ここでは、2005年においてめだった活動を行っているいくつかの団体を中心に紹介する。

(1)都市と農村をつなぐ「えがお・つなげて」

 山梨県北杜市を拠点に活動している「NPO法人えがお・つなげて」は、特区申請を行い、NPO法人で初めて耕作放棄地を借り受け、月5万円程度で働く「ボランティア・アルバイト」によって開墾。さらに、ほぼ週末ごとに大豆の種まきや収穫、間伐体験、味噌造りなどの都市農村交流事業などを行っている。都市に住んでいるが、週末、レクレーションとして農作業をしたり、森林に入ったり、子ども達に体験をさせたいという人は多く、毎回、参加者で賑わっている。また、33世帯の過疎の村に木質バイオマス発電などのマイクログリッドシステム(バイオマス、中小水力、太陽光、風力、蓄電池などを組み合わせた地域分散型エネルギーシステム)導入の取り組みも行っている。
 曽根原久司・代表理事は「2008年頃には、日本の財政危機、人口減少、京都議定書第一約束期間開始、農林業での大量離職者による食糧自給率の低下、大学全入化などさまざまな問題が顕在化するだろう。それに備えた社会構造づくりをまず小さなサイズで実現し、広げることを目指している」として、活動を行っている。具体的には、食糧やエネルギーをほぼ自給し、食べていける雇用があり、自立し、誇りをもって働くことができる地域づくりである。
 えがお・つなげてでは、現実の市場経済の中で生き残りを図るため、さまざまな工夫をこらしている。例えば、東京のパティシエと提携して山梨でベリーやハーブを栽培し、直販する。和菓子会社と提携しての、大豆生産も行っている。日本でそうした持続可能な地域モデルづくりに成功すれば、アジア諸国にもアレンジしながら広げていくことも可能となろう。

(2)広島で堅実なペレット普及活動を行う「森のバイオマス研究会」

 広島の「森のバイオマス研究会」では、団体関係者の製材工場の一角に、小型のペレット製造機を設置、工場で出るチップくずを原料に、木質ペレットの注文生産を行っている。地元企業と組んで、「広島型ペレットストーブ」を開発し、ペレットストーブの販売は、地域のレストラン、パン屋など人が集まるところに営業をかけた。設置されると、ペレットストーブを体感できる普及効果もある。ペレットストーブのリースも、一冬6万円で行っている。販売価格3%を団体への寄付とし、代理店制度ですでに通常の営利事業として軌道に乗り始めている。
 木質ペレットを普及させるには、ペレット製造施設を導入するだけではなく、生産地から消費者までのペレットチェーンをつくる必要がある。補助金が出るからと、大規模な設備導入が計画されるケースがあるが、地域にほとんどペレットの需要先がない段階では、採算性が相当厳しくならざるをえないと思われる。 

 
森のバイオマス利用研究会が購入したアースエンジニアリング社のペレット製造機
25kg/h、価格300万円


NPO法人えがお・つなげて  Tel:0551-35-4563
NPO法人森のバイオマス研究会  Tel:0824-74-1772