1.国際的動向

(1)気候変動をめぐる状況

2007年11月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書【*1】が発表され、気候変動が進行しており、それが人為起源の温室効果ガスの増加によるものであることがほぼ断定された。2006年に公表された英国のスターン報告「気候問題の経済的影響」【*2】では、対策を講じなかった場合のリスクと費用の総額は、現在及び将来のGDPの5%強〜20%に達する可能性とした一方で、温暖化ガス排出量削減などの対策を講じた場合の費用は、年間GDPの1%程度で済む可能性があると結論づけた。

2007年6月のハイリゲンダム・サミットでは、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減することを真剣に検討することでG8首脳の合意が得られた。実際の対策はこれからとなるが、数年前には非現実的としか受け止められなかった「温室効果ガス半減」が、国際および国内政治のレベルでも共通認識となってきたことは、気候変動の深刻さを示すと同時に急速に人々の考え方が変化しているとも言えよう。

(2)世界のバイオマス利用状況

国際エネルギー機関(IEA)によると、2003年における世界の一次エネルギー総供給量は105億石油換算トンであり、そのうち再生可能エネルギーの割合は13.3%で、その8割近く(全体の約1割)がバイオマス・廃棄物が占めている。EUを例にとってバイオマスエネルギー生産の内訳を見ると、木質バイオマスなど固体バイオマスが9割近くを占めている。バイオ燃料の割合は小さいが、2006年には生産量が約1.8倍増加と、突出した伸びを示している。折からの石油価格高騰とともに、気候変動対策としてのバイオマス利用が今後さらに拡大していくと見られるが、持続可能性に配慮した利用促進が望まれる。

図:世界の一次エネルギー総供給の燃料別内訳(%)

図:世界の一次エネルギー総供給の燃料別内訳(%)

図:EUのバイオマスエネルギー生産量の推移

図:EUのバイオマスエネルギー生産量の推移

コラム洞爺湖サミットで持続可能なバイオ燃料基準づくりを議題に

本白書のバイオ燃料の項でも述べた通り、バイオ燃料は有力な石油代替手段ではあるが、生態系の破壊や泥炭層燃焼などによるCO2排出、食糧との競合、エネルギー収支など多数の克服すべき課題を抱えている。洞爺湖サミットにおいて、持続可能なバイオ燃料基準づくりの必要性をG8の場で確認し、推進していくことは、日本のプレゼンス向上にも大きく役立つと考えられよう。同様の意見をもつ他団体とも連携して議題にするよう呼びかけているところである。

<泊 みゆき(NPO 法人バイオマス産業社会ネットワーク)>