「バイオマス産業社会」とは


「バイオマス産業社会」とは
 バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)が考える「バイオマス産業社会」とは、エネルギーや工業原料をいずれ枯渇する化石資源ではなく、バイオマスなどの再生可能な資源でできるかぎりまかなう産業社会を想定している。

 バイオマスは持続可能な利用を行えば、永続的に再生可能な資源だが、そのためには注意深い資源管理(マネジメント)を行う必要がある。

 地上のどこかで得られる太陽光と水を原料とするバイオマスには、かならず「原産地」が存在する。そこが、石油などの枯渇資源との決定的な違いである。バイオマスは再生可能な資源だが、それが再生産されるためには、バイオマスの「原産地」が再生可能もしくは持続可能でなければならない。

 バイオマスの利用は、その「原産地」の持続可能性と不可分に結びついている。つまり、バイオマス資源をつくりだす山林や田畑の土壌が保全され、地力や生物多様性が維持され、生態系が安定していることである。さらに、地域社会や経済システムが安定的に発展していることが必要である。*

 世界中で危機に瀕し、その再生・保全の必要性が叫ばれている森林や農地などの「原産地」を適切に維持・管理していく方法として、バイオマス資源の利用を推進すべきであろう。

 バイオマスの「原産地」保全の費用をまかなえる形のシステム構築が不可欠だが、「取ってくるだけ」の化石燃料に対し、現時点ではコスト面その他でのハンディキャップがある。しかし化石燃料には、地球温暖化の原因となりうることや、バイオマスよりも大気汚染物質の発生が多いといったマイナスの要素があり、それらを化石燃料のコストに「内部化」することも必要となってくる。炭素税、NOX税、SOX税、排出権取引といった手法が有効であろうし、それらの手法のさらなる改良も、重要な課題となってこよう。

 21世紀の産業社会を循環型の持続可能なものとするためには、バイオマスのような再生可能な資源を永続的に再生産できるような経済社会システムに変えていく必要があるが、そうした経済社会システムに変えていくためには、さまざまな分野の人々がその重要性を理解することが不可欠となってくる。

 バイオマス産業社会ネットワークでは、そうしたバイオマス産業社会構築を目指して、今後、さらに活発な活動を行っていくものである。
 
  *原後雄太・泊みゆき『バイオマス産業社会』築地書館刊より抜粋    
 

 
 
   
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