3. 食品廃棄物利用の現状

(1)背景と経緯

日本の家庭から出るゴミは年間で約3,350万トン(平成17年度)、このうちの約1/3(約1,100万トン)は食べ物由来のゴミ(食品廃棄物)である。食品関連業者からの食品廃棄物の排出量も約1,100万トン(平成17年度)である。この活用可能なバイオマス資源量の総計は2,200万トンとなる。その上、その中に本来食べられる可食部分と考えられる量が500〜900万トン(約23〜41%)にものぼる状況である。

この食品廃棄物がどのように扱われているかと言うと、大雑把な数値だが、飼料、堆肥、メタンガス回収などに利用されているものが800万トン、焼却や埋め立て処分されている量は1,400万トンにも及ぶ。

図:食品廃棄物の処理状況

図:食品廃棄物の処理状況

日本の食料カロリーベース自給率は40%(総農産物生産量は5,600万t、自給率約60%)、食べ物の多くを外国から輸入している国が、約25%の大量の食べ物を捨てており、食品ゴミ量を減らす工夫が必要である。現状では、家庭からの食品廃棄物は堆肥化、メタン化はされているがごく少量である。一方、食品産業においての再生利用等実施率は53%(平成18年度)となっている。

このような状況の下、平成13年に食品関連事業者を対象に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が施行され、平成19年度には改正された。

(2)食品廃棄物の資源循環の順位

食品リサイクル法(法律は食品関連業者を対象にしているが、家庭でも参考になる)では食品由来廃棄物は循環資源の原材料と考え、その取り組みの考え方と順位は以下の通り。

1) 「生産や流通過程の工夫、消費のあり方の見直しなどによって、まずは、食品廃棄物そのものの発生の抑制に取り組む」
2) 「食品廃棄物のうちで再資源化できるものは飼料や肥料、油脂や油脂製品、メタン、炭化製品(燃料または還元剤としての用途)、エタノールの原料として再利用」
3) 「食品循環資源の再生利用が、経済的または技術的に著しく困難であって、メタン化と同等以上の効率でエネルギーを回収できる場合は熱回収利用」
4) 「食品廃棄物は水分を多く含み、腐敗しやすい性質がある。このため、再生利用や熱回収が出来ない場合は、脱水・乾燥・醗酵・炭化により減量」

(3)家庭系からの食品資源循環利用

家庭から排出される生ゴミのほとんどが、行政により焼却処理されている。しかも小型焼却による処理では、化石燃料を助燃材として使うこともある。エネルギー自給率4%の日本においては問題であり、またCO2の排出量を増やすことともなる。これらの状況から、自治体も少しずつ、処理コストの低減を目指し、また意識も処理から利用へ、と転換しつつある。新潟県長岡市では55t/日の生ゴミをメタン化し、2013年より都市ガスへ導入する事業予定もある。これまでの利用技術の多くは堆肥化であったが、これからは地域の特性、市民意識のあり方により多様な転換技術が採用されるものと考える。

下の表は利用の種類別の食品廃棄物利用施設数だが、堆肥化が多く、次いでメタン化などである。堆肥化は建設費・維持管理費も焼却と比べ安価で、技術的にも大きな課題はなく小都市に適する。これから中大都市で期待される技術はメタン醗酵技術であろう。畜産が盛んな地域では飼料化もよいが、課題は多い。飼料化には魚あらのフィッシュミールも含まれている。

表:公的機関と民間が実施する資源循環利用概略施設数(NEDOなどの実証試験を含む)

(4)食品関連事業者由来の食品資源循環利用

産業界での再生利用等実施率は平均53%を超えたが、事業所規模の小さな食品小売業、外食産業は20〜30%台と低い。しかし循環資源の意欲的な活用事例も多く出てきている。マクドナルド(リサイクル率100%を目指す)、松屋フーズ(全社でリサイクル率75%)、京王グループ、セブンイレブンとタイアップするアグリガイアシステムは、肥・飼料化を行い再生利用に務めている。

飼料の8割を輸入に頼る状況打破の一つとしても飼料化は望ましいものである。最近の飼料化には加工、乾燥工程が必要なく、加熱によるCO2排出も抑えられ、同時に手間・コストの削減が可能な液状処理(リキッドフィーディング)が導入されている。この方式をイオンが採用し、全国を7地区に分け、地区ごとに食品残渣を養豚飼料とする構想があり、その豚肉の直販を開始した。小田急ビルサービスも同様な方式(農水省・日本大学と共同開発)で39t/日の資源を養豚飼料とし、10軒の契約養豚農場へ送って、その豚肉を販売し、好評とのことである。

メタン化施設も増え、大型メタン施設では、京丹後市のアミタが約50t/日の循環資源をメタン化し、発電・熱利用、汚泥は堆肥、処理液は液肥として近隣委託水田農家や自社牧場へ供給活用している。また、山鹿市は豚糞尿20t/日、生ゴミと焼酎粕25t/日など合計約50t/日をメタン化し売電、また液・堆肥は約800haの畑、水田で利用している。日本最大規模のメタン化施設は東京都大田区のバイオエナジー社で、規模は110t/日、発電量は24,000kwh/日、主に売電である。なお、漁業系廃棄物や乾式メタン醗酵で問題になっていたアンモニア阻害による処理性能低下を解決する技術も現れ、釜石市で実証試験も行われている。

(5)循環利用する際の課題

主な個々の技術では、メタン化技術は有望だが、高濃度処理水の処理コストが高く、特に小規模ではすべての面で高コストになりやすく、導入は厳しい。そして、飼料・堆肥化では夾雑物(異物)除去と安全性確保が最大の課題である。特に肥・飼料化においては、顔の見える、バイオマストレーサビリティーが問題になってくるのではないかと考える。

資源化における共通の大きな問題は原料である循環資源量の安定確保と収集運搬システム構築である。夾雑物がなく、水分も少なく、運搬距離が短く、望む一定量が毎日きちんと施設へ搬入されてこそ施設は成立し、そして、できた循環製品が適正な価格で販売され、喜んで利用されて廻る仕組み構築が鍵を握る。食品関連業者のみならず、一般消費者も家庭生ゴミ分別等に協力し、有機資源の利活用推進を図ることが大切である。そして環境・農畜水産・食が一体となった、地域ベストを考え、地域再生へとつなぐ視点も欲しいと思う。

図:食品循環の環

図:食品循環の環

<竹林 征雄(国連大学ZEF プログラムコーディネーター)>