我々は、持続的発展が可能な循環型社会の実現のためにケナフという植物を使い、自動車部品開発を行ってきた。石油を使った製品では資源枯渇問題や廃棄の時の二酸化炭素排出による地球温暖化問題がある。それを解決するために自動車部の内装部品はもとより外装部品まで再生可能な植物(天然資源)で作れないかという課題に日々取り組んでいる。
 天然資源の工業的利用を考えるとき重要なことは、供給の安定化と品質の安定化である。そのためには、供給側の農業と使用側の工業が両者歩み寄って最新技術を駆使して共同開発し、工業材料として利用でき、供給も安定し一定品質の植物資源の新しい生産方式を確立することが大切である。我々はインドネシアでのケナフ栽培でこの新しい試みに挑戦し、内装部品の一部に実用化して来た。
 しかし常に頭の片隅にあるのは、工業用植物資源を国内から調達できないかということである。海外から植物材料を運んできて、それを加工して使うのではなく、「地産地消」という言葉があるように、日本の豊かな自然と共に成り立つ工業というものに思いを馳せている。そこで我々は、古くから日本で使用されていた苧麻(まお)に着目してその植物性工業原料を活用した製品化をめざすプロジェクトを始めた。苧麻は細くて長く、強い繊維である。長年、植物部品開発に携わったものとしては非常に魅力のある繊維である。更にうれしいことに、この植物は日本各地で目にすることができる国産植物で、縄文時代の古来から繊維材料として利用されてきた。
 詳しいことはまだ書けないが、安定した供給と一定の品質を確保するために新しい栽培技術と新しい繊維抽出技術を使い、工業材料化に向けてこれまでのケナフの経験を生かしてチャレンジしている。国内産雑草から自動車部品をつくるという夢の実現を急ぎたい。

 まお(芋麻)自生状況

<トヨタ車体(株)新規事業部長 平田慎二>