(1)バイオマスとは

 バイオマスとは、bio=生物、mass=量で、元は「生物資源量」という意味の生態学の用語。1974年の第一次石油危機以後、バイオエタノール(サトウキビなどからつくる燃料用アルコール)などエネルギー利用できる生物資源を指すようになった。最近は、エネルギーだけでなく、バイオマスプラスチックや植物繊維など工業原料として利用できる化石燃料以外の生物資源にも使われている。

(2)バイオマス利用の特徴

 バイオマスは、1)持続可能な管理を行えば再生可能で枯渇しない 2)持続的に利用すれば地球温暖化(気候変動)の原因とならない 3)チップ化、ガス化、液体化など備蓄がたやすく、他の自然エネルギーより発電の年間稼働率が高い 4)地域的に偏在せず、エネルギー安全保障に役立つ 5)地域振興策や新たな産業育成となりうる 6)有機廃棄物の有効利用策となりうる 7)化石燃料に比べ燃焼時の大気汚染物質の発生が比較的少ない 8)太陽光発電や風力発電より発電コストが低い といった長所がある半面、9)化石燃料に比べエネルギー密度が低い 10)広く薄く資源が散在し、収集にコストがかかる 11)食糧と競合する場合がある 12)持続的な利用をしなければ生態系の破壊や社会的問題を引き起こすおそれがある といった注意すべき点もある。

(3)バイオマス潜在量と利用状況

 バイオマスエネルギーの潜在量は、世界全体で世界のエネルギー総需要の約7〜10倍と推定され、実際の利用量も石油、石炭、天然ガスに次いで多い。日本においては、国内の利用可能なバイオマス資源量は、日本のエネルギー総需要の7%程度と見られている。日本の現在のバイオマスエネルギー利用量は、エネルギー総需要の0.9〜2%程度である。

(4)バイオマス利用の問題点

 バイオマス利用を促進するため2002年末に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定され、内閣府、農水省、経産省、環境省、文科省、国交省、総務省が共同で国家戦略の推進にあたっている。しかし、日本のバイオマス利用は法律や制度の壁も高く、これまでの取り組み例の多くで難渋しており、「甘く見れば赤字の山」というのが現実である。右図は、現在の主なバイオマス利用の種類と課題を示したものだが、これら共通の課題として挙げられるのが、1)初期投資の高さ 2)資源収集システムの構築 3)熱利用 4)行政・手続きの壁、品質規格・安全性基準の未整備 等々である。可能性やメリットは大きいが、注意点も多く、利用事業は充分な検討のもとに行われる必要があろう。

表:主なバイオマス利用の種類と課題


*バイオマスの概要については、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークHPの「バイオマス情報データベース」、 バイオマス白書2003〜2005や、『バイオマス産業社会』(築地書館)、パンフレット「バイオマス・ニッポン」等を参照のこと。