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はじめに  早急な軌道修正を

2016年12月、再生可能エネルギー調達価格等算定委員会で、一般木質バイオマス発電の電力買取価格に2万kW以上21円/kWhの新区分が決定された。FIT制度開始以前からの、規模別の買取価格区分を設定すべきという指摘が認められ、バイオマス発電の急増に一定の歯止めがかかると期待された。しかし、従来の24円/kWhの価格での認定を求めて、2016年度末に1,100万kWの申請が殺到したという【*】。2017年2月時点でのバイオマス発電の認定容量は約600万kW、そのうち一般木質バイオマス発電が9割近くを占める。
 特に石炭火力発電へのバイオマス混焼は、算定委員会でも取り上げられたように、バイオマス専焼発電に比べて初期投資が少なく、低コストでの発電が可能であり、最近、FIT認定申請が殺到している。だが、石炭は化石燃料のなかで最もCO2排出が多く、同量の発電にあたり、天然ガスの2倍近いCO2を排出する。バイオマスを石炭火力に混焼するなら、半分以上の混焼率にしないと、天然ガス発電よりCO2排出は多くなる。しかもそれだけの大量のバイオマスを国内で調達することは困難であり、ほとんどが輸入バイオマスとなる。

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輸入バイオマスはエネルギー自給にならず、国内の地域経済への貢献も限られ、温暖化対策効果が低い場合もある。膨大な国民負担に見合うメリットがあるのか、今一度検討すべきではないか。その際たるものは、パーム油発電であろう。コラム①にあるように、パーム油は熱帯林破壊、泥炭地開発による大量のCO2排出、希少な生物種への脅威、土地をめぐる紛争、人権問題など、農作物のなかでも最も多くの深刻な問題を抱えている。石炭よりもCO2を多く出す資源を、発電燃料として優遇すべきではない。この点からも、温室効果ガス排出の基準を定める持続可能性基準の導入は重要である。

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実際には、20年間安定的に稼働できるバイオマス発電所は限られるだろう。バイオマス資源の獲得は、例えるなら、3つの椅子をめぐって10人の人間が取り合い、それぞれのプレイヤーは3つの椅子があるから自分は座れると考えるが、実際に座れるのは3人しかいない、椅子取りゲーム(フルーツバスケット)のようなものだからである。
 国内の未利用材については、A材(建材)、B材(合板材)と同時に搬出しなければ、補助金などがないと、安定的に大量に利用することは困難である。当初は林道近くの低コストで搬出できる材があったが、しだいに山奥から出さなければならなくなる。正念場はこれからとなろう。

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再生可能エネルギー電力のコストは劇的に低下し、海外では太陽光発電3円/kWh、風力6円といった価格となっている。しかし、バイオマス発電はそこまでのコスト低下は見込めない。今後バイオマスは、マテリアル利用ののち、熱(特に高温熱)利用・コジェネレーション(熱電併給)、需要に合わせた発電が可能、といったバイオマスの長所を生かす利用へと誘導していくべきだろう。

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一方、この一年で木質バイオマスの小規模コジェネレーションの導入が相次ぎ、チップ乾燥やボイラーの導入、竹や樹皮の利用なども進みつつあるが、課題もまだまだ多い。FIT制度もそうだが、バイオマス熱利用促進政策についても、専門家によるリサーチや検討を経て、構築していくべきであろう。基礎的なデータを収集し、関連情報を整理し提供するしくみを一元・一貫的に整備する必要がある。今までにバイオマスに多くの予算が投じられ、取り組まれてきたが、十分な成果を得られなかったケースも少なくない。その原因を究明し、今後に生かすため、戦略目標を定め、費用対効果にすぐれた方策から実施すべきである。

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国民負担を低減しながら温暖化対策効果や地域経済への貢献を高めるためには、バイオマス利用を発電中心から熱利用へ早急に軌道修正することが重要だろう。熱利用であれば、一件あたりのバイオマス需要量も少なく、持続可能性の問題も生じにくい。以上のような観点から、今後も持続可能なバイオマス利用へ向けて、活動を続けていきたいと考える。

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<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>

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