9. 森林・林業再生政策

2009年8月の総選挙で民主党は300を超える議席を得て、政権交代が実現した。民主党は、温暖化ガス排出を2020年に25%削減、「コンクリートから人へ」といった政策を矢継ぎ早に打ち出したが、2009年12月、林野庁は「森林・林業再生プラン」【*1】を発表した。

このプランでは、10年でドイツ並みの路網密度を達成し、木材自給率50%を目指すとし、路網整備、集約化、安定的な木材供給、フォレスター制度創設などを挙げている(図7)。

図7:森林・林業再生プラン(イメージ図) (出所:林野庁HP)

図7:森林・林業再生プラン(イメージ図) (出所:林野庁HP)

平成22年度林野庁予算概算要求でも、提案型集約化施業を強力に進める内容となっている【*2】。政策目標には、集約化施業に取り組む経営体・事業体が平成23年度末までにすべての私有林をカバーできる体制を構築し、「森林施業プランナー」の養成を加速化させるとある。2009年12月に発表された「新成長戦略(基本方針)」【*3】では、「農林水産分野の成長産業化」の中に「森林・林業の再生」が位置づけられ、再生可能エネルギーの普及拡大支援、ストック重視の住宅政策への転換が盛り込まれた。

「森林・林業再生プラン」は、新政権になってから林野庁名で出た、最初の統一的指針であること、野心的な目標を掲げていること、ヨーロッパがモデルとされていること、制度面および実施面の双方で森林・林業政策の全面的見直しが言及されていること、政務三役からなる「森林・林業再生プラン推進本部」が設置されること、制度面、実践面での検討のため、外部有識者を含む検討委員会が設置されることなどが、注目される。

再生プランで取り上げられる問題点は20年以上前から指摘されていたが、それがようやく政権交代などの機会により日の目を見たとも言える。その一方で、ヨーロッパとは異なる生態系や林齢、地形、社会制度をもつ日本にどう落とし込んでいくかが、今後の課題となる。

また、他の政策にも共通するが、政策を一定の期間で区切って評価し、計画通りの成果を上げられなかった場合は、その原因を分析し、次の政策に生かしていく仕組みが不可欠であろう。

今後、行政や事業者は施策の実施や情報の開示を、専門家やマスメディアは適切な分析に基づく情報伝達を、市民や消費者は、森林・林業問題への関心と理解をもち、必要な場合は税などの形での負担を引き受け、あるいは購買行動につなげるといった、それぞれの役割を果たしていく必要がある。

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