バイオマスエネルギー利用技術


 バイオマス資源は、途上国におけるエネルギー源として非常に有効であることが知られている。しかし、伝統的な薪炭材としての利用のままでは、持続的な管理がなされず森林破壊の一因となることもあり、さらに変換効率も低いため、将来性は乏しいのが現実である。
現在、エネルギー資源をめぐる競争が激化されると共に環境保護や天然資源管理への関心高揚とが重なり、再生可能エネルギーとしてのバイオマスエネルギー利用への期待が高まってきている。バイオマスエネルギー利用に関する研究や実例も多い。そんため、今後もバイオマスがエネルギーキャリアーとなる見込みは非常に高い。

 バイオマスエネルギーの利用は、今日、伝統的な利用から発展し、新しい技術の、実現可能性、実用的な面で大規模な範囲でのエネルギー供給が可能かどうかが重要である。
そのため、ここでは各国における各バイオマスエネルギー技術の基礎をまとめ、研究開発プログラムの現状と将来展望についてまとめる。

1-1.ガス化による熱と電力、メタノールと水素の生産

 開発中のガス化装置を例にして熱分解によるガス化について議論する。応用分野についての議論では、発熱と発電、メタノールと水素を狙った合成ガスの生産を対象とする。今日商用化されている技術は、主に熱利用と発電である。

 バイオマスのガス化により、非常に不均一な原料から均一なガス状燃料中間物を生産できるが、それらは信頼性の高い燃料として、暖房、工業プロセスへの適用、発電また液体燃料の生産などに使用できる。原料として利用できるバイオマスはさまざまなものがある。含水率50%の非常にクリーンな木質チップ、乾燥はしているが金属やその他の異物が混ざっている都市廃材、農業残渣、畜産残渣、汚泥、都市の固形廃棄物(MSW)中の有機成分などがそれだ。ガス化プロセスにより、これらの原料は炭素と水素を多く含んだ気体燃料に変換されるが、バイオマスの直接燃焼よりも、これらの気体燃料は利用しやすく、場合によっては効率や環境面で優位である。ガス化装置システムには、通常、バイオマス燃料処理システムと供給システムがあり、これがエアロック方式でガス化装置と連結している。通常、ガス化装置は耐熱加工された容器になっており、常圧あるいは高圧のいずれでも約850℃でガス化が起きる。
 生成ガスは、その最終用途に合わせて処理される。ガス化装置と燃焼システムが密着している場合には、ガスの浄化装置はない。発電システムでガスタービンを利用する際には、タービンの加熱部分の統合性を確保するために、粒子、タール、硫黄および塩素化合物、アルカリ金属が除去されていなければならない。内燃機関で利用する際には、各シリンダーでの十分な熱交換を可能にするため冷却ガスを用い、またタールや粒子を含むものには、バルブやシリンダーを守るために特別な注意を必要とする。燃料電池で利用する際には、電極保護のため硫黄や塩素に汚染されていない水素を主成分とするガスが求められよう。メタノールや水素生成といった合成作業の際には、川下の触媒による有毒化を防ぐため、粒子や混入異物(例えばH2Sなど)を取り除かねばならない。
 プロセス効率は実際にかなり高い。供給原料の有機物を、熱分解ガス化で気体燃料混合物に変換する際の一般的な変換効率は80〜85%である。発電に複合サイクルを使用すれば、最終バイオマスの電気効率が45%以上となることが予想される。もしそれらの気体が水素に変換されれば、燃料電池の効率も55%を超えることもある(HHVベースで)。環境的に優位な点は、燃料気体処理されて、その体積がボイラからの燃焼の流よりもずっと小さくなることである。この点と、バイオマスの処理温度が一般的に低いということから、金属(アルカリを含む)が灰やサイクロンに処理しやすい塩として留まっている。また気体燃料から、塩化水素を含む酸性化合物ガスを燃焼前に簡単に浄化できる点も、直接燃焼より環境的に優れているといえる。

1-2.ガス化

 ガス化に基づくプロセス設計は、ガス化の媒体、ガス化の圧力および反応装置のタイプに左右される。

ガス化の媒体

 ガス化には、蒸気あるいは空気(または両者)中で、バイオマスを脱揮発成分化(devolatilise)し変換して、中あるいは低発熱量ガスを生産するプロセスが含まれる。空気を吹き込んだ、あるいは直接加熱されたガス化装置が、酸素と有機物間の発熱反応によりバイオマスを脱揮発成分化し、炭素を豊富に含んだ残渣炭を変換するのに必要な熱を供給する。これらの直接加熱ガス化装置では、加工処理を進める熱はガス化装置内部で生じる。空気が使用される場合は、結果として生成ガスは窒素で希釈され、一般的には約5〜6MJ/Nm3の乾燥基準カロリー値(dry-basis calorific value)を持つ。
 空気の代わりに酸素を用いることによって、生成ガスの乾燥基準カロリー値を13〜15MJ/Nm3まで上昇させることが可能である。酸素を使用すると生産コストは上がるが、合成ガスを生産する際、川下の合成変換作業で窒素が使えないような直接加熱ガス化の分野でのみ酸素の使用が提案されてきた。通常、酸素は40〜60USドル/トンで、バイオマス1トンにつき0.25〜0.3トン、コストにして10〜20USドルかかる(Wymanら 1992)。
 空気吹き込み(Air-blown)装置の代替法が間接加熱式ガス化である。間接的に加熱されたガス化装置が、加熱固体からの伝熱(heat transfer)あるいは熱交換伝熱面を通し、バイオマスを加熱、ガス化させる。空気はガス化装置の中に導入されず、窒素による希釈がほとんどないため、中位のカロリー値を持つガスが生成される。一般的な乾燥基準カロリー値は、18〜20MJ/Nm3である。

圧力

 ガス化に基づく発電システムに二番目に重要な影響を及ぼすのが、ガス化装置の作動圧力である。これは、ガスタービンベースのサイクルを含むガス化発電システムの性能と経済面において特に重要である。通常、タービンは10〜20の圧縮比で運転され、タービン入口の圧力は1.0〜2.0Mpaになる。加圧されたガス化装置は直接タービン利用に適した圧力下でガスを生産し、その際効率が全体で最も高くなる。運転効率が最も高くなる圧力を適用するためには、多数の補助システムを開発しなければならない。信頼性のある高圧供給システムは、まだ商用化されていない。
 通常のガス化装置状態(825℃、2MPa)では、タール、残渣炭および揮発性アルカリが発生する。システム効率を最大にするには、タールの露点(通常は540℃)まで温度を下げることなく、発生した高温ガスからこれらの物質を取り除く必要がある。よって高温ガスの浄化システムが必要となる。タールは比較的高い発熱量を持つので、燃焼炉中で燃焼させることができるが、炭フィルタを詰まらせ、燃焼の安定性に影響を与えるススを燃焼中に発生させる可能性がある。タールを除去することにより、(タービンでの放射熱移転を避けるために)規則的な、あるいは発光しない燃焼プロセスを確実にする。そのため、高温ガス浄化システムにおける最も重要な要因は、触媒あるいは熱タール分解装置(cracker)であろう。触媒タール分解装置は、ガス化装置温度と同等の温度(825℃)で作動する。これに対して熱タール分解装置は通常870〜980℃で作動する。
 タール分解装置の後、生成されたガスは、特にアルカリ性蒸気を最小化するために、通常350〜650℃に冷却される。その後、固体成分やアルカリ分の多くを取り除くためにセラミックフィルタに通す。粒子の除去はタービン翼を腐食から守るためである。ガスタービンでの許容アルカリ濃度は、タービン燃焼炉の排ガスで25ppbであるので、そのガスは、ガスタービンで使用するには多すぎるアルカリ分を含んでいる。生成ガスのアルカリ濃度を規定以下にし、タービン翼材の付着や腐食を防ぐためには、フィルタ後にアルカリ除去層が必要であろう。一般的な層の材料は、emalthiteあるいはhectoriteである。除去層は、層を交換している間も継続運転が可能な平行固定層にすることが可能である。
 これとは別にガス化装置を低圧で作動させ、浄化済み生成ガスをガスタービンでの使用に必要な圧力まで加圧する方法もある。この場合、タール量を最小限にするため冷却中にタール分解装置を使用できるであろう。タール分解装置から出た生成ガスは、圧縮機に適した状態に調整される。水分とタールの含有量は、圧縮時に液化が起きないよう十分低くする必要があり、潤滑油特性に影響を与える可溶性タールも除去する。通常、タール分解装置の出口温度を残存タールの露点まで下げるため、熱変換と湿式ガス洗浄装置の組み合わせを使用する。そのガスに含まれている水蒸気はスクラバ出口温度(約90℃)と圧力において飽和状態に達しているであろう。

1-3 ガス化装置のタイプ

 これまで開発された主要なバイオマスガス化装置システムは、以下の4種である:固定床装置、バブリング方式流動床装置、循環方式流動床装置、噴流床装置。

固定床:

 固定床ガス化装置は、主に上向通風と下向通風に分類できる。上向通風は、最も旧式で単純なガス化装置である。上向通風ガス化装置は、固定ホッパー(大漏斗)や回転バルブにより供給原料が炉の上部から供給され、灰を取り除く火格子に下向きに供給原料が流れる逆流装置である。ガス化媒体である空気あるいは酸素または蒸気は、火格子の下から炉に入り、炉の上部から抜ける。通常、炉から出てくるガスの温度は80〜100℃である。
 生産ラインにおいて液化するタールや油分の多くの種類は、熱分解ゾーンで発生する。このため上向通風ガス化装置は、通常蒸気や温水を生産する密閉連結型炉・ボイラとしてのみ使用される。融解性の低い灰を発生させる供給原料を供給すると、それが火格子でスラグになる。さらに火格子の均一性を維持するために、供給原料の粒径を管理する。
 下向通風ガス化装置では、空気と生成ガスはどちらも同じく固定床の方向へ流れる。下向通風ガス化装置は、タールと油分の発生を最小化するため特別に開発された。供給原料と熱分解ガス/蒸気は、共に火格子を通過し下向きに流れる。出口のガス温度は通常約700℃である。
 下向通風ガス化装置の供給原料特性における一般的制約は、上向通風ガス化装置と同じである。供給原料は火格子の物理特性を維持してチャネリングを最小化するため、細片をほとんど含まない、かなり均一な粒径分布が求められる。またスラグの発生を防ぐために、高温融解により生じる灰分が少ない供給原料でなければならない。さらに、タール分解に必要な高温を維持するため、供給原料の含水率は20%以下である必要がある。下向通風ガス化装置の変型が斜流通風ガス化装置で、空気がガス化装置の底部に沿って入ってくる。斜流通風ガス化装置の操作原理は下向通風ガス化装置と同じである。

バブリング方式流動床:

 気体−固体流動床では、ガスの速度が速いため固形粒子が広く分離し、自由に層を移動している浮遊粒状物質層をガス流が通過する。その過渡的な床の全体の循環サイクルとしては、ほとんど固体を含まないガス流は経路を上向きに流れ、固体のかたまりは下向きに流れる(Perry、Chilton 1973)。流動床は沸騰している液体のようで、流動性の物理的特性を持つ。流動床を用いたバイオマスのガス化では、空気、酸素または蒸気がガス化剤に使用され、流動床の固体粒子には通常、砂、石灰石、白雲石またはアルミナが用いられる。
 サイクロンは、粒子(fines)を流動床に戻したり、または灰分を多く含んだ粒子をシステムから取り除くための両方に使用される。流動床はガス分配多岐管あるいは何系統かの散布管により流動化される(Hansen 1992)。バイオマスは、フィードシュートにより流動床の上端、またはスクリューフィーダーにより流動床内部に供給される。流動床内部への供給では、粒子の残留時間が長くなるため、完全には流動ガスによって運搬されず、流動床で変換される。
 流動床は通常、天然ガスや、プロパンまたは燃料油を用いた外部バーナで事前に温められる。流動床ガス化装置は層の状態が均一なため、極端に良く混合され、伝熱が良くなるという利点を持つ。ガス化効率も高く、一酸化炭素への変換率は95〜99%である。バブリング方式流動床ガス化装置は、粒子制御用の追加サイクロンを必要とするが、完全な灰分除去を目的として設計されることが多い。

循環方式流動床:

 バブリング方式流動床のガス流を多くすると、ガスの気泡が大きくなり、流動床に空所ができたり、かなりの量の固体が運び去られるようになる。このタイプの床は乱流層と呼ばれる(Babcock、Wilcox 1992)。循環方式流動床では、乱流層の固体粒子は回収されると共に、ガスから分離され、循環輪を形成しながら流動床に戻ってくる。循環方式流動床は、高密度の固体層と低密度の固体層が明確に分離していないことからバブリング方式流動床と区別できる。循環方式流動床の密度はおよそ560kg/m3で、バブリング方式流動床の密度はおよそ720kg/m3である(Babcock、Wilcox 1992)。低密度の流動床を実現するために、ガス比率がバブリング方式流動床の1.5〜3.7m/sと比較して9.1m/sまで引き上げられた。循環方式流動床の固体粒子残留時間は、固体粒子循環率、固体粒子の摩損および固体粒子分離装置の回収効率に左右される。

噴流床:

 噴流床ガス化炉では、粉砕した供給原料を乾燥または泥漿状態で、比較的多量の酸素と一緒に空気流反応装置に連続的に投入する。追加酸素による高温が油やタールを完全に破壊する。高温(通常1,300〜1,400℃)なので、灰分もたいていの場合は液体スラグとして除去される。これらのガス化装置は石炭用に開発され、限られたバイオマスで試験したものが運転されている。バイオマスで応用するには不十分な理由が数多くあるが、供給原料の含水率を低いレベルまで下げる費用、および粒子サイズを小さくするための費用が高いことが主な懸念事項である(Larson、Katofsky 1992)。石炭用の噴流層ガス化炉は、Shell、TexacoおよびKoppers-Totzekにより開発された。

2.大規模ガス化装置

 米国および欧州で、主に熱供給と発電分野を市場としたかなりの数の大規模ガス化装置が開発されている。Foster Wheeler低圧循環方式流動床ガス化装置は、フィンランドおよびスウェーデンで数年前から商用運転されており、石灰窯稼動用のガスを供給している(Wilen、Kurkela 1997)。以下の議論では、開発の途中にある多くのガス化装置についての簡単なコメントも含んでいる。

2-1.IGT/Carbona

 ガス技術研究所(Institute of Gas Technology / IGT)は、バイオマスを低または中程度の発熱量ガスに変換するRENUGASRガス化技術を開発した(Lauら 1993)。バイオマスは、加圧一段(single-pressurised)バブリング方式流動床ガス化容器に入れられる。不活性アルミナ粒が深部の流動床を形成し、安定した流動状態と必要な高温を供給する。これにより燃焼による放出エネルギーが効果的に転移され、吸熱脱揮発成分反応(endothermic devolatilization)およびガス化反応が起きる。不活性物質の一段床(single-stage bad)を使用することにより、一酸化炭素への変換量が上がる。供給原料は、高速スクリューにより流動床内部へ供給される。このプロセスは、原料供給速度10.9Kg/日まで、圧力3.45MPaまでの安定状態運転で連続250時間以上テストされている。実験パラメーターには、ガス化温度、圧力、供給原料含水率、供給原料タイプ、投入蒸気、層触媒、流動床高さおよびガスの表面速度が含まれる。ガス化に使用される供給原料には、カエデチップ、一本の木を丸ごとチップにしたもの、カリフォルニア・ハイウェイの刈り込み材、藁、廃棄物派生燃料、樹皮および製紙工場スラグ、ハワイのバガスおよびアルファルファが含まれる。
 RENUGASR技術は、ハワイ州マウイのパイアにあるHawaii Commercial and Sugar Companyの製糖工場のPacific International Center for High Technology Researchにより91Mg/日に規模が拡大された。ハワイ事業の第一期では、ガス化装置のスループット(処理量)が50Mg/日程度、圧力が1.14Mpa程度で、100時間以上の操業を達成した。事業第二期は、10%のすべり流(slip-stream)ベースでWestinghouseの高温ガス浄化フィルタをテストすることを目的とし、Westinghouse Electric Corporationの指揮で行われた。このシステムは1997年に170時間運転した。現在この施設は閉鎖されている。

2-2.Carbona/Kvaerner

 IGTのRENUGASR(Uガス)技術の変種が石炭用に開発され、その後様々なバイオマス供給原料用に拡大されていった。本来の開発者はTampella Power, Inc.で、スウェーデン国営電力庁Vattenfallと共にEnviropowerと呼ばれたジョイントベンチャーにより開発した。1996年にTampellaは、Kvaernerに買収された。Tampellaのガス化分野で働いていた社員たちは、Carbona Corporationという小さな会社を設立した。Kvaerner/Carbona加圧型流動床ガス化装置の試験的工場は、IGTのUガスガス化装置に基づいており、研究用、構成要素テストおよびIGCC(統合石炭ガス化複合サイクル)応用プロセスの完成のためのあらゆる基本的単位(モジュール)を含む。最大熱投入量は、15MWである。ガスタービンでの燃焼に適した低発熱量ガスを生産する加圧一段流動床ガス化装置は、最高3.04MPa、1,100℃で運転させることができる。3,000Mg以上の、木質中心のバイオマスのガス化は、9,000時間以上運転されている。
Kvaerner/Carbona技術は、米国、ミネソタ州Granite FallsにあるMinnesota Valley Alfalfa Producers(MNVAP)のアルファルファ・ガス化事業のガス化装置製造法として採用されてきた。ミネソタの「アルファガス」事業は、アルファルファを材料にしたタンパク質(leaf metal)製造と発電を目的とした米国エネルギー省(DOE)と農業経営者協同組合であるMNVAPの共同研究で開発協定を結んでいる。複数期に渡る事業費は2億USドルである。この事業のその他のパートナーは、Enron、Carbona Corporation、Kvaerner Pulping、Westinghouse Electric Corporation、Stone and Webster、Great River Energyおよびミネソタ大学である。農作物を原料としたこの新規の施設の建設に際して、生産者たちは年間64万トンのアルファルファ(茎の部分)および年間約32万トンのタンパク質を多く含むリーフペレットから、75-MW規模の発電を希望している。電力買取協定は、地方公営エネルギー事業者であるNorthern State Powerとすでに結ばれており、現在計画の詳細を詰めており、工場の完成は2001年に予定されている。

2-3.Foster Wheeler Energia OY (Ahlstrom)

 Foster Wheeler Energia OY(旧A. Ahlstrom OY, フィンランド)は、加圧循環方式流動床ガス化装置を数年にわたって開発してきた。この開発は、スウェーデンのVarnamoで、ついに実証ユニットが建設され、運転が開始されている。ユニットの設備能力は、およそ82トン/日で、高温ガスの浄化にセラミックフィルタを用いる。複合サイクル運転による工場の発電能力は、Alstom Gas Turbines Ltd.(旧Europian Gas Turbines)のTyphoonシリーズガスタービンによる約4MWe、ボトミング(bottoming)蒸気タービンによる2MWeである(Stahl、Neergaard 1998)。およそ9MWthの温水も地域熱供給用につくられている。1993年からガス化が開始され、1995年の秋には最初のタービン運転が始まった。
 Foster Wheeler Energia OY(FW)は、4つの商業規模の常圧循環方式流動床ガス化装置(17〜35MWth)をパルプ・製紙産業用に提供してきた(Nieminen 1998)。FWは現在フィンランドのLahtiにあるKymijarvi発電所の43MWthのガス化装置を稼動させている。Kymijarvi発電所は、通常250MWthの粉砕化石炭ボイラに天然ガスを38%加え、熱を投入し混焼させている。ガス化装置は、低気圧、空気吹き込み、(生成ガスからの)空気加熱循環方式流動床、供給原料の乾燥を行わない状態で運転されている。供給原料は、大鋸屑、材木残余物、リサイクル燃料(プラスチック、ボール紙、紙、木材)から成る混合物である。含水率50%の供給原料から生成されるガスの発熱量は、約2.2MJ/kgである。生成ガスはNH3を800〜1,000mg/Nm3、NCNを25〜40mg/Nm3含む。生成ガスは、既存の石炭ボイラの下に位置する粉砕化石炭ボイラ内部へ供給される。バイオガスが15%の熱投入レベルで石炭の代用になる場合には、ボイラ排出は以下の様に変化する。NOXは約10mg/MJまで減少、SOXは約20mg/MJまで減少、HCIは10mg/Nm3まで増加、COは変化なし、粒状物質は20〜10mg/Nm3まで減少する。

2-4.Thermiska Processor

 The Thermiska Processor(TPS)ガス化装置プロセスは、低圧、空気吹き込み、循環方式流動床で、主なガス化段階の後に二次循環方式流動床分解装置へと続く。分解装置では、ドロマイト(dolomite、マグネシウムと炭酸カルシウムの混合物)がタールをガスや低重量分子の気化ガスへと変換させる触媒として用いられる。タール分解装置は、水冷作動中に生成ガス蒸気から取り除かれた有機物量を減少させ、そのため利用可能な生産物の回収を最大化し、水処理費用を最小化する。TPSプロセスは、もう何年も開発の途中にある。1992年、イタリアのAsaldo Aerimpianti SpA(Barducciら 1997)が二層ユニットを商用化のためにイタリア、Greve-in-Chiantiに設置した。Greveユニットは、ペレット状に固めた廃棄物派生燃料を燃焼させ、30MWthの複合発電能力を持つ。廃材や農業廃棄物を利用した限定運転も行われている。工場で生成された燃料ガスは、発電用の蒸気発生用ボイラで燃焼されたり、隣接した石灰窯運転の燃料として使用される。
 TPSは、ブラジルにおける生物燃料ベースの複合サイクル発電所で採用されてきた。世界銀行のGEFや数多くのブラジルの公営エネルギー事業者が共同出資し、Eletrobrasが指揮したその事業は、ユーカリ(eucalyptus)を使用する32MWeの複合サイクル施設で発電を行う。TPS技術は英国、ヨークシャーのArbre事業と呼ばれる8MWeの実証事業でも使用されている。クリーンな合成ガス(syngas)は、圧縮されてガスタービン、Alstom Typhoonの中に入れられる。ガスタービンから排出される高温ガスはボイラへ送り込まれ、そこで側管の合成ガスと共に燃焼し、蒸気タービン用の蒸気をつくる。発電所の総発電量は、ガスタービンから4.75MWe、蒸気タービンから5.25MWeの計10MWeと期待されている。寄生給電(parasitic load)は2MWeで、地域への送電は8MWeとなるであろう。
 同様な低圧、空気吹き込みガス化装置がLurgiにより開発されている(Merhling、Vierrath 1989)。Lurgiの低圧、循環方式流動床ガス化装置は、EU Thermie Prgrammeの資金提供を受けて、イタリア、Cascina(ピサの南東)the Bioelettrica, SpA Energy Farm Projectで使用されている。ユニットサイズは41MWth、木材を燃料としたガス化装置で、複合サイクル方式により12MWeを発電する。建設は1999年5月に開始予定で、2001年初頭に建設工事の引き渡しが予定されている。

2-4. Battelle Memorial Laboratory

 1977年からオハイオ州のColumbusにあるBattelle Memorial Laboratory(Paisley、Overend 1994; Paisleyら)は、the Battelle High Throughput Processと呼ばれる間接加熱式バイオマスガス化プロセスを開発してきた。オハイオ州West Jeffersonで2MWthのガス化装置が1980年から運転されてきた。Battelleガス化プロセスでは、ガス化段階において、空気や酸素を使用せずに中発熱量ガスを生成する。このプロセスでは、バイオマスを中発熱量ガスと残渣炭に変換させるガス化反応装置、および残渣炭を燃焼させる燃焼反応装置(残渣炭は燃焼してheat sandとなり、ガス化に必要な熱を供給するために循環した後、ガス化装置に戻る)の2つの反応装置を使用する。Battelleプロセスでは、バイオマス供給原料が持つ高い反応性を利用するため、循環方式流動床反応装置を使用しており、3.90kg/s-m2以上の処理量を実証している。
 再生可能なバイオマスのガス化発電を論証するための主要なUS DOE先導事業の一環として、Battelleプロセスは42MWt(182乾燥重量トン/日)まで規模が拡大されている。このガス化/ガスタービンシステムの実証と妥当性検査は、バーモント州Burlingtonにある木材を燃料とする既存の50MWeのMcNeil発電所で実施されている。バーモントでの事業の目的は、Battelle間接ガス化技術の大幅な規模拡大を実現することで、処理量12トン/日のプロセス開発ユニットを商用化が十分可能な規模(20トン/日あるいは45MWth)まで拡大する。50〜70MWe規模の複合サイクルシステムでの経済分析は魅力的な結果を示した(Paisleyら 1997)。
 プロセス開発ユニットでは、スクラバは、吸収液の再循環なしで設計されている。McNeilでは立地上の制約から、スクラバはビルトイン型で噴霧急冷器から構成されており、ベンチュリスクラバへと続く、〜水収支は余剰の水分を生成ガス流中に蒸気として混入させ、マクニールボイラーへと導入することにより達成される。ガス化装置からの流出水はない。スクラバ配管にたまった固体(炭粒子、水で流し出された床材料およびその他の固体、タール)は、燃焼室にスラリー(懸濁液)として燃焼室に送られ、乾燥・燃焼される。

2-5. Producer Rice Mill Energy Systems

 Producer Rice Mill Energy Systems(PRM)は、主にコメの籾殻加工に焦点を合わせたガス化システムを開発した。PRMのシステムは完全に商用化されたガス化システムで、米国、オーストラリア、コスタリカ、マレーシアの国々で13の施設(30〜300トン/日規模)が運転されている。規模に幅があるため、PRMガス化装置は、大規模施設と小規模施設の両方に分類できる。PRMガス化装置は穴あき火格子(perforated grate)の下に3つの空気層を持つ撹拌床を使用し、通常はボイラに密閉連結型(close-coupled)になっている。大鋸屑、樹皮およびMSWを含むその他の供給原料についても研究されている。

3.小規模ガス化装置

 多くの小規模ガス化システム−本議論の目的では5MWe以下のもの−は第二次世界大戦の開始以来開発されてきたが、成否は様々であった。第二次世界大戦中、欧州諸国の多くは化石燃料の入手が困難であったため、民間輸送を小規模ガス化装置に頼っていた。その当時、100万基以上のガス化装置が使用されていた(Reed、Gaur 1998)。第二次世界大戦後は、石油製品を利用する方が便利で経済的になったため、バイオマスを用いた小規模ガス化は廃れていった。1970年代半ばの石油価格の急騰で、主に途上国での利用と欧州での地域熱供給用として小規模ガス化に対する関心が再び戻った。
 1970年代終わりから1980年代初めにかけて、発電用ガス化開発は世界銀行の資金提供を受けたが、事業の大部分は様々な技術的・商業的理由により失敗に終わった。1990年代に化石燃料の使用とその地球温暖化に与える影響への懸念から再び関心が高まった。ブラジル、中国、インド、欧州および米国でユニットが開発され試験が行われてきた。ほとんどのガス化装置システムは固定床、下向通風である。小規模ガス化システムに関して、バイオマスのガス化調査を含む多くの評価が最近発表されている(Reed、Gaur 1998);ブラジル、ブルンジ、インドネシア、マリ、フィリピン、セイシェルおよびバヌアツ(Vanuatu)での世界銀行事業の評価(Knoef、Stassen 1997);欧州における小規模ガス化の状況(Novem 1996);小規模システムへの主な動きの評価(Jakobsenら 1998)などである。ガス化/事業を表9.1にまとめた。この表は完全なものではない。以下で、いくつかのシステムを例に短く論じている。

3-1.Bioneerガス化装置

 Bioneer ガス化装置は、輸入燃料を泥炭や木材といった費用の安い国産燃料で代替するために、フィンランドのVTTによって1970年代後半に開発された。研究開発は1980年代半ばに行われ、1985〜86年には多くのBioneer施設が立ち上げられた。Foster Wheeler Energia OYによる別の施設が1996年に建設された。Bioneerガス化装置は固定床、上向通風型で、高レベルのタールを産出する。Bioneerガス化装置システムにはガス冷却装置および浄化システムを取り入れておらず、ガスエンジンあるいはガス分配利用に適していない。全システムにおいて、高温生成ガスはすぐさまガスボイラで燃焼され、地域熱供給用の蒸気または温水をつくる。

3-2.Rural Generation Limited

 アイルランド北部のLondonderryにあるRural Generation Limitedは、発電と穀物・木材の乾燥および家庭暖房用の熱生産を目的とした暖房熱電併給システムとして、下向通風ガス化装置(もともとアイルランド北部のEnniskillenで開発された)を商用化してきた。ガス化装置で生成されたガスは、IVECOディーゼルエンジン用の燃料として二元燃料(ディーゼルとバイオガス)モード(dual fuel mod)で使用される。ガスの浄化は、サイクロン、水噴水(water bubbler)、乾燥フィルタと連続して行う。原料として木材残余物を80kg/hrの割合で供給しているが、1999年冬にはヤナギ(willow)へ転換する。発電量は115kWh/hrで、うち80kWh/hrがバイオガスである;バイオガスの比率は許容エンジン入口温度で制限されており、燃焼するガスもある。ユニットは今日までにおよそ1,500時間運転されている。

3-3.Brussels自由大学/Dinamec

 Brussels自由大学(Free University of Brussels)とDINAMECは共同で、間接加熱式ガスタービンを動かすためにガス化システムの原型を建設・運転している。事業の規模は500MWeで、廃材を燃料としたコジェネレーション方式である。バイオガスはガス化装置で生成され、その後密閉連結型燃焼器に供給される。燃焼器からの高温煙道ガスの熱は、熱交換器によりガスタービンの圧縮機から排出される空気に与えられる。加熱加圧された空気は、その後発電用に拡張タービンへ送られる。熱交換器を出た煙道ガスは、地域熱供給用の温水を温めるために使われる。タービンから排出された空気は、燃焼器の燃焼用空気として使用される。このシステムの利点は、タービンの汚染がないことである。不利な点として可能性があるのは、ガスを燃料とした直接タービンシステムと比較した場合、効率が低い点である。

3-4.インドのガス化装置

 1980年代から90年代にかけて、インドの非従来的エネルギー源省(Ministry of Non-Conventional Energy Sources)の実地教授プログラムが牽引力となって、数多くのガス化装置がインドで開発された。何百もの小規模下向通風ガス化装置(シャフトパワーの規模が4〜500kW)が、主に熱エネルギー、シャフトパワーあるいは発電用の圧力エンジンの燃料として建設・運転されてきた。主に、灌漑用水の汲み上げなど農業分野で利用されてきた。インドにおけるガス化研究に関わる機関は、国立技術研究所(India Institute of Technology)(ボンベイ)、国立科学研究所(Indian Institute of Science)(バンガロール)およびAnkur Scientific(バロダ)である。インドでのバイオマスのガス化システムについては、IITのParikh教授が良く総括している(Parikhら 1994)。インドにおけるガス化開発に関するその他の参考文献には、Mukundaら(1993)、Parikhら(1989)、Gaurら(1985)がある。
例として、Ankur Scientificは様々な規模の下向通風ガス化装置を250基以上建設している。最大規模のものは500kWの下向通風ガス化装置で、農業と小規模の産業に利用されている。主要なシステムの構成装置は、バイオマス供給システム、ガス化装置、サイクロン、スクラバおよびフィルタ(エンジン用)である。

3-5.中国のガス化装置

 小規模ガス化システムの開発は、山東省科学アカデミー(Shandong Academy of Sciences)により行われてきた(Overend 1998)。バイオマス(木材、廃材、麦や米の藁および肥料)は、下向通風ガス化装置により低発熱量ガスに変換される。汚染粒子・タールの除去後、小規模村落用の集中ガス供給システムにより各家庭に配給される。山東地方では、14基のガス化システムが運転されており、北京地域では100〜200世帯用の実証システムがある。XFF-2000下向通風ガス化装置は時間あたり500Nm3のガスを生成し、効率は72〜75%と報告されている。圧縮エンジンとスターリングエンジン発電機を利用した発電についても研究されている。

4.メタノールおよび水素の生産

 このセクションでは、バイオマスからのメタノールと水素の熱化学的生産について再考し、そのプロセスの経済性について短く論じる。合成ガスを生成し、それから触媒反応によりメタノールおよび水素を生産するバイオマスのガス化技術が、現在の見込み、短期的な影響の可能性および産業界の関心の大きさなどに基づき研究・開発されている。蒸気改質の触媒化学、水性ガスシフト(water gas shift)およびメタノール合成の詳細については述べられない。それらのプロセスに関する触媒化学についは、Twigg(1989)を参照のこと。合成ガスの液体燃焼への変換に関する一般論についてはMills(1993)を参照のこと。

4-1.メタノール生成技術の特徴

 バイオマスからの熱化学的メタノール生成には、メタノールの触媒反応により変換されるH2およびCOを多く含んだ合成ガスの生成も含まれる。合成ガスは熱分解によるガス化作用により生成される。バイオマスからのメタノール生成に含まれるユニット作業は、次の分野に分けられる:1)供給原料の準備、2)ガス化、3)合成ガスの調整、4)メタノール合成および精製。
 ガス装置の下向通風機器は、天然ガスからメタノールを生成するものと同じである。ガス化装置からの合成ガスは、適切に浄化、改善、増強された後、メタノール合成に用いられる。メタノール生成では、最終的にメタノールの精製を行うが、異なる程度で含まれる水分と有機生成物をメタノールの利用用途に応じて除去する。
 現在の技術の概要を示すために、メタノール合成に適した合成ガスを生成できる可能性を持つかなりの数のガス化装置が開発されている。これらのガス化装置は、4〜200Mg/日の規模で運転されている。開発下にある全システムは、低〜中発熱量燃料ガスの生成用に設計されている。これらのシステムのうち、メタノール生成を最大化するのに必要な運転パラメーターを知るため、統合プロセスベースで運転されているものはない。下向通風を使用した合成ガスの生成作業はすべて、作業条件や生成量が知られている商業技術である。シングルパス液相メタノール合成法(single-pass liquid-phase methanol synthesis)のような新しい開発技術にも将来性はある。

4-2.メタノールのエネルギー収支と経済性

 このセクションでは、バイオマスからのメタノール生成の予備的なエネルギー収支および経済性について紹介する。生成コストは、石炭用の商用化ガス化装置の実現可能性を考慮した値、およびバイオマス用に特別に開発されているガス化装置が商業利用で成功すれば得られる将来的な値で表される。バイオマスからのメタノール生成の経済性は、Chem Systems(1990)が旧太陽エネルギー調査研究所(Solar Energy Research Institute)、現在の国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory / NREL)のために実施した研究に基づいている。この研究の中で、予備的経済評価は二つのメタノール生成システム、LPO 指定のKoppers-Totzek(K-T)ガス化装置を使用したもの、もう一つはHPO指定のIGT-RENUGARガス化装置を使用したもの、用に開発された。さらにNRELは、BCL指定のBattelle Columbus Laboratory(BCL)のガス化装置(Bain 1991;Wan、Fraser 1989)に基づいた間接的メタノール生成システムの予備的経済評価を開発してきた。これらの経済評価はまた、Princeton大学(DeLuchiら1991;Larson、Katofsky 1992)が開発した経済評価と比較された。Princeton大学の研究は、IGTプロセス、BCL、Wright MaltaおよびShellのガス化装置を対象とした。
 概念的なバイオマスシステム(LPO、HPO、BCL)プロセスのエネルギー効率は、49〜68%である(表9.2を参照のこと)。これらの効率は天然ガスベースの典型的なシステムの63%、および第二次世代石炭ベースの48%と比較される。炭素変換効率は、各供給原料の水素/炭素の相対比を反映し、下はLPOのバイオマスベースシステムの33%から天然ガスベースシステムの79%まで変動する。
バイオマスからメタノールを生成するコストは、8.22〜19.84USドル/メタノールGJと推定される(1998時のUSドルで)。ガス化のプロセスは、ガス化装置も間接加熱式から加圧型酸素吹き込式まで、また規模も900〜4,600GJ/hと様々である。天然ガスから生成したメタノールは2,075GJ/h規模の施設で5.24 USドル/メタノールGJ、石炭のガス化から生成したメタノールでは4,150 GJ/h規模の施設で16.76 USドル/メタノールGJと推定されている。これらの生成コストを正しい見方とすると、メタノール価格は、歴史的に燃料価格に基づき、また季節により変動する。現在の市場価格は、約4.45 USドル/GJ(0.265USドル/gal)(Chemical Marketing Reporter 1999)で、推定される生成コストよりも実質的に安い。
 推定されるメタノールの生成コストには大きなばらつきがあるが、いくつかの一般的な結論が出せる。第一に、バイオマスからメタノールを生成する費用は、天然ガスから生成する費用より、はるかに高い。また、複数の機関が出した推定値に差異はあるものの、メタノール生成プロセスにおいて、間接加熱式ガス化装置による生成コストは、直接加熱式よりも安くなるという結果が出ている。最後に、これらの結果はバイオマスからのメタノール生成の経済性が、石炭ベースのものと比較して優勢であることを示している。

4-2.水素生成

 水素生成は、石油精製工業分野では商用化された技術であり、天然ガスや精製燃料ガス、液化石油ガス/ブタン、ナフサなどの軽重量の炭化水素を、水素処理用、水素分解用、あるいはその他の精製用、石油化学用、治金用、および食品加工用の水素に変換するために蒸気改質および精製技術が用いられている。Foster Wheeler、Haldor-Tapsoe、Haword Bakerといった多くの製造業者が、ユニットを提供している(Hydrocarbon Processing 1992、1994)。燃料石油などの重い炭化水素も、Texacoが行っているように部分的酸化加工(Gary、Handwerke 1984; Hydrocarbon Processing 1994)により水素を生成する。合成ガスの変換については、蒸気改質も選択肢として考えられる。
 旧型の蒸気改質ユニット(Gary、Handwerke 1984)には、4つの加工段階が含まれる:1)メタンをCOおよびH2に変換するための蒸気改質;2)COおよびH2を変換するためのシフト変換;3)CO2の吸着を含むガスの浄化;4)少量の残余CO2およびCOを除去するためのメタン化(methanation)。商用化された圧力振動吸着技術(pressure swing adsorption technology)(Hydrocarbon Processing 1994)により、最新の蒸気改質プロセスは幾分か異なる。高圧バイオガス(通常3.5MPa)は、改質された蒸気で、その後、COを除去するため高温・低温シフト反応装置を通過する。低温シフト反応装置内のガスは、その後PSAユニットに供給され、純度の高い水素を生成する。PSAからの排ガスは蒸気改質装置の燃料として使われる。
 バイオマスから水素を生成する費用評価は、プリンストン大学(Deluchiら 1991;Larson、Katofsky 1992)およびNRELで開発されている。水素生成の費用は、1,650Mg/d原料供給規模のBattelleガス化装置ベース・プロセスで8.71 USドル/水素GJから、1,000Mg/日原料供給規模のIGTベース・プロセスで17.46 USドル/水素GJと幅がある。比較可能な天然ガスからの水素生成コストは、1,120水素GJ /日プロセスでの6.26 USドル/水素GJから、712水素GJ /dプロセスでの7.90 USドル/水素GJまで幅がある(Padro、Putsche 1999)。