林産業の振興とバイオマス利用

(1)国産材利用促進へ向けた地域材住宅振興を

日本は、人工林の更新で国内の木材需要はほぼ賄える資源量をもちながら、木材自給率は2割程度であり、8割を輸入している。日本で利用可能と見られているバイオマス資源の過半は森林由来のバイオマスだが、国産材の利用を促進しなければ、端材などのエネルギー利用はままならない。エネルギー利用は木材の最も価値の低い利用法であり、木材の生産、製材、加工、販売のトータルなシステムの中で、エネルギー利用を位置づけないと採算を取ることが難しい。地域の木質バイオマス資源利用促進には、地域材利用との連携が欠かせないのである。

では、その国産材をどう売るか? 国産材が高いというのは過去のイメージであり、現在では外材より安価なものも出現している。しかし、大量調達が困難であること、乾燥材などの品質上の問題、流通、マーケティング等に課題があることが指摘されている。

そこで注目されるのが、地産地消とサステナビリティ(持続可能性)である。輸入木材には、2〜8割を占めるといわれる違法伐採木材の問題(p10参照)や、たとえFSC(森林管理協議会)などの認証材であっても、北欧など遠方から輸送する場合、輸送にかかるエネルギーが莫大となるといった問題がある。

ウッドマイルズ研究会は、輸送エネルギーの観点から、地域材利用振興の活動を行っているが、同研究会の作成した右図によると、地域材住宅の利用木材の輸送過程におけるCO2排出量は、平均的な木材に比べて1/8、欧州材住宅に比べ1/20以下となっている。他の条件が同等であれば、明らかなCO2削減効果が見込まれることから、グリーン購入に地域材利用を組み込むことは可能であろう。

図:木造住宅の木材輸送過程排出CO2

図:木造住宅の木材輸送過程排出CO2
(40坪の木造2階建て住宅の場合)
出所:ウッドマイルズ研究会パンフレット2006

当然のことながら、地域材の利用は地域の雇用維持・創出に役立ち、地域資源の有効利用となる。中国などでの急速な木材需要増加が、木材の国際価格を押し上げており、国産材供給の重要性は資源確保の点からも差し迫った課題となっている。

参考:ウッドマイルズ研究会 http://www.woodmiles.net/

(2)拡がる地域材住宅

こうしたことから、戸建木造住宅を地域産材でつくる取り組みが全国各地に広がっている。NPO法人緑の列島ネットワークは、「近くの山の木で家をつくる運動」を提唱し、現在、全国200ヶ所以上に広がっている*1。

 

シックハウス症候群や、アトピーなどアレルギー体質の家族をもつ施主は、新建材などを使わない木造住宅に高い関心を持っている。品質やデザインなどへの要求が高いが、ロハス(健康や持続性に関心をもつ消費者)層もターゲットとなる。

また、地域材住宅に木質ペレットストーブや薪ストーブなどバイオマス利用機器を組み込むことも非常に有効であろう。地域材に関心をもつ層はスローライフを好む傾向があり、バイオマス利用にも関心をもちやすい。千葉県のある住宅ビルダーは、自社の住宅展示場にペレットストーブを設置し、すでに20棟以上にペレットストーブを導入している(写真)。

住宅展示場に設置されたペレットストーブ

住宅展示場に設置されたペレットストーブ
写真提供:白門建設興業

ペレットストーブは本体価格が20万円以上と割高だが、新築やリフォームの際には高額の費用を払うため顧客は抵抗なく導入しやすく、煙突工事も同時に施工できる利点もある。

薪ストーブを導入した顧客は、薪を自分たちで調達すればタダになるため、林地残材などを熱心に収集し、利用している。学校などに薪ストーブを導入し、児童・保護者、地域住民が参加するイベントで地域材を調達すれば、環境教育や普及啓発の効果も期待できる。

また岡山県備前市のように、市民からの出資などによりペレットストーブなどを設置、保守点検、燃料供給のサービスを提供するといった取り組みも始まっている*2。

(3)地域材振興へ向けて

農水省の間伐材腰壁

こうした地域材住宅振興には、住宅ローンなどの金融と組み合わせたシステムも有効であろう。また施主が、どのような判断や情報(口コミ、情報誌、インターネット等)によって住宅を購入しているかリサーチし、地域材住宅に関心のある層に、具体的にどうすれば建てられるかの情報提供も重要である。地域材利用業者のネットワーク化、品質向上、広報宣伝も欠かせない。「県産材住宅」といった形で囲い込むより、通常の住宅ビジネスに地域材を浸透させた方が、行政にとっても低コストで需要を拡大させることが可能である。2006年、東京都でも「多摩産材認証協議会」による認証が始まったが、京都府産材認証制度のように地域材の調達に関する情報や、地域の木材加工品のインターネット等での写真入の製品情報、実物展示等地域小売との連携など、利用者に対する情報提供は、地域材利用増大にとって重要である。

また、農水省本庁などではヒノキやスギの間伐材を腰壁に設置している(右写真)。このように高層ビルの内装に間伐材などを利用すれば、需要創出となるだけでなく、室内環境の改善にもなり、広く民間にも普及することが望まれる。

コラム◆日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン

京都で薪炭材など地域の木質バイオマス利用推進の活動を行っている団体、「薪く炭くKYOTO(しんくたんくきょうと)」は、「日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン」を展開している。木材需要の8割が輸入される一方で、日本の人工林は荒れている。しかし、これまで日本への木炭の最大輸出国だった中国が、資源保護を理由に平成16 年、木炭輸出を全面禁止。薪く炭くKYOTO では、これを契機に地域の薪炭材利用につなげたいと環境省の委託で実現可能性調査を実施した。

この調査で把握されたボトルネックとしては、1)森林保全機能や薪炭利用の価値が共有されていない 2)取り組みが個別分散的でノウハウが共有されていない 3)原木調達が困難、炭焼き窯が減少 4)生産者が減少 5)問屋の弱体化、品質保証機能の欠如、環境保全機能をPRする仕組みの欠如 6)薪炭利用器の使い勝手の悪さ 7)場面に応じた薪炭利用のよさに対する理解不足 が挙げられる。

さらに各地の取り組み例の収集や矢作川地域をケーススタディとしてイベントの実施等を行い、解決策の方向性を示した。今後は、これらの提案にもとづく他団体との連携やブックレットの作成等を行い、持続可能な地域の薪炭材を安全性などの知識とともにスローライフ、生活の価値と結びつけた活動を続けていく。

参考:日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーンHP www.sumimaki.org/  薪く炭くKYOTO 「みんなでできるワークショップアイデア集」