(3)「圧縮・減容」と「移動」がキーワードに

 バイオマス資源の特徴としていつも筆頭に挙げられるのが、資源が分散していること、資源に水分が大量に含まれていることが多く、体積がかさむことである。この結果、資源収集・運搬コストが極めて高くつくものになり、事業の採算性を悪化させることは、これまでもたびたび指摘されてきたところである。
 一つの答えが処理プラントの大規模化により効率を高め、収集・運搬コストの圧縮・吸収を図る方法であり、それなりの成果を出している。しかし、これはある意味特殊解的なもので、成立する条件は限られているし、わが国の地理的・社会的条件から考えて普遍的なものとはなりにくいのが現状であろう。
 とりわけ大規模プラントの設置が困難な、都市近郊地域や中山間地域においては、やはり移動型の「圧縮・乾燥装置」の実用化がキーワードとなってくるのではないだろうか。下の写真でも明らかなように、乾燥工程を通じた資源容量の減容効果は圧倒的なものがあり、間伐材、タケ、剪定枝などの木質資源のみならず、食品廃棄物、畜産廃棄物などほとんどのバイオマス資源での利用が可能である。
課題としては、破砕→乾燥工程でのエネルギー消費が大きく、しかも現状では重油を使用するケースが多いということでトラックの燃料消費を考えるとライフサイクルアセスメント的には、効率のいいシステムとは言えないというところである。バイオディーゼル(BDF)の利用などの工夫が必要であろう。
 徳島県においては、破砕→乾燥→ペレット化を大型コンテナ一台でこなす「移動型前処理装置」の実験を行っており、今後が注目されている。

 移動型バイオマス処理装置

 減容化前の資源(タケ)   減容化後

写真提供:東邦化工建設株式会社、(株)マルミ

(4)2006年をバイオマス適正利用元年に!

 バイオマスニッポン総合戦略の始動以降、バイオマスという言葉もようやく定着し、一部にはバイオマスバブルという現象もあるという(筆者やバイオマス産業社会ネットワークにとっては無縁な言葉だが)。しかしながら、バイオマス資源の適正な利用という課題は残ったままのようである。原油価格の高騰により、多くの関心が集まり出した今こそ、地域資源の活用、環境保全といったバイオマス利用の原点に振り返るべきであろう。


<バイオマス産業社会ネットワーク副理事長 岡田久典>