルトラック用バイオディーゼル燃料利用実験を進めている。2004年の浜名湖花博でもデモストレーションバスが稼動。
滋賀県 近江鉄道(彦根市)と江若交通(大津市)が2004年10月から、共同でBDFを使った「びわこ横断エコバス」を運行。
滋賀県新旭町 住民主体の「菜の花エコライフネットワーク」が「菜の花→菜種油→廃食油→燃料化」という循環型リサイクルシステム構築を目指し、活動中。
滋賀県愛東町 BDF精製施設ともみ殻や木くずからくん炭を作る炭化施設などを備えた循環型拠点施設「愛東エコプラザ・菜の花館」を2005年1月に開館。
京都市 廃食用油を回収しバイオディーゼル燃料を製造。ゴミ収集車や、市営バスの燃料として活用中。
広島県大朝町 NPO法人INE OASA(いーね おおあさ)を中心に空き農地を活用した菜の花の栽培、廃食油の回収等によってバイオディーゼル燃料を製造し、スクールバス、町営バスなどに利用している。
香川県善通寺市 学校給食に使用する食用油から出てくる廃食油を燃料化プラントで燃料に精製し、ゴミ収集車を稼働させている。
鹿児島県曽於郡 曽於郡にある8つの町から委託を受けてゴミの回収をしている「そおリサイクルセンター」が廃食油回収も実施している。廃食油燃料をゴミの回収車などに使用。




図 京都市のバイオディーゼル燃料(BDF)利用システム(提供:京都市)