エタノールの利用  稲わらなどからのメタノール製造


 長崎総合科学大学の坂井正康教授らは、稲わらや雑草からメタノール(メチルアルコール)などを製造する技術開発を行い、実用化のめどをつけています。
 この技術は、植物を乾燥させ、1ミリ以下に粉砕させます。このプロセスを経ることで、燃焼効率が飛躍的に向上します。次に燃焼をコントロールし、酸素と水蒸気を加えて部分燃焼させ、水素と炭素にガス化します。これを触媒を使ってメタノールに合成します。水素と炭素のガスからは、ガソリン、DME(ジメチルエーテル)なども合成することができます。
 転換効率は40 〜60%で、1 ha の土地から採れる枯草が40 トンとすると、この枯草から20 トンのアルコール(石油換算で約10 トンに相当)を生産することができます。
 例えば、日本国内の休耕田や遊休地など約400 万ha でバイオマスを生産し、それらと農産廃棄物を利用することで、日本の自動車燃料消費量の3/4をまかなえるという計算になります。
 実際には、制度やインフラストラクチャーなどを整備することが必要になってきますが、技術的には決して夢ではない話になっています。


バイオマスガス化装置

 


合成されたメタノール
出所:坂井正康研究所ホームページ

 

燃料電池と分散型エネルギー

 燃料電池は、水の電気分解の逆反応を利用して、燃料の水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を取り出すものです。さまざまな種類がありますが、特に小型で軽量な固体高分子型燃料電池が、自動車、家庭用、家電用などの実用化が始まりつつあり、最近、大きな注目を浴びています。燃料電池の水素は、メタンガス、メタノール、エタノール、ガソリンなど多様な燃料から製造することができ、燃料電池が普及すれば、バイオマスエネルギーもより利用されやすくなると考えられています。
 燃料電池は、マイクロガスタービンなどとともに分散型発電の手段としても注目されています。分散型発電は、遠方の大型発電所から送電してくるのではなく、バイオマスや風力、中小(マイクロ)水力など地域に適したエネルギー源を利用することで、社会全体のエネルギー効率の向上や、地域の振興に役立てようとするものです。青森県などで実際の取り組みが始まっています。