NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
2004年の動向
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2004年の動向
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(1)施行から一年を経たRPS法
 電気事業者への一定割合(2003年度に0.88%、年度ごとに順次上昇し、2010年に1.35%)の新エネルギー電気利用を義務付けたRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が2003年4月に施行されて、一年がたった*1。経済産業省資源エネルギー庁は2004年7月、電力会社など電力小売事業を行っている25社すべてがRPS法の義務を履行したと発表した。電気事業者に課せられた03年度の義務量(調整後の基準利用量)は約32億7676万kWh。1社は義務量を次年度に持ち越すボロウイングを行い、17社が次年度に持ち越すバンキングを実施した。03年度に電気事業者に供給された新エネルギーの総量は約40億1511万kWhで、うちバイオマス発電が50.7%を占めている。


 RPS法の施行によって、新エネルギーで発電した電気は、電気そのものと環境付加価値分に相当する電気相当量に区分して取引されている。バイオマス発電のうち、一般廃棄物発電は、一部の電力会社では余剰電力購入メニューが設定されているが、それ以外のバイオマス発電では個別に取引価格が決定されている。
 2004年10月に資源エネルギー庁より発表された取引価格調査によると、2003年度のバイオマス発電の取引件数は176件で、取引価格は4.0−3.0円/kWhの範囲で取引されており、単純平均価格は7.5円/kWh、加重平均価格は7.2円/kWh。相当量については実際の取引規模がまだ小さく、価格指標として収斂するほどの取引ボリュームが出なかった模様。また、2004年度の義務量総計は、前年度から9.86%増加の35億9975.4万kWhと発表されている。


(2)2030年のエネルギー需給展望

 総合エネルギー調査会需給部会は2004年10月、2030年のエネルギー需給展望*2についての中間とりまとめを発表した。2030年の見通しとしては、人口減少や産業構造の変化を受け、エネルギー需要が2021年度に頭打ちとなり減少に転じると予測。部門別に見ると、産業部門は横ばい、貨物部門は漸減、民生家庭部門、民生業務部門、旅客部門は引き続き増加するが、長期的には伸び率は鈍化し、減少に転じる見込みとしている。エネルギー供給構造では、分散型電源が総発電電力量の約2割程度まで拡大し、一次供給ベースで再生可能エネルギー・新エネルギーが約10%を占める可能性もあるとの予測が示された。

 一方、環境NGOやエネルギー専門家からなるオープンソースの集まり「市民エネルギー調査会」は、2004年6月、政府の長期エネルギー需給展望の代替シナリオを発表した*3。同調査会は、失業率12.3%になる現状延長の「ゆでガエル」シナリオ、環境戦略産業の伸張を進める「いきガエル」シナリオ、スローライフを実現する「きりカエル」シナリオの3つを提示。広く議論を提起し、現在の硬直した日本のエネルギー政策を変えていきたいとしている。

(3)新エネルギー産業ビジョン
 2004年6月、資源エネルギー庁は、「新エネルギー産業ビジョン」を策定、公表した。新エネルギー産業の中長期の将来像として、@供給サイドだけでなく、より需要ニーズに牽引された自立した持続的新エネビジネスの展開 A地域経済と共存共栄する新エネビジネスの創出 Bグローバル市場で競争力を有する国際社会に貢献する産業 の3点を挙げている。新エネルギー産業への重点的施策に、新しい新エネビジネスモデル&サポートビジネス、地域創発型新エネビジネス、人材育成を標榜している。

 今後のバイオマス・エネルギービジネスの方向性と施策オプションとして、新技術・優良事例の情報共有化や各種法規制の緩和、許認可手続の簡素化・標準化、ワンストップサービスの提供、トータルシステムの設計手法の開発・情報共有化などの事業環境の整備、バイオマス関連情報の収集・提供機能の強化、ソフト関連事業に対するインセンティブの付与、地域連携型モデル地域の設置などの多様な事業関係者のネットワーク形成、新しいビジネスモデル、サポートビジネスの創出支援、資金調達の多様化と顧客の多様化を図るビジネスモデルへの支援、グリーン燃料(熱利用)認証制度の検討などのビジネスモデルの確立・多様化、そしてバイオマスビジネスの海外展開を挙げ、地域の産業振興、雇用創出、課題解決のよい循環、「グッド・サイクル」が歯車となって回り始めるよう促している。

*1 RPS法HP http://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/top/main.html
*2 http://www.enecho.meti.go.jp/jukyuutenbou/mokuji.htm
*3 http://www.isep.or.jp/shimin-enecho/presen_pdf/0801_report1005.pdf

図 今後のバイオマス・エネルギー産業の課題と取り組みの方向性
(出典:資源エネルギー庁新エネルギー産業ビジョン)

新エネルギー産業ビジョン http://www.meti.go.jp/press/0005361/index.html