「持続可能なバイオ燃料の基準づくり」推進を洞爺湖サミットの議題に

深刻化する気候変動対策、近年の原油の高騰などを背景として、2007年1月にブッシュ米大統領は一般教書演説で
350億ガロンのバイオ燃料導入を表明、またEUは2007年3月、2020年に輸送用燃料の少なくとも10%をバイオ燃料と
する目標を決定するなど、世界的にバイオ燃料への関心が非常に高まっています。  その一方、食糧との競合や生物多様性保全への脅威、土地や水資源の不足など、バイオ燃料利用への懸念も噴
出してきています。特に、インドネシア、マレーシア両国におけるバイオディーゼルの原料となるパームオイル(アブラ
ヤシ)のプランテーション開発については、大規模な泥炭層破壊による温室効果ガス排出の原因となり、むしろ温暖
化を加速しているとの指摘があります*2。  バイオ燃料を始めとするバイオマス資源の利用は、環境・社会・経済それぞれの面に配慮された持続可能な利用で
あれば、地域発展、農林業の振興、温暖化対策などへの有効な手段となりうるが、それらに欠けた生産方法であれば、
温暖化を加速するだけでなく、上記のような環境社会問題の発生などを生むおそれがあります。  これらの認識にもとづき、近年、バイオ燃料の持続可能性について注意を喚起する報告書が、国連、OECD、英国王
立協会、スイス連邦理工科学校付属研究所などから相次いで公表されており、またEUでは原料作物やバイオ燃料の
輸入に関わる「持続性証明システム」の検討を進めていますが、まだ国際的な会議の場での充分な議論が行なわれ
ているとは言えない状況にあります*3。  一方、洞爺湖サミットにおいては、地球環境問題が最も重要なテーマの一つとなっています。そこで、日本からの提案
の一つとして、持続可能なバイオ燃料利用のための基準・制度づくりをサミットの議題の一つとして取り上げることは、
日本の地球環境問題および持続可能性への関心と貢献を世界にアピールする、非常に効果的な機会となり得るでしょう。  持続可能なバイオ燃料の基準づくりそのものは非常に多岐にわたり、バイオ燃料の原料の種類や生産方式ごとに、
綿密な調査研究および多様な関係者間の意見調整などが必要となります。G8サミットでは、持続可能性の重要性に対
する認識の再確認と、作業の必要性への関心を喚起し、実際に強力に推進することで、この問題への対処とすること
ができます。  なお、ハイリゲンダム・サミットの首脳宣言でもバイオ燃料の持続可能性について触れられており(運輸68)、国際的な
認識は高まりつつあります*4。  以上の理由から、是非、洞爺湖サミットにおいて持続可能なバイオ燃料利用のため
の基準・制度づくりをサミットの議題の一つとして取り上げることを提案します。 NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
国際NGO FoE JAPAN
財団法人地球・人間環境フォーラム 満田夏花、坂本有紀

<参考資料> * 1 持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言

* 2 インドネシア 泥炭地破壊で世界第3 位のCO2 排出国に~木材・パームオイル需要と地域経済開発が元凶~ 

* 3 国連「持続可能なバイオエネルギー:意思決定者のためのフレームワーク」  
     OECD「バイオ燃料:病気より悪い治療法?」
    国立王立協会「持続可能なバイオ燃料:見通しと課題」
    スイス連邦理工科学校付属研究所「エネルギー生産の環境収支」    
    EU「再生可能資源からのエネルギーの利用に関する」指令案(Article15-18)     バイオマス白書2008 バイオ燃料2007年の動向

*4 ハイリゲンダム・サミット首脳宣言 世界経済における成長と責任 p21,22

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