バイオマス産業社会ネットワークロゴ
スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー

トピックス 持続可能なバイオマス利用に向けて

3 再生可能エネルギー熱利用の拡大と産業用熱へのバイオマス利用

スペーサー

1. 温暖化対策における熱政策の重要性

2012年に開始されたFIT制度により、再生可能エネルギー電力の利用は大きく増加した。他方、日本の2050年温室効果ガス排出80%削減という目標達成のためには、最終エネルギー需要の半分を占める熱分野において、熱の再エネ化の強力な推進など、従来の枠を超えた取り組みが必要だと考えられる。しかし熱の温暖化対策については、専門家や関係者の間でもまだ関心が薄いのが現状である。

熱利用に関しては、経済産業省、国土交通省、環境省、総務省、農林水産省など様々な官庁が関係し、省エネや断熱、排熱、再エネ熱などの支援政策が行われている(図6)。

スペーサー
図6:熱エネルギーに関わる主な政策とその範囲

図6:熱エネルギーに関わる主な政策とその範囲【*17】

スペーサー

ヨーロッパで行われているように(コラム④参照)、熱ロードマップを関係省庁で形成することにより、より整合性のとれた政策を推進するきっかけになるのではないかと考えられる。これまで日本では、こうしたロードマップ作成においては革新技術の開発に重きが置かれることが多かったが、熱利用の分野では、断熱材や太陽熱温水器などすでに確立している技術も多数ある。既存技術を駆使し、費用対効果に優れた支援策が求められよう。

熱ロードマップ作成においては、例えば熱需要、熱供給の現状の把握、再エネ熱マップの作成、コジェネレーションの効果的な活用、電力と熱を組み合わせた利用や、熱のカスケード利用も重要な項目となろう。

日本に適した地域熱供給の推進も重要であろう【*18】。都市部や集合住宅などを中心とした、新設や再開発の際に原則導入を促すといった政策が、導入しやすいと考えられる。日本では、集合住宅においても通常、各戸に給湯器が設置されているが、集合住宅の一角に熱供給設備を設ける方が社会経済的にも合理的であり、その際に廃熱・再エネ熱・未利用熱の活用や、太陽光など変動電源の需要を超える分を熱として蓄えるといった、調整機能を持たせることも考えられる。

また、一般廃棄物処理施設は近年、地域のエネルギー拠点として位置づけられているが、一般廃棄物処理施設に経済性のある地域の未利用バイオマスを集約し、熱需要のある工場などの施設を誘致することも有効であろう。

スペーサー

2. 産業用熱へのバイオマス利用

ヨーロッパでは、熱需要の半分以上が暖房であり、そのために熱ロードマップにおいても地域熱供給に力点が置かれているが、日本の熱需要の55%は、産業用の蒸気加熱、直接加熱である【*19】。また、熱需要においても温度帯の差がある。再生可能エネルギー熱には、バイオマスだけでなく、地中熱や太陽熱、あるいは断熱、排熱、未利用熱、ヒートポンプなどの方法もある。このうち、空調や給湯では50°程度の温度帯でよいのに対し、産業用熱では高い温度帯が必要とされ、容易に高い温度を得られるバイオマスに優位性がある【*20】。現在、日本が利用しているバイオマスエネルギーのすべてを産業用熱需要に当てた場合、産業用熱需要の約2割に相当する。

こうしたことから、今後、バイオマス利用設備の新設は、産業用の高温熱利用にシフトを図る必要があるのではないかと考えられる。発電や熱利用設備といったインフラは、20年から30年以上使用するものである。2030年もしくは2040年に使用される施設は、ここ数年に導入されるものも含まれることを考慮すれば、早急に取り組むべき課題だと考えられる。

さらに長期的には、バイオマスはバイオマスプラスチックやコークス、あるいは液体輸送燃料としての需要もまかなうことになろう。脱化石燃料のなかで、バイオマスの果たす役割は大きいが、持続可能なバイオマスの利用可能量には限度がある。電力や低熱などは、他の再生可能エネルギーでまかない、バイオマスは、バイオマスでなければ代替が難しい用途に利用を誘導していくべきであろう。

スペーサー

スペーサー
スペーサー
スペーサー

コラム④ 欧州で進む脱炭素化のための熱ロードマップと
バイオマスエネルギー

2020年にスタートしたパリ協定に対して欧州連合EU全体では2030年までに温室効果ガスを40%削減(1990年比)する気候変動&エネルギー枠組みを2014年に策定し、2030年までの自然エネルギー割合(最終エネルギー消費)の目標を32%以上にとする政策決定を2018年に行った*1。そのためEU各国は2021年以降2030年までのエネルギー・気候変動対策計画(NECPs)を策定することになっている。デンマークの計画では、2030年までに温室効果ガスを70%削減することを政策決定したうえで、図1に示すように自然エネルギーの割合を2030年までに最終エネルギー需要の55%以上にすることを目標にしている(2018年の実績は約36%)。さらに、デンマークでは国連に提出した長期戦略において2050年までに温室効果ガス排出ゼロとする気候中立を目指すとしている。

EUでは、気候変動とエネルギーの枠組みに沿って自然エネルギー政策に関してはEU指令(RED II)が2018年6月に策定されている*2。この中で電力部門に比べて自然エネルギーの導入が遅れている熱部門については2021年から自然エネルギーの毎年1.3%増加を目指すとしている。交通部門については自然エネルギーの割合14%以上を目指すとして、その際に使用するバイオ燃料に関する持続可能性が重視されている。2018年の実績データ*3では、EU全体の最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合は18.0%に達しており、2020年に20%という目標の達成に向けて着実に進んでいる。

その中でスウェーデンでは2020年の目標値である49%を2013年の時点ですでに超え、2018年には55%近くに達しており、電力部門だけではなく、熱部門でも自然エネルギーの割合が高いという特徴がある。EU27カ国の平均では、自然エネルギー熱の割合は約21%だが、熱需要に対して自然エネルギーの割合が40%を超える国は、スウェーデン、フィンランド、ラトビア、エストニア、リトアニア、デンマークの6カ国となっており、スウェーデンでは約65%に達している。これらの国々では持続可能な資源を活用したバイオマスエネルギーが熱部門で大きな役割を果たしている。

スペーサー
図1:欧州各国の自然エネルギー割合(最終エネルギー消費)の推移と目標

図1:欧州各国の自然エネルギー割合(最終エネルギー消費)の推移と目標

(出所:eurostatデータより作成)

スペーサー

デンマークのオールボー大学を中心に2019年2月に最終レポートが公表された研究プロジェクト「欧州熱ロードマップ2050」”Heat Roadmap Europe2050(HRE2050)”では、最終エネルギー消費の約50%を占める熱分野におけるエネルギー効率化や電化の推進、自然エネルギーや排熱利用、そして地域熱供給などのインフラやエネルギーシステムの統合の重要性を指摘しており、2050年に向けて欧州各国における熱分野の脱炭素化を進めるためのシナリオやロードマップが示されている*4。HRE2050プロジェクトは2016年から3年間のプロジェクトで、科学的なデータに基づき、EU全体の需要の約9割を占める14カ国を対象に熱分野(温熱および冷熱)での脱炭素化のためのシナリオ分析を行い、そのために各国の高精度な熱需要・供給マップ(Peta)を作成している*5。HRE2050のシナリオでは、既存技術を用いて2050年までに1990年比で86%のCO₂排出削減が熱分野でも可能であることを示している。

地域熱供給の整備が進んでいる国ほど熱分野の自然エネルギーの割合が高いことも分かっている(図2)。デンマークでは地域熱供給の割合が50%を超えており、その熱源の約半分はバイオマスを中心とする自然エネルギーが占めている。HRE2050のロードマップでは、経済的にも成り立つ前提でも現在12%の地域熱供給の割合を、2050年には熱需要の約半分を地域熱供給で賄うことは可能であるとしている。

スペーサー
図2:欧州各国の自然エネルギー割合と地域熱供給の割合との比較

図2:欧州各国の自然エネルギー割合と地域熱供給の割合との比較

(出所:HRE2050に加筆)

スペーサー

さらに地域熱供給がすでに50%近く普及しているスウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国に対して、現在は普及率が低い国(イタリア、スペイン、オランダ、イギリスなど)でも50%以上にすることは経済的に十分可能であるとしている。国により気候的な違いはあるが、むしろ人口密度や都市化に応じて決まる熱需要の密度が地域熱供給導入の経済性に影響しており、地域熱供給をエネルギーシステム中で重要なインフラとして位置付けて、EUそして各国のエネルギー政策として都市計画や開発プロセスに組み込むことが必要だと指摘している。さらに地域熱供給に加えて、自然エネルギーや排熱利用など様々な熱源を扱うことと蓄熱技術が重要である。HRE2050のシナリオでは熱源として廃棄物を含むバイオマス等によるCHP(熱電併給)が4割近くと最も大きな割合を占め、電化が進んでヒートポンプが25%と重要な役割を果たす。蓄熱技術は蓄電技術よりも経済性に優れ、熱分野の柔軟性だけではなく電力分野との統合を進める役割も果たす。

日本国内でも、自然エネルギーの熱政策の実現や熱利用の普及のための調査・研究・意見交換・交流の場として、関連する研究者・行政・NGOなどが参加した「第4世代地域熱供給フォーラム」(略称:4DHフォーラム)が2018年10月にスタートした*6。HRE2050の調査研究を担ったデンマーク・オールボー大学とその関連機関が提唱する「第4世代地域熱供給」について、直接的な交流、国内外での会議への参加や研究会・ワークショップなどを開催することで知見・経験の共有を図るとともに、国内での再生可能エネルギー熱利用普及のためのネットワーク形成や知見の共有を目指しており、2020年3月には「第4世代地域熱供給4DHガイドブック」を発行した*7。

<環境エネルギー政策研究所 松原 弘直>

スペーサー
スペーサー

スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー

コラム⑤ 設立20周年記念シンポジウム

1999年に設立されたバイオマス産業社会ネットワークは2019年、設立20周年を迎えた。これを記念して2019年12月、「バイオマス産業社会ネットワーク20周年記念シンポジウム バイオマスの持続可能な利用 ーこれまでの20年、これからの20年ー」を都内で開催した。

まず、バイオマス産業社会ネットワーク理事である熊崎実 筑波大学名誉教授から、「日本の木質バイオマス利用の20年の回顧とポストFIT20年の展望」として、林業と林産業の間の地域的な協力関係である木材クラスターが、森林地帯につくられることが重要であることや、ドイツでは熱を含めた総合効率60%以上でないとFIT支援の対象とならいことなどの紹介があった。

次に、フォレストエナジー株式会社の生田雄一氏より「地域における木質バイオマス利用 小規模ガス化コジェネと熱利用の現状と今後」として、従来型の2,000kWボイラによる発電は熱利用が行われず総合効率は12%程度だが、熱電併給なら78~90%の総合効率も可能であること、バークや枝など地域の低質材の利用と熱需要とのマッチングをどう行うかが、今後の熱電併給事業において重要といった指摘があった。また、災害時等の停電時にも熱電併給を継続できるオフグリッドシステムや、地域課題解決型の木質バイオマス熱電併給事業として宮崎県都農町の取り組みなどが紹介された。

自然エネルギー財団の相川高信上級研究員は、「脱炭素社会実現に向けたバイオマスの貢献:これからの20年を見据えて」として、IPCC1.5℃特別報告書などを踏まえ、脱炭素化へ向けての強力な取り組みが必要だが、CO₂排出削減が進まない場合、BECCS(回収・貯留付きバイオエナジー)などに頼らざるをえなくなり、エネルギー作物の栽培などによる食料との競合など負の影響に配慮する必要がある。太陽光、風力の発電コスト低下に比して、バイオマス電力のコスト低下には限界がある。鉄やセメント、プラスチックなど素材分野でも、脱化石燃料化を図る「バイオエコノミー」の概念が欧州で議論されている、といった内容が紹介された。

バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆきからは、「バイオマス産業社会ネットワークの20年とこれからのバイオマス利用」として、バイオマス産業社会ネットワークの設立の経緯と、持続可能なバイオマス利用に関する最近の状況の報告、地域のバイオマスの産業用熱利用への誘導などを示唆した。

パネルディスカッション「バイオマスの持続可能な利用 ーこれまでの20年、これからの20年ー」では、熊崎氏から、木質バイオマスは林業近代化の副産物であること、生田氏からは縦割りの壁の打破やエネルギーサービス会社の必要性などについてコメントがあった。相川氏からは、科学的データに基づき、特定技術に偏らないマテリアル利用も含めたバイオマス利用戦略の必要性などについて指摘があった。

会場からは、地域における山林利用の問題などについての質問が出、今後の活動への方向性に向け、非常に活発な議論が行われた。

スペーサー
シンポジウムのようす
スペーサー

スペーサー
スペーサー
スペーサー
スペーサー

このページのトップに戻る▲

スペーサー
スペーサー