バイオマス、とりわけ地域と関連の深いバイオマス利用事業に関わる人たちにとって、最近ますます痛感させられているのが、月並みな話ではあるが、「人材の不足」であろう。まあどこの業界でも同じだよという話が聞こえてきそうだが、バイオマスにおけるそれは極めて深刻なのではなかろうか。決して現在従事している人の能力の問題ではなく(むしろレベルは高いと自負しているが)、対象となるものが手ごわすぎるのである。
 私もバイオマスタウン事業を含めて、大小様々な事業に参画しているが、バイオマス利用ほど従事する人の「懐の深さ」というか、オールラウンドなマネジメント能力を問われる分野は少ないし、この傾向はこれからますます顕著になってくると考えている。
 考えてみれば、資源量を正確に把握し、収集・運搬を組織化しコストダウンし、需要を確保し、それに応じたプラントを導入する。プラントを建設するだけでは仕事は終わりではない。赤字になりがちな運用をいかに収支とんとんに持っていけるのか、まさに薄氷を踏むような場面の連続であろう。もちろん大規模なプロジェクトであれば、それぞれの専門家を配置することも可能だろう。しかし収益性に不安があり、小規模の足回りのよさを生かす機会が多いバイオマスの利用においてはそんな余裕はもちろんない。一人の人間が相当幅広く担当しなければならないのが現状だ。資源も技術も運用も一通り経験し、さらに地域との合意形成など多様な要素を理解できるジェネラリスト的人材が求められているのだ。

<バイオマス産業社会ネットワーク副理事長・山梨大学客員教授
岡田久典>