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トピックスⅠ
国産材利用拡大と木質バイオマス利用
トピックスⅡ
バイオ燃料とランドラッシュ
2010年の動向
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はじめに

2010年を振り返ると、2008年のリーマン・ショックによる打撃から立ち直りつつある一方で、再び石油価格や食料価格が高騰し始めた。IEAは2006年にピークオイル(石油の生産量のピーク)が来ていたと発表し、中国が米国を抜いて世界一のエネルギー消費国となった。これまでのG8が席巻していた時代が、急速に変わってきている。ポスト京都議定書の姿はまだ定まらず、そこかしこに持続可能な社会への脈動は芽吹いているが、世界が一致団結して邁進する体制が整ったわけではない。

さて、そうした中での日本のバイオマス利用だが、総務省のバイオマス政策評価や仕分け(「2010年の動向・2. 国内の動向」参照)において、近年の日本のバイオマス政策に大きな問題があったことが浮き彫りになった。何のためのバイオマス利用かと問うならば、広い意味では「持続可能な社会構築のための手段の一つ」であろう。環境的、社会的、経済的に目的達成の手段としてバイオマス利用が適していれば、事業を行う。しかし、バイオマス事業そのものが目的化すると、他の手段と比較することもなく、残念ながら成果を挙げられなかった例が枚挙にいとまがない。

国産材の利用拡大も、持続可能な社会構築の手段の一つである。2011年1月に木材の流通・加工についてのシンポジウムを開催したが、なぜ、バイオマス産業社会ネットワークがこのテーマを取り上げるかと言えば、バイオマス白書2010【*2】で詳述したように、日本で利用可能なバイオマスの半分以上が森林由来のバイオマスであり、今以上の利用拡大には、林産業の振興が不可欠だからである。地域でのバイオマス利用の取り組みの筆頭に上がる木質ペレットにしても、製材の際に出るおが屑を原料とするのではなく、間伐材などを粉砕・乾燥させて製造すると灯油より安価な価格で販売することは難しく、それが木質ペレット利用拡大を阻んでいる。まず山から木を下ろし、加工して用材・合板・紙などに使い、それらに向かないか利用した後に行うのが、エネルギー利用である。

さらに、人間活動に伴う環境負荷の半分以上は、建築関係であると言われている。つまり、普段、環境に配慮した生活を行っている人が、住宅を建てる際の配慮が十分でなければ、日ごろの配慮が相殺されてしまう。木材は、鉄やアルミニウムに比べてはるかに環境負荷が少なく、持続的な管理を行えば、再生可能な資源である。地域の木材を使って適切に建てられた家は、素材生産から使用時、廃棄までのトータルで見た環境負荷は低く、快適で、必ずしも高額な費用を要するものではない。

しかし、こうした情報が、戸建て住宅の施主となる一般市民にとっても、あるいは行政、マスメディア、企業などで関心を持つ人々にも知る機会がほとんどなかったのが現状である。

持続可能なバイオマス利用という窓から世界を見つめると、分断されてしまったものをつなぐことで、皆にとっての利益となりつつよい方向へ変える道筋が見えてくることがある。

今年も、そうした道筋をたどりながら活動を続けてきたいと考える。

<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>

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