全国に広がる菜の花プロジェクト


 ドイツでは、菜種油からつくったバイオディーゼル燃料が広く使われている。バイオディーゼルは硫黄酸化物や黒煙をほとんど排出しない上に、現行の自動車や船舶のディーゼル機関を改造せず使用できる。
滋賀県では、1994年に愛東町で試験的に廃食油の燃料化が行われ、1998年から滋賀県環境生活協同組合が「菜の花エコプロジェクト」を開始。さらに、滋賀県も「湖国菜の花プロジェクト」を1999年6月に始めている。
 「湖国菜の花プロジェクト」は、かつて滋賀県内で1万ヘクタール以上つくられていた菜の花の栽培を復活し、そこから搾られる菜種油を食用として利用する。回収した廃油をバイオディーゼルに精製して、石油に代わる自動車や船舶の燃料として利用するものである。
モデル的に県内5ヵ所に1ヘクタールづつ植えた菜種から2000年秋に菜種油をつくり、一部を滋賀県庁内の食堂で使用。その廃油でバイオディーゼルをつくり、軽油と混合してイベントの送迎バスで使用した。
2001年4月からは、菜種油などのバイオディーゼルと軽油を混合して、県内の小学5年生全員が順番に琵琶湖を航海する「環境学習船」を運行している。
課題としては、以下のような点が挙げられる。
1) 市民、企業、自治体それぞれの意識改革とパートナーシップが必要
2) バイオディーゼルは日本では非課税だが、軽油と混合すると軽油引取税がかけられる。
3) 菜種などエネルギー作物の生産支援が必要
 「菜の花プロジェクト」は、今や10以上の自治体や市民活動体で取り組まれ、全国へと広がっている。

菜の花プロジェクトに取り組む主な自治体など

  • 滋賀県愛東町:1996年に廃食油の燃料化プラントが稼働し、公用車4台の燃料への利用を図ってきた。その更なる展開として、菜の花を栽培し、食用にした後で燃料化するという取り組みを進めてきた。菜の花プロジェクトの活動は、菜の花エコ学習会、搾油体験学習会、菜の花エコ給食、菜の花エコプロジェクト・パンフレットの作成などを幅広く展開している、「菜の花プロジェクトの本家」。
  • 新潟県上越市:廃食油からつくられたバイオディーゼルが、市の公用車と上越市環境衛生公社のゴミ収集車で使用されている。
  • 三重県藤原町:今年(2001年)から燃料化ミニプラントによる、回収した廃食油の燃料化事業に着手
  • 滋賀県新旭町:住民主体の「菜の花エコライフネットワーク」が2000年5月の発足。「菜の花→菜種油→廃食油→燃料化」という循環型リサイクルシステム構築を目指し、 活動中。
  • 兵庫県伊丹市:家庭からの廃食油や公的機関からの廃食油を回収し、これを燃料精製プラントで燃料化し、公用のゴミ・し尿収集車の燃料として活用している。
  • 香川県善通寺市:学校給食に使用する食用油から出てくる毎月平均800リッターの廃食油を燃料化プラントで燃料に精製し、ゴミ収集車へ給油。2台の収集車を廃食油燃料で稼働させている。
  • 鹿児島県曽於郡:曽於郡にある8つの町から委託を受けてゴミの回収をしている「そおリサイクルセンター」が廃食油回収も実施している。廃食油燃料をゴミの回収車などに使用。
  • 千葉県:2002年度より、菜の花の栽培、菜種油の食用としての利用、廃食用油を回収し、せっけんやバイオディーゼルとして加工、利用する「なのはなプロジェクト」を開始する。菜の花は土壌のリンや窒素を吸収する性質があることから、水質悪化が著しい手賀沼周辺の休耕地などで栽培することで、水質改善にもつながると期待されている。

参考・引用資料
「バイオ燃料すべて非課税に」2001.6.16朝日新聞
「ぐるっと菜の花エコ作戦」2002.1.25朝日新聞千葉県版
滋賀県環境生活協同組合「菜の花プロジェクト」
http://www.biwa.ne.jp/~econavi/bdf105.html