1.バイオ燃料 2007年の動向

(1)世界の動向

2007年のバイオマスは、世界でも日本でも、バイオ燃料ブーム一色だった感すらある。

1月に米ブッシュ大統領が一般教書演説で2017年までに350億ガロン(約1.3億kl)のエタノール導入という壮大な目標を発表。一方EUは、3月の欧州理事会で2020年までに輸送用燃料の最低10%をバイオ燃料でまかなう目標を決定した。そのうち20%が輸入で、半分は植物油になると予想している(食用作物以外を原料とする第二世代バイオ燃料の導入状況などにより、この割合は変る)【*2】。

マレーシア、インドネシアなどからのバイオディーゼル原料としてパームオイル360万トンの輸入を見込んでいるが、これが両国の熱帯林や社会に大きな影響を与えるのではないかと懸念される(コラム◆パーム油とバイオディーゼル、ボルネオ保全トラストの取組み参照)。アブラヤシプランテーションが急速に拡大しているボルネオ、スマトラ両島では、大規模な熱帯林破壊が行なわれ、生物多様性の消失や地元住民との土地問題などが頻発している。特に、プランテーション開発などにともなう泥炭層燃焼によって、日本の総排出量の2倍近い大量のCO2が排出されていると指摘されており、そうしたパームオイル利用拡大は温暖化をむしろ加速することになりかねない【*3】。

6月、世界の30以上の団体はEUのバイオ燃料推進への「モラトリアム」を要請した【*4】。このモラトリアム要請文は、EU市場向けのバイオ燃料は気候変動を加速し、生物多様性を破壊し、地域社会を根絶させると警告している。

心配されていた食糧との競合の問題も顕在化した。中国でも余剰トウモロコシ利用やエネルギー安全保障などの観点からエタノール増産が続いたが、原料となるトウモロコシが値上がりし、豚肉価格にも影響し始めたため、中国政府は食糧を原料とするエタノール生産工場の認可を停止した。また、ジュネーブ大学のジーグラー教授は国連人権委員会で、「バイオ燃料は人道に対する犯罪」であり、バイオ燃料に転換できる農作物の価格が急騰し、この1年間にアフリカでは小麦が2倍、トウモロコシが4倍の価格になったと指摘し、貧しい人々が日々の食事に困っているという現実を訴えた。

廃棄物を原料とするものなど食糧と競合しないバイオ燃料生産は、石油代替の手段となりうる。しかし、多額のバイオ燃料向け投機資金がアジア、アフリカ、南米などに流入し、農地囲い込みが始まるなど、持続性についての配慮が充分でないままの増産体制により、バイオ燃料利用拡大にかかわる混乱がますます深まっている状況である(詳細はコラム◆バイオ燃料をめぐる国際動向を参照のこと)。

(2)日本国内の動向

日本国内でも矢継ぎ早な動きが見られた。2007年1月、大阪府堺市に廃材からバイオエタノールを製造するバイオエタノール・ジャパン・関西のプラントが稼動。2月に農水省が最大620万klの国産バイオ燃料大幅生産拡大に向けた工程表(ロードマップ)を発表した【*1】。3月、全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会が設立。4月、ETBE【*2】を混合したガソリンの販売が首都圏で開始された。5月に経産省次世代自動車・燃料に関する懇談会が、電気自動車、燃料電池車、クリーンディーゼル、バイオ燃料、ITを活用した交通システムの5つについて検討を行なった「次世代自動車・燃料イニシアティブ」をまとめた【*4】。

6月、バイオ燃料地域利用モデル実証事業(バイオエタノール混合ガソリン事業)の事業実施地区として、北海道清水町、苫小牧市、新潟市の3カ所を選定。7月にはバイオディーゼル事業として5カ所を選定した。11月、農水省と経産省はセルロース系バイオ燃料の生産についての具体的な目標、技術開発、ロードマップ等を内容とする「バイオ燃料技術革新計画」を策定するバイオ燃料技術革新協議会【*5】を組織。2015年に生産費100円/リットル、さらに40円/リットルを目指す。

12月、経産省総合資源エネルギー調査会石油分科会 の次世代燃料・石油政策に関する小委員会は、1)2010年に50万klのバイオ燃料を導入する目標は、主にブラジルからの輸入エタノールで実現させる 2)電気自動車、水素・燃料自動車など次世代自動車に比べ、バイオ燃料は即効性がある 3)直接混合、E3(エタノール3%混合ガソリン)導入に向け事業者の登録制度創設、混合する事業者に品質確認を義務付ける法制度を整備する 4)中長期的には、セルロース系原料での安定供給、経済性を実現できる技術革新にかかっている等を主旨とする中間とりまとめ案を策定した【*6】。

石油業界はETBEによるエタノール導入を進めてきたが、日本政府のバイオ燃料導入目標50万klを達成するには、ETBEの製造に必要なイソブテンが不足するため、E3【*7】等の直接混合への道を開いたものと見られる。今後、日本のバイオ燃料政策は、このとりまとめに沿った形で進むものと思われる。

また、平成20年(2008年)度税制改定予定事項に、バイオエタノール混合ガソリンに係るガソリン税の減免措置とバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の特例措置が盛り込まれた。

コラム持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料に関する共同提言

2007年2月、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク、(財)地球・人間環境フォーラム、国際NGO FoE JAPAN が提言団体となり、以下の「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料に関する共同提言」を発表した。24団体、3個人が賛同。バイオ燃料への関心が高まる中、NGO/NPOのバイオ燃料への見解の一つとして、政府系報告書を含むさまざまなメディアで紹介され、バイオ燃料導入についての議論に一石を投じた。

0.輸送用エネルギー需要を削減するための抜本的対策を実施すること
1.国内産・地域産のバイオマス資源、また食糧需要と競合しないバイオマス資源を優先的に利用すること
2.原料供給源が明確であり、サプライチェーン(供給連鎖)のトレーサビリティ(追跡可能性)が確保されていること
3.生産から加工、流通、消費までの全ての段階を通してトータルに、温暖化防止効果が見込めること
4.原料生産のため、以下の責任が果たされていること【法令遵守】【環境・社会影響評価】【生態系保全】【社会的合意】【環境管理】

※要請の全文および解説は、http://www.foejapan.org/forest/doc/recmndbiofuel_pamph.pdfに掲載

(3)バイオ燃料の課題 − 輸入 −

バイオ燃料の持続性に関わる課題についてまとめたのが下表である。現在、まとまった量を輸入可能なのは、ブラジルからのエタノールおよび、マレーシア、インドネシアからのパームオイルにほぼ限られる。量が限定的であれば、ブラジルからエタノールをある程度輸入することは可能な模様だが、「日本もエタノールを輸入する」というアナウンス効果により、現地での過剰反応を呼び起こすおそれはある。アジアにおいても同様である。

マレーシア、インドネシアからのパームオイルは、前述したように環境・社会問題が深刻化しており、持続可能性についての確認できない場合は、輸入を控える方が適切であろう。現在、持続可能なパームオイルのための円卓会議(RSPO)【*】によって認証制度づくりが進められているが、ヨーロッパの政府やNGOなどからは、RSPOの認証制度はCO2分析が含まれていないなど充分ではなく、かえって環境・社会問題が深化するのではないかといった懸念も出されている。

他のアジア諸国でのサトウキビ、キャッサバ、あるいはヤトロファなどからのバイオ燃料生産も検討されているが、そもそも生産国自身の輸送用燃料以上に生産できる国は見当たらず、食糧との競合の問題もあり、日本への輸出は簡単な話ではないと考えられる。

表:バイオ燃料の種類と持続性

注:上の表は一般的な状況について記したものであり、個別のケースによって差がある。(作成:泊みゆき)


*1 http://www.rspo.org/「持続可能なパーム油のための原則と基準(仮訳)」 http://www.foejapan.org/forest/doc/rspo_p&c.pdf

(4)バイオ燃料の課題 − 国産エタノール −

国産バイオ燃料については、日本は食糧自給率も低く、エネルギー作物栽培にそもそも不向きである。コメからのエタノール製造では、生産に必要な投入エネルギーの方が生産されたエタノールの熱量より多くなる、つまりエネルギー収支がマイナスになる見込みが高く、そうであれば温暖化対策やエネルギー安全保障上の意味はなくなる。

米ブッシュ政権のエタノール増産政策の影響で、トウモロコシ価格が高騰し、日本の畜産農家は大きな打撃を被っている。その影響で飼料米や藁の価格も上昇しており、35円〜50円/kg程度で取引されているという。一方、エタノール原料の場合は、免税なしで0円、免税して20から25円/kg程度の買取価格となると言われている。余剰作物なども、飼料用に回す方が経済的にも有利であり、食糧自給率向上の意味もある。

藁の場合、大量に収集するシステム構築上の困難が予想される。藁はかさばるため割に合わなくなる輸送距離が短く、数万、数十万haのまとまった農地に同一資源作物を作付けできる米国やブラジルとは全く状況が異なる日本で、事業化は相当困難と見られる。木質についても、逆有償の廃材は近年、各地で建設されたバイオマス発電用途ですでに逼迫状況にある。山には膨大な量の間伐材、林地残材があるが、回収ルートの構築が課題である。

表:国産エタノール製造 原料別課題

(作成:NPO 法人バイオマス産業社会ネットワーク)

エタノールは、ガソリンに添加できるという利点はあるものの、セルロース系バイオマスの利用法としては、熱・発電利用やBTL(バイオマス・トゥー・リキッド)に比べ変換効率が悪い(コラム◆バイオ燃料製造に伴う発熱量の減少参照)。20、30年先の輸送手段をどうするかを考えるなら、バイオマスなど自然エネルギー由来の電力による電気自動車や、BTLなどとも比較しながら推進していくべきだろう(コラム◆現実的バイオマス導入戦略―都市部と中山間地域における資源有効活用についてを参照のこと)。

コラムバイオ燃料製造に伴う発熱量の減少

バイオ燃料の原料は多種多様であり、その使途や目的にかなう燃料に加工される。例えば自動車用には液体燃料が望ましいので、澱粉や木質原料からのエタノール製造が現在進められている。その際、原料費や輸送費を下げ、燃料製造段階では環境負荷を減らし、さらに製造中に失われる熱を最小にしなければならない。ここではそのうち製造過程での熱損失について述べる。

下図は原料および製造される各種燃料の発熱量を示す。この熱量は、燃料が完全燃焼して二酸化炭素と水蒸気になるとしたときの理論値である。原料と製品の発熱量の差が大きいほど加工時の損失が大きいことを示している。

木質原料や澱粉・糖の発熱量は17.6MJ/kgであるが、エタノールにすると71%の12.4MJ/kgに減る。理由は発酵の際にエタノールの他に二酸化炭素を生じるからである。得られたエタノール水を無水にするため通常の蒸留に続いてベンゼンなどを加えて共沸蒸留する必要があり、そのため発熱量は約51%の9.0MJ/kgに減る。さらに、木質系原料の場合は含まれているリグニン分(ここでは25%と仮定)がエタノールに変換できないため発熱量はさらに低く、41%の7.2MJ/kgである。仮に透過膜を使って分離熱を減らしても、約49%である。実際の製造では種々の損失を伴うため、最終的な発熱量は原料の35%以下であろう。

これに対して木質バイオマスから熱化学的方法による合成ガス(一酸化炭素と水素の混合気体)は15.9MJ/kgで、原料の90%の発熱量が得られる。これをさらに液体燃料BTL(biomass to liquidの略)に変換してガソリンだけを取出せば、70%の12.3MJ/kgを期待できる。さらにガソリン以外の可燃性気体や液体も得られるので、それらを含めると発熱量はさらに高い。この方法には合成ガスの製造とフィシャー・トロピシュ合成法(F-T法)による炭化水素製造とが技術課題であるが、将来に期待がもたれている。

今後は燃料製造時以外の各種損失や無駄も省き、高収率のバイオ燃料製造に向けた方策が課題である。

図:各種バイオマス燃料の発熱量の比較

図:各種バイオマス燃料の発熱量の比較

<池上 詢(京都大学名誉教授)>

コラム現実的バイオマス導入戦略―
都市部と中山間地域における資源有効活用について

IPCCの第4次報告を受け、温室効果ガスの50-70%削減の展望が求められている今、バイオマス導入戦略も、農村振興や廃棄物対策を重視した玉虫色の内容から、脱温暖化・気候変動対策に軸足をしっかりおいた現実的戦略に向けて、軌道修正していく必要がある。ここで、技術ロマン主義的なわが国の施策に警鐘を鳴らしたい。危機打開のために必要なことは、ミニマムとしての現実的施策を、省庁横断型の「統合施策」として、また、研究開発から峻別して、確立することである。そのうえで、安全性確認や改良のための試験、あるいは、さらなる飛躍のための科学研究や新技術開発が組み合わされるべきであろう。

昨年に引き続き、2008年も、自動車用燃料の問題は、税制のあり方を含め、国民的な関心を集めている。しかし、温暖化対策という観点からは、エタノールやBDFあるいは水素などのシナリオにはそれぞれ大きな限界がある。まず、液体燃料に基づくシナリオは、内燃機関の実走行モードでの効率の低さのため、図に示すように、総合効率(燃料基準)で燃料電池車や電気自動車には勝ち目がない。さらに、燃料電池シナリオの場合、安価な電極技術が実現したとしても、水素供給ステーションについては、多大なインフラ投資を行なって高度の安全性を実現するための社会的コストが制約となる。これらと比較すれば、既存の送配電インフラを利用するプラグインハイブリッド自動車シナリオの現実性がきわだってくる。

そのための電池技術も、都市や農村住民の日常交通の移動距離を数十キロ以内と考える限り、すでに実用化の域に達している。農村部の軽トラなどの場合、鉛蓄電池を用いるだけでも直ちに移行可能であろう。

図:各種輸送用燃料シナリオの総合効率の粗い概算

図:各種輸送用燃料シナリオの総合効率の粗い概算(*1を一部訂正)

表は1997年国土交通省によって行われた自動車の環境負荷の試算である。各種の環境負荷の中で、地球温暖化への負荷に比べ他の負荷の解決がさらに大きな課題となっていることがわかる。プラグインハイブリッドにすることにより、大気汚染、温暖化および騒音については大きく改善されるし、GIS・GPS技術により、事故や混雑は回避の方向へ向かうと期待される。都市再開発によりそのスプロール化を解消し、公共交通を充実しつつ、自動車の平均走行距離を制限するようにしていけば、自動車交通システムは意外に持続力を持ちそうだ。

表:自動車交通の外部費用推計(中位数)

(兒山、岸本モデル:道路投資の評価に関する指針検討委員会1997)

負荷項目 年間総外部費用
(兆円/年)
走行距離当り
(円/台・km)
輸送量当り(円/人・km)
(トラック:円/トン・km)
乗用車 バス 大型トラック 小型トラック 乗用車 バス 大型トラック 小型トラック
大気汚染 8.2804 1.8 69.2 59.1 13.8 1.3 4.8 19.8 114.1
気候変動(CO2 2.2625 2.2 9.4 7.8 3.1 1.6 0.7 2.6 25.9
騒音 5.8202 3.6 9.4 7.8 3.1 1.6 0.7 2.6 25.9
交通事故 5.1680 7.1 7.4 7.9 4.9 5.0 0.5 2.7 40.8
インフラ(整備) 5.7060 7.0 7.0 7.0 7.0 5.0 0.5 2.4 58.2
混雑 6.0000 7.3 14.6 14.6 7.3 5.2 1.0 4.9 60.3
合計 32.4505 29.0 117.0 104.2 39.2 19.7 8.2 35.0 325.2

このような見通しに立てば、バイオマス・廃棄物の電力への変換は依然として重要であることがわかる。都市部では、筆者ら【*2】がかねてから主張してきたように、バイオマスをウエット系、塩素フリーなドライ系、含塩素系(塩ビなど)に分別し、ウエット系については、下水道と下水処理のインフラを発展的に活用してエネルギー回収する一方、塩素フリーなドライ系については、サーマルプロセスでの廃プラスチックスとともにガス化し、得られたガスを高効率火力発電に導入することが、インフラ整備の中期目標として現実的であり、CO2約2000万トン弱の削減効果を持つ。しかしそのためには、環境、経産、国交、農水の政策統合が不可欠である。

一方、農山村部では、小水力、太陽光、バイオガス化などに加え、小型ガス化燃焼・スターリングエンジン発電など、現実的バイオマス発電・エネルギー自給の新しい可能性が期待される。

<堀尾 正靭(東京農工大学 大学院共生科学技術研究院教授)>

*1 堀尾正靭、再生可能エネルギーとバイオマス、現代化学、438、9、pp.26-30, 2007

*2 堀尾正靭、野田玲治、バイオマス・「廃棄物」エネルギー・システム、「骨太のエネルギーロードマップ」、
化学工学会エネルギー部会編(共著)、化学工業社、pp.246-274, 2005

(5)廃食油バイオディーゼル利用の取組み

2007年、廃食油を原料とするバイオディーゼル(BDF)利用の取組みが各地で進展した。3月には、品質規格やガイドラインの作成、税制優遇など制度面での利用促進策の検討や関係者間の意見交換等を目的に、全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会【*1】が設立された。また熊本県では「くまもとEco燃料拡大推進事業」として、企業、団体、大学、自治体、県の関係機関で構成する研究会を発足・開催、普及啓発や無料でBDF製造技術指導が受けられる事業化支援などを行っている【*2】。茨城県でも「バイオディーゼル燃料普及促進研究会」を設置、「バイオディーゼル燃料導入促進マニュアル【*3】」を取りまとめた。

一般に、廃食油BDF導入における最も重要なポイントは、回収システムをどう構築するかである。従来は、NPOやボランティアによる回収や業者による回収などが行なわれてきたが、一般廃棄物の資源回収で取り扱い、もよりのBDF製造施設に運ぶのが最も効率的だと考えられる。台湾でも、家庭からゴミ収集車によって廃食油を回収する計画を発表している【*4】。廃食油BDFは資源量は限られているが、エタノールよりもエネルギー収支やコスト面で有利である。日本政府が掲げる2010年50万klのバイオ燃料導入目標のためには、5万klの実用化が危ぶまれる国産エタノールよりも、廃食油BDFに力点を置いた方が、経済的にも社会的にもメリットが多いのではないかと考えられる。

その他、廃食油BDFでは、既に回収ルートと飼料用・工業用などの利用先がある大口業務用廃食油の扱いに配慮が必要であろう。また、製造されたBDFの使い道として、自家消費か一般販売かも重要である。一般販売するには、品質規格を満たす必要があるが、検査費などがかさむ。量が多くなければ、自家消費とするのも一案である。

菜の花プロジェクト、ヒマワリプロジェクトも各地に広まっているが、概ね、一度食用にしてから廃食油をBDF利用している。300〜800円/リットル程度という日本の生産コストの高さを考えれば、合理的な方法である。これらのプロジェクトでは、観光や環境教育とのタイアップが多く行なわれ、東近江市(旧愛東町)などのように地域活性化に結びついている事例もある。一方、他のバイオマス利用施設でも見られるが、過大な能力の製造施設を建設し、原料が集まらないケースも見受けられる。

また、新日石などは、動物油など従来BDFにしにくかった資源も利用できる水素化処理油(BHD)の開発に成功し、2007年10月より都バスで利用され始めている【*5】。

コラムパーム油とバイオディーゼル、ボルネオ保全トラストの取組み

ボルネオ島における森林伐採とアブラヤシプランテーション

世界で3番目に大きい島ボルネオ島では、森林開発、次に、サトウキビ、タバコ、ゴムなどのプランテーション開発が進んだ。サバ州では、日本の経済成長と共に丸太生産が急拡大した。1978年、戦前60年間に生産した丸太合計をはるかに上回る1,329万立方メートルを生産し、その60%以上が日本向けに輸出された。伐採後、アブラヤシプランテーション開発の波が押し寄せ、特に河川周辺に広がる肥沃な土地は猛烈な速度で開発が進んだ。2006年、サバ州ではついに州面積の17.1%を占めるようになった。サバ州を追ってサラワク、インドネシアのカリマンタンで急速に開発が進んでいる(表1)。2006年、ついにインドネシアがマレーシアをパーム油生産量で追い越した(表2)。

表1:ボルネオ島におけるアブラヤシ作付面積(1984-2003)

1984年 1998年 2003年 年増加
(1984-1998)
年増加率
(1998-2003)
西カリマンタン州 13,044 279,535 415,820 24.47% 8.27%
中央カリマンタン州 53 110,376 222,034 72.60% 15.00%
南カリマンタン州 0 93,902 139,634 8.26%
東カリマンタン州 44 78,938 192,146 70.77% 19.47%
インドネシア
カリマンタン合計
13,141 562,751 969,634 30.78% 11.50%
サバ州 160,507 842,496 1,135,100 12.57% 6.14%
サラワク州 26,237 248,430 464,774 17.42% 13.35%
東マレーシア合計 186,744 1,090,926 1,599,874 13.44% 7.96%
ボルネオ島総計 199,885 1,653,677 2,569,508 16.29% 9.21%

出典:WWFマレーシア

表2:世界のパーム油生産:2002-2006(千トン)

2002 2003 2004 2005 2006
マレーシア 11,909 13,355 13,976 14,962 15,881
インドネシア 9,370 10,530 12,350 14,070 15,900
その他 4,113 4,226 4,583 4,700 4,952
合計 25,392 28,111 30,909 33,732 36,733

出典:Oil World Annual (1999 - 2006) &Oil World Weekly (15 December, 2006) : MPOB - For data on Malaysia

日本企業と日本政府の計画

2006年7月25日、トヨタ自動車と新日本石油はアブラヤシから採れるパーム油を原料にしたバイオ燃料を開発し、2009年からマレーシアで生産を始めると発表した。両社はマレーシアで実証実験を行い、東南アジアや日本での販売するとのことである。2006年8月、安倍元首相がマレーシアを訪問した際の合意文書に、地球温暖化対策の一環として、パーム油をバイオ燃料に転換する技術開発協力を2008年度に開始する内容が盛り込まれた。参入企業は、将来的な事業規模数十億円と見通しを立てている。一方、国際湿地保全連合は、昨年末、アブラヤシプランテーションは湿地を乾燥地に変えるため、泥炭から大量のCO2が排出され、石油を使ったほうがまだましであると警鐘をならした。

バイオ燃料生産

バイオ燃料ビジネスへ参入する企業、後押しする政府が需要を掘り起こし、その思惑が植物油脂価格を押し上げ、結果、地球生態系の最後の砦とも言える熱帯雨林の破壊が危惧されている。熱帯雨林は、ヘクタールあたり400トンの炭素を長期間固着し、伐採後、適切に管理すれば毎年9トン以上の炭素固着能力を有すると言われる。半乾燥地、乾燥地で、下水等の水源を利用したバイオ燃料生産であれば温暖化対策効果は明白であるが、大量に炭素を固着している熱帯雨林を破壊して生産するバイオ燃料の温暖化軽減効果は極めて疑問である。

ボルネオ島の生物多様性への脅威

リオデジャネイロ会議(地球サミット)において、生物多様性は人間社会の持続可能な発展の指標として認識された。ボルネオ島は最も多様な生物が生息している島であるが、多くの種の絶滅が危惧されている。温暖化対策としてバイオ燃料需要をアブラヤシ産業に掘り起こせば、さらにアブラヤシプランテーション開発が進み、多様な動植物種を絶滅の淵へと追いやり、生態系の分断、劣化、破壊が危惧される。結果、地球全体として生物多様性が減少し、バイオ燃料による温暖化対策が人類の持続可能な発展を妨げる可能性が大きい。

ボルネオ保全トラストの取り組み

2006年10月、サバ州法にもとづき、サバ州野生生物局局長を常任理事とし、アブラヤシ産業関係者、林業関係者、観光事業者の参画を得て、ボルネオ保全トラスト【*】が設立された。トラストは、ボルネオ島で生産された資源で作られた商品のほんの一部を還元してもらい、重要な土地を購入して生態系を繋ぐ事を目的としている。バイオ燃料参入企業を含む多くの企業や、資源を利用して便利な生活を営む人々がパートナーとなってオランウータン、ボルネオゾウなど多様な生物と共生するボルネオ島を実現するため、全ての関係者に参画を呼びかけている。

<坪内 俊憲(星槎大学共生科学部准教授、ボルネオ保全トラスト事業責任者)>

* ボルネオ保全トラストHP http://www.zeri-bct.jp/

コラムバイオ燃料をめぐる国際動向

この1年のバイオ燃料をめぐる国際動向の最大の特徴は、その生産・利用の野放図な拡大への有力国際機関、研究者・研究機関、NGO等からの批判が噴出したことだろう。

国連食糧農業機関(FAO)が中心となり、様々なエネルギー分野で活動する国連30機関すべてがかわった「持続可能なバイオエネルギー:意思決定者のためのフレームワーク」と題する5月の国連報告【*1】は、バイオエネルギーのもつ基本的問題として、貧しい人々へのエネルギー供給能力、農産工業開発と雇用、健康とジェンダー、農業構造、食糧安全保障、政府予算、貿易・対外収支・エネルギー安全保障、生物多様性と自然資源管理、気候変動にもたらす影響を取り上げた。それは、「産業開発の是非や発展速度、追求すべき技術・政策・投資戦略はいかなるものかを決定する前に、バイオエネルギーの経済・環境・社会的影響を注意深く見極めねばならない」と警告した。そして「輸送またはその他の燃料としてよりも、熱電併給(コジェネ)のためにバイオマスを利用するのが、今後10年における温室効果ガス排出削減のための最善にして、最も安上がりの方法だ」とまで言い切った。

6月にはスイス緑の党が、新興国におけるバイオ燃料生産が生態的・社会的災厄を引き起こしているとして、バイオ燃料輸入のモラトリアムを主張した。これはスイス連邦理工科学校付属研究所(Empa)の研究【*2】に触発されたものだ。この研究は、原料を異にする26のバイオ燃料の温室効果ガス排出と環境全体(自然資源消耗・人間の健康・生態系の統合指標)への影響をガソリン、ディーゼル、天然ガスと比較した類例のない包括的研究だ。森林破壊や土地利用の変化を考慮しなければ、大部分(26のうちの21)のバイオ燃料は温室効果ガス排出量を30%以上減らすことができる。しかし、ブラジルの大豆とサトウキビ、米国の大豆とトウモロコシ、EUの菜種、マレーシアのパームオイルを原料するものも含むほぼ半分(12)のバイオ燃料では、その全体的環境コストは化石燃料より大きくなってしまう。環境負荷が相対的に小さいと認められるバイオ燃料は、廃調理油を原料とするバイオディーゼルや草や木材を原料とするエタノールに限られる(下図参照)。

図:化石燃料とバイオ燃料の温室効果ガス排出と環境影響の比較

図:化石燃料とバイオ燃料の温室効果ガス排出と環境影響の比較

9月には経済開発協力機構(OECD)の「持続可能な発展に関する円卓会議」に向けて提出された議長報告「バイオ燃料:病気より悪い治療法?」【*3】が、温室効果ガス削減のために必要な費用があまりに高いばかりでなく、「森林、湿地、草地などの生態系がバイオ燃料作物に取って代えられる強力な誘因がある」から環境損傷にもつながると、バイオ燃料補助金の廃止を求めた。この報告も先のスイスの研究結果を論拠の一つに据えている。

この報告は、食料供給と直接競合することもなく、環境影響も比較的小さいと大企業・ベンチャー企業や各国政府が開発を競うセルロース系エタノールなどの“次世代バイオ燃料”に関しても、所詮は“ニッチなプレーヤー”にとどまり、化石燃料に代替するほどの市場は持ち得ないと見る。なぜなら、「大規模生産は広大な土地からのバイオマス調達を意味するから物流・経済上の克服困難な問題が生じる。また、これまでの原料バイオマス調達コストの分析は生産コストに焦点を当てるだけで、それも地代を無視するか、不当に低く見積もっている」からだ。

このような批判の嵐にもかかわらず、産業界と諸国政府の“ゴールド・ラッシュ”のような“バイオ燃料ラッシュ”が続いている。2006年1年間に増えた米国のエタノール工場数は15だったが、この1年でそれを上回る24の工場が加わった。操業を始めた米国バイオディーゼル工場も、06年の57から67に増えた。原料となるトウモロコシ、大豆の価格は“暴騰”を続けている。それでも、年末には、国の輸入石油依存を減らし、また温室効果ガス排出量を削減するといった目標の達成のために、2022年には現在の7倍以上の360億ガロンのバイオ燃料利用を義務化する新たなエネルギー法を制定した(ただし、トウモロコシ原料エタノールは2015年までに150億ガロンに増やすにとどめる)。

EUでは2007年、バイオ燃料作物(主に菜種)栽培面積が奨励金支払対象の上限である200万haを越え、284万haにも達した。それでも菜種、菜種油の価格(パリ先物)は、この1年で60%、45%も上昇している。にもかかわらず、2020年までに輸送用燃料の最低10%までを植物を原料とするバイオ燃料に置き換えることが義務づけられた。その実現のためには、現在の穀物・油料種子作物・砂糖作物収穫面積の70%以上もの燃料作物栽培地が必要にもなると試算される(OECD)。それにつけこみ、ブラジル・ルラ大統領は同国産バイオ燃料の利用拡大を説いて回った。彼は、アフリカをはじめとする途上国にも、バイオ燃料が最も有効な開発の武器だと説いて回った。

アフリカやアジアの原油価格高騰に苦しむ多くの途上国、新興国も、石油代替バイオ燃料の開発に狂奔し始めた。今や、これら多くの国が、食料生産用地も犠牲にして、経済性もなお不確かなヤトロファの大規模栽培に走っている。国連、OECDや多くのNGOの警告にはまったく耳を貸さない。

バイオ燃料の大量生産、化石燃料に代替するほどの大量の生産が持続不可能であることは、一般的には、あるいは科学的には、ほとんど自明のことであった。バイオマスは再生可能であっても、無尽蔵ではない。有限な地球資源の産物だ。水や土壌の保全に不可欠な自然生態系を侵略した上に、安価で食べきれないほどの食料を生産するために大量の資源を投入する“工業”的農業が持続不可能であることは、明らかである。バイオ燃料ブームはこのような農業に拍車をかけるだけだ。野草やヤトロファのような野生植物といえども、大量生産のために“作物化”されれば、まったく同じことだ。

こうした自明の理がもたらす破滅的結果が、バイオ燃料ブームのお陰でようやく誰の目にも見えてきた。だが、政治が目覚めるのはずっと後のことになるのだろうか。僅かにEUだけが、4月、目標達成に向けて、1.バイオ燃料の持続可能システムはどのように構想されるべきか、2.土地利用への全体的影響はどう監視されるべきか、3.次世代バイオ燃料の利用は奨励されるべきか、4.10%の目標の達成を可能にするために、さらにどんな行動が必要になるか、公開協議を始めた。この欧州委員会諮問には、EU内外のNGO、EU諸国政府や公的機関、産業団体、個人、さらにはマレーシア政府から240を超えるコメントが寄せられている。しかし、それに基づく新たなバイオ燃料政策が日の目を見るころには、インドネシアの熱帯雨林は完全に消滅しているかもしれない。

<北林 寿信(農業情報研究所【*4】主宰)>

*1 http://esa.un.org/un-energy/pdf/susdev.Biofuels.FA0.pdf
*2 http://www.news-service.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/8514.pdf
*3 http://www.oecd.org/document/51/0,3343,en_39315735_39312980_39398771_1_1_1_1,00.html
*4 農業情報研究所HP http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html
<参考>EUは、原料作物やバイオ燃料の輸入に係る「持続性証明システム」の検討を進めている。(出典:バイオ燃料に関する報告 http://www.paj.gr.jp/paj_info/topics/2008/20080110.html p35)

コラムブラジルにおけるバイオディーゼル政策と大豆需給について

ブラジルがサトウキビからのエタノールの生産と普及拡大を行っている話は、ようやく日本でも知られるようになってきたが、ブラジルがバイオディーゼルの普及と生産の拡大を行っていることは、あまり知られていない。ブラジルでは、貧しい北東部と豊かな南東部との経済格差が問題となっており、北東部の地域開発促進等を目的にバイオディーゼルをディーゼル油に2%混合(B2)を義務付ける法律を2005年1月に制定するとともに、バイオディーゼル生産を通じた東北部、北部地帯での地域開発を促進するための優遇税制も発表された。さらに同法では、2012年度までに5%の混合を義務付けており、計画の更なる推進が行われる。この法律は2008年から適用され、今、まさに、エタノールのガソリンへの混合に加えて、バイオディーゼルのディーゼル油への混合が開始されている。

ブラジル政府ではバイオディーゼルの原料作物として、デンデ椰子、マモナ(トウゴマ)、ヒマワリ、綿実、ピーナッツ、獣油及び大豆を対象品目としているが、コスト面及び生産量を総合的に判断すると大豆に優位性がある状況にある。ブラジルの研究者によると、今後のバイオディーゼル2%混合では2007年では85.7万kl、2010年には91.9万klのバイオディーゼルが必要となることが予測される。さらに、2012年からの5%混合計画では、2012年には242.4万kl、2015年には259.1万klのバイオディーゼルが必要となることが予測される。

ブラジル農牧供給省では、2005年9月にバイオディーゼル生産のうち北部から9%、北東部から14%、中西部・南部・南東部からは77%から供給することを発表したが、生産の大部分を占める中西部・南部・南東部において2007年の計画開始時に必要なバイオディーゼルである65.9万klを生産できる生産量を有するのは大豆のみであり、ピーナッツ、綿実及びヒマワリから供給することは現時点では不可能である。このため、ブラジルにおけるバイオディーゼル計画は大豆中心の供給体制となることが見込まれるとともに、現地からの情報でも大豆を原料としたバイオディーゼル工場が数多く建設され、生産が開始されている。

このように、ブラジルにおいてバイオディーゼル計画推進に当たり、大豆が主原料として使用されていくことは大豆増産圧力を増加させ、他の農畜産物との間にも新たな競合関係を生じさせるとともに、需要面では国内の大豆使用をめぐり、バイオディーゼル向けと食用油・飼料等向けとの間に新たな競合関係を生じさせる可能性がある。世界の大豆需給を考えた場合、中国の搾油需要を中心とする需要増加に対応していくためにはブラジルの供給増加が不可欠であり、今後、世界の大豆供給基地としてブラジルに生産拡大の期待が高まっている状況下、大豆がバイオディーゼルの主原料となり、食用・飼料用以外に使用されていくことは、国際大豆需給にも大きな影響を与え、国際大豆価格上昇の原因となる可能性がある。

日本はブラジルからの直接の輸入は比較的少ないものの、以上のようなバイオディーゼル計画推進に伴う国際大豆需給逼迫要因は、輸入依存度が高い日本の大豆需給にも影響を与えることが考えられるため、十分注意する必要がある。それとともに、ブラジルに対して大豆以外の作物で北東部の地域開発促進に寄与することが期待できる作物からのバイオディーゼル生産を促すような国際協力を行うことが必要である。

<大田 朔太郎(仮名)>

コラムブラジルのバイオ燃料事情

ブラジルはバイオ燃料先進国として知られるとおり、普通自動車燃料の熱量換算34%、(体積比44%)がサトウキビ由来のエタノールである。その生産量は約1800万klと世界のエタノール生産の約35%を占め、米国と生産トップを競っており、今後、輸出余力のある国はブラジルのみといって過言でない。今後、エタノールが国際商品となれば、優位に立つのは米国・ブラジルであり、昨年ルーラ大統領は、バイオ燃料重視政策を打ち出したブッシュ大統領との協力によりエタノールの規格化、第三国への生産普及等を表明した。

一方、昨今、バイオ燃料をめぐっては、生産時の温暖化ガス排出の懸念もあり慎重論も出始めているが、ブラジル・サトウキビは、その絞り粕(バガス)を燃焼させて得られる熱を発電やエタノール生産に利用しており、エネルギー効率も高く、生産時排出を考慮しても、化石燃料代替において8割以上の温暖化ガス削減と試算されており、その実質的な削減効果は高い。もう一つの懸念は、森林破壊への影響の有無であるが、エタノール向けの高糖度サトウキビ生産には、季節変化が必要なため、年中、高温湿潤なアマゾン地域は適していない。さらにサトウキビは収穫後すぐ処理が必要なため、工場と一体となった生産拡大が求められ、その投資規模も大きく、環境許認可が徹底されており、野放図な拡大は困難である。

ただし、サトウキビ需要増大が、農地需要増大により間接的に開発圧力を増す可能性はある。しかし、現状でもサトウキビ栽培面積は国土の1%未満600万haであり、今後十数年で面積が倍増しても、現大豆栽培面積約2300万haの半分程度である。一方の大豆は、中国需要がここ十数年で5倍以上へと急増しており、近年アマゾンがその供給基地のひとつとなってきた。また、ブラジルでは本年からB2義務混合が実施されるが、現状は植物油高騰によって、BDF向け原料油確保が困難であり、2007年BDF生産は40万kl程度になるものと見込まれており、今後もその原料調達の9割近くは大豆に頼らざるを得ないと見られ、本年の義務混合による大豆油需要増加量は、ブラジル国内消費の4分の1に匹敵する80万kl近くとなり、輸出向け大豆製品へ影響を与え、価格高騰に拍車をかけると予測される。森林への開発圧力の懸念も高まる。今後B5義務混合となった場合の影響はさらに大きい。

一方、この3年間、森林破壊面積は毎年2割から3割のペースで減少している。昨年まではレアル高によるドル安・国内価格の下落が要因とも解釈できたが、昨年は、国内大豆価格高騰へ転じる中、森林破壊面積は減少しており、政府の森林保全対策が効を奏しつつあるともいえる。ただし、昨年から本年にかけて、開墾時期が遅れており、価格変動の森林開発への反映のタイムラグや季節変動の可能性もあり、森林破壊面積縮小の傾向が定着するかどうかは本年の最新データまで判断はできない。森林保全が適切になされていれば、農地需要増大による土地価格高騰は、半乾燥地や条件不利地域への投資・有効活用へとつながるはずである。実際に現在、農地の倍以上の牧草地が広がっており、その約半分は生産性の低い自然放牧地である。本年の需要拡大においても森林破壊を回避し、土地生産性向上への投資へと促すことができるかが、ブラジルにおけるバイオ燃料の持続性の保障ができるかどうかの正念場といえよう。

図:アマゾン森林破壊面積と大豆価格の変動

図:アマゾン森林破壊面積と大豆価格の変動

<福代 孝良(在リオデジャネイロ日本国総領事館 専門調査員)>

コラム草本系バイオマスのエタノール・熱利用

【ソフトセルロース】

バイオエタノールの原料は、トウモロコシやサトウキビが現在主流であるが、食料と競合することから、非食料のセルロース系バイオマスが今後主流になると予想されている。その中でも、ソフトセルロースと呼ばれる草本系バイオマスは、木質系のバイオマスと比べてリグニン等の発酵阻害物質が少ないために、バイオエタノールの原料として注目を集めている。

【カナダのバイオエタノール技術】

世界で初めてセルロース系エタノールの商用化プラントを稼働させたのは、カナダのIOGEN(アイオジェン)社【*1】で、年間300万リットルのプラントが稼働している。IOGEN社は、もともと繊維を柔らかくするような酵素を生産している会社であったが、今ではセルロースを糖化する酵素を生産する会社として有名になった。セルロース原料は、農家から余っている牧草を買い付けており、現在の調達コストはトン当たり65カナダドル(1カナダドル=104円程度)である。2007年3月現在では、西カナダとユタ州に15〜20倍規模の商用プラントを計画しており、すでに年間40万トンの藁の供給契約を農家と結んでいる。エタノールの製造コストはまだ明らかにしていないが、トウモロコシからのエタノール生産コスト(100円/ガロン)を第一の目標にしている。

IOGEN 社は、シェル石油・ゴールドマンサックス・ペトロカナダから、それぞれ4600万・3000万・1580万カナダドルの投資を受けている。

カナダには、セルロース系バイオマスからのエタノール生産技術として、合成ガスから触媒技術によってエタノール化を目指しているSyntec 社がある【*2】。Syntec 社によると、IOGEN 社の技術よりもより低コストでバイオエタノールが製造可能であるという。しかし、まだ試験プラントをこれから作る段階である。

【スイッチグラス】

スイッチグラスは、北米のプレイリーに自生している植物で、飼料用や敷料用としても栽培されている。多年生の植物なので、一度播種をすれば40〜50年の間収穫できるとされている。また3m程度の深い根を張るために、土壌改良効果やCO2の固定効果、水質浄化、土壌浸食防止など様々な副次的効果が期待されている。収穫されたスイッチグラスは、牧草用の採草機械を用いて500kg程度のブロック状に梱包され、カナダでは農地に野積みで保管されていることが多い。他にも、プレイリーコードグラス、ビッグブルーステムなどの品種が、バイオ燃料用の作物として期待されている。

ブロック状のスイッチグラスが保管されている

ブロック状のスイッチグラスが保管されている

スイッチグラスの生えている様子

スイッチグラスの生えている様子

Vidir社ボイラ

Vidir社は、トウモロコシの茎などの農業残さを燃料に使用できる安価なボイラーを開発した。

【NGO】

カナダの草本系バイオマスについては、非営利団体のREAP Canada【*3】が詳しい。REAPは、スイッチグラスをペレット化して、家庭用ストーブやハウスの燃料に使うための技術開発やサポートを行っている。

スイッチグラスのペレット化と専用のストーブ

スイッチグラスのペレット化と専用のストーブ

【阿蘇の草本系バイオマス】

阿蘇には、22,000haもの草原があり、そのうちの15,000haがススキを中心とした野草地で占められている。現在、阿蘇市ではNEDOのバイオマスエネルギー地域システム化実験事業の一環として「草本系バイオマスのエネルギー利用実験事業」を進めており、未利用となっている秋以降の枯れたススキを収集し、熱分解ガス化を行い、既存の温水プールとその付帯設備へ電気と熱の供給を行っている。阿蘇地域では、広大な草原景観とカルデラ地形のために国立公園に指定されているが、近年草原面積の減少と荒廃が進んできている。そのため、バイオエネルギーとしての草原の草の新たな活用方法が、草原保全に貢献するのではないかと期待されている。

阿蘇の草本系バイオマス

<中坊 真(NPO法人九州バイオマスフォーラム主任研究員)>

*1 http://www.iogen.ca
*2 http://www.syntecbiofuel.com
*3 http://www.reap-canada.com

コラムヨーロッパおよびスウェーデンでの
バイオ燃料の使用および社会の対応

ヨーロッパでは、バイオ燃料の普及が急ピッチで進んでいる。2007年のEU指令では、2020年までに輸送燃料の10%をまかなうことを目標にしている。しかし、近年のバイオ燃料をめぐる動きは、必ずしも肯定的なものばかりではない。バイオ燃料の温暖化ガス削減効果、経済性に対する疑問、食糧価格の高騰、森林破壊への懸念等、ネガティブな面が次々と明るみになっている。これに対してEUは、2009年からはライフサイクル全体での温暖化ガス排出を報告することを義務づける他、バイオ燃料の取引や生産、輸入について、森林保護などにも配慮した国際的な基準設定への取り決めへの準備など、対策を進めている。WWF(世界自然保護基金)によると、バイオ燃料は使いようによってはプラスにもマイナスにもなるとのことだが、EUではプラスに使うように、普及に力を入れつつ、その使い方の議論を同時並行しようというところだろう。

ヨーロッパのなかで最もバイオ燃料の普及に積極的なのが、スウェーデンである。政府は、バイオ燃料購入補助、燃料を生成するプラントの建設補助、燃料の税控除、バイオ燃料自動車の無料駐車場提供、すべてのガソリンスタンドにバイオ燃料の設置の義務づけ等、様々な施策を始めている。

現在、スウェーデンではバイオ燃料の大半をブラジルからの輸入でまかなっている。スウェーデンのバイオ燃料導入の第一の目的は温暖化ガス削減であり、現時点では、スウェーデンよりブラジルでエタノールを生産する方がコストが安く、温暖化ガス削減効果も高いと評価されている。ブラジルに輸入が集中すると予測されることについて、アフリカで生産することによって輸入の偏りを避けようとしている。ただ、もちろん自国で燃料をまかなうことを重視しており、現時点では、コスト・生産性・温暖化ガス排出の面で優れている輸入燃料を使用しているが、将来的には自給できるように第二世代燃料などの研究を進めている。

ストックホルムのガソリンスタンドの値段表

ストックホルムのガソリンスタンドの値段表

スウェーデンでは、エタノールの他にバイオガスの利用も世界で最も進んでいる。バイオガスは都市ゴミや、家畜糞尿、下水汚泥などの廃棄物から生成されるため、エタノールやバイオディーゼルのような問題は起きない。バイオガスは天然ガスとその組成が似ているために、天然ガス網で運ぶことができる。スウェーデンでは、2006年に自動車用天然ガスパイプライン中で、バイオガスの割合が半分を超えた。バイオガスは、人の住んでいるところ、牧畜の行なわれているところ、つまり世界中にポテンシャルがある。近年では、オペル、フォルクスワーゲンなどヨーロッパ発の多くの会社がバイオガス対応車の生産を始めている。(バイオガス対応車は天然ガス対応車でもあり、フィアットなどイタリアの車の多くは、バイオガスのことを考慮せずに発売したが、ドイツの会社の多くはバイオガスの市場を見込んで開発を進めている。)

しかし、バイオガスの普及にはエタノールに比べて多くの障害がある。最も大きなものは、インフラの問題である。バイオガスは燃料が気体であるため、既存の液体燃料用のガソリンスタンドに補充することはできず、新たにガソリンスタンドを設置しなくてはならない。すると、燃料を補給する場所が限られるため、利便性が減る。さらに、バイオガスの利用は前例が少ないために、消費者および車販売のディーラーの知識が不足していることも、普及を妨げている。

バイオ燃料の普及は、その効果や是非について議論を進めるだけでなく、インフラの整備、消費者の理解も含めた社会全体の変革を必要とするものであるようだ。

<進藤 千晶(スウェーデン王立工科大学大学院)>