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2019年の動向

1 国際的な動向

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REN21「自然エネルギー世界白書2020」【*21】によると、2018年の世界の最終エネルギー需要において、近代的バイオエネルギーは、再生可能エネルギー全体の約半分、5.1%を供給した。

産業熱における近代的バイオエネルギーは近年約2%成長したが、空調(主に暖房)への利用(主にヨーロッパと北米)は減少した。バイオエネルギーは産業用熱需要の約9%を提供しているが、製紙やボードなどのバイオベースの産業に集中している。

バイオ燃料、主にエタノールとバイオディーゼルは、輸送エネルギーの約3%を供給している。世界のバイオ燃料生産は、2019年に5%増加した。最大の生産国である米国では減少したが、世界のエタノール生産は約2%増加した。バイオディーゼルの生産は13%増加し、インドネシアは7%減少した米国を抜いて、世界最大の生産国となった。

電力部門では、2019年に発電容量が6%増の139GWとなった。世界で最も多くバイオマス発電を行っているのは中国で、そのリードを広げた。(コラム⑥参照)EU、日本、韓国でもバイオマス発電は大きく増加した。特に日本と韓国の成長市場に向け、木質ペレットの生産が増加している。また、水素化処理された植物油(HVO)への投資が増加している。2019年、HVO/HEFA(水素化処理されたエステルと脂肪酸)の生産は12%増加し、さらに多くのプラントへの投資が発表された。

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図7:総最終エネルギー消費の全体および最終用途部門ごとのバイオエネルギーの割合の推定

図7:総最終エネルギー消費の全体および最終用途部門ごとの
バイオエネルギーの割合の推定

(出典:REN21「自然エネルギー世界白書2020」日本語仮訳はバイオマス産業社会ネットワーク)

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国連環境計画(UNEP)は、2010~2019年の世界の再生可能エネルギーの新規発電設備に対する投資が2.6兆ドルに達し、大型水力を除く再生可能エネルギーの発電容量は414GWから約1650GWへと約4倍に増加しているとの見通しを発表した【*22】

ルフトハンザとスカンジナビア航空は、バイオ燃料などサステナブル航空燃料の使用を乗客が選べる新しい運賃体系を導入した【*23】

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コラム⑥ 2018-2019年の国際的動向:変わりつつある業界地図

世界のバイオエネルギーの市場動向:中国の台頭

世界全体でバイオエネルギーはゆるやかに成長を続けているが、脱炭素社会の実現に向けて十分なスピードとは言いがたい。その理由は欧米など、これまでバイオエネルギーの成長を牽引してきた国や地域での導入が一段落したことにも関係している。

その一方で、バイオエネルギーの成長が顕著な国もあり、その一つが中国である。すでに中国は、太陽光や風力など、様々な自然エネルギーの分野で世界第一位の導入量を達成している。バイオエネルギーの分野においても、近年の成長は目覚しく、2020年にはIEA Bioenergyにも加入し、国際的なバイオエネルギーコミュニティの中でも、そのプレゼンスを増している。

速報性の高いREN21の統計を見ると、バイオマス発電量ではすでに2017年から2019年まで3年連続で世界一を達成しており、設備容量においても2018年の時点でトップに躍り出た(表)【*1】。この容量の半分は廃棄物発電で、残りが農業・林業残渣となっている【*2】。また、ペレット生産も急増し、2018年は2,000万tの生産量が報告されており、すでに世界一になっている可能性もある【*3】。ただしFAOの森林系の統計では確認されていないことから、主な原材料は農業残渣であると推測される。一方で、2020年から予定されていた、バイオエタノールの10%混合の義務付けは中止された模様である【*4】。報道によれば、中国国内のトウモロコシの在庫が急激に減少したことが原因とあるが、大半を輸入に頼らざるを得ない点も関係していたのかもしれない。このような情報からは、国内に豊富にある農業系の資源、しかも残渣や廃棄物を中心とした発展が志向されていることが伺える。

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中国のバイオエネルギーに関する主要データ(2018年)

  世界・量 中国・量 中国の順位
発電量(TWh) 591 111 1
発電容量(GW) 131 22.5 1
ペレット生産量(万t) 5,500 2,000 1
バイオエタノール生産(億L) 1,140 40 4

出所:REN21, Global Status Report Renewable

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一方で、自然エネルギーが急速に成長しても、依然としてエネルギー消費は増加傾向にあるため、石炭の消費量は高止まりしているのも事実である【*5】。そのため、バイオマスの混焼に加え、BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)の取組も真剣に検討されている【*6】。また、これまでの固体バイオマスの発展は、欧州の森林国が引っ張ってきたため、木質系の技術が前提になっていたように思うが、 今後は中国やその他のアジア諸国で豊富にある農業系のバイオマスが大きく成長していく可能性がある。

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欧州:石炭の次はガスとの戦いへ

一方欧州では、ドイツも含め、すでに主要国の多くが石炭からの離脱時期を表明し、脱石炭が規定路線となっている。石炭火力が担っていた電力の多くは、風力を中心とした自然エネルギーで代替されることになり、デンマークなど地域熱供給の熱源としても活用している北欧諸国を中心に、バイオマスに転換する動きもある。

欧州を中心として、石炭の次に脱炭素化の議論に晒されているのがガス部門である。そのため、IEAのWorld Energy Outlookの2019年版は、現在ガスが担っているエネルギーサービスの脱炭素化について取り上げている。この中で主要な脱炭素化のオプションとして取り上げられているのが、熱部門の電化と水素、そしてバイオガスを改質するなどしてガス配管などに注入できるようにしたバイオメタンである。

水素は自然エネルギー電力などから作られたものである必要があることに加え、ガス管に直接注入できる量には制約がある。そのためIEAの推計によれば、将来のガス配管に注入できる低炭素ガスは、バイオメタンが9割を占める。この時用いられるバイオマス資源は世界中に広く賦存しており、原材料のシェアは農業残渣(35%)、家畜糞尿(25%)、下水汚泥(5%)そしてバイオマスのガス化(20%)となっている。

欧州では、ガス需要の最大40%をバイオメタンで賄うことができるという試算も出されている。残りの排出削減には、水素の活用に加えて、CCUS、カーボン・オフセットなどを組み合わせる必要があるとされており、完全な脱酸素化の実現に向けて、まだ議論が続く見込みである。ただし、今後バイオガス・メタンの生産増大に向けた動きが活発化していくことも予想される。

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航空業界の取組は本格化するか?

液体バイオ燃料の業界も、航空業界の取り組みを受けて、大きく動き始める可能性がある。ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)が2016年に定めた自主的取組(CORSIA:Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)の運用が2021年から始まり、2020年以降はカーボンニュートラル成長が求められる。

その手段として植林などのカーボン・オフセットも認められているが、バイオジェット燃料の生産が加速する可能性がある。バイオジェット燃料の中で期待が高まっているのが、廃棄物や植物繊維、もしくは藻類から製造される次世代バイオ燃料(Advanced Biofuel)である。しかし、バイオエネルギー全体に対する持続可能性の論争の影響を受けて、政策や市場の見通しが立たず、積極的な投資が難しい状況に陥っている【*7】。

また、2020年の世界的なコロナウィルスの流行が、全世界の航空業界に大きな打撃を与えている点も、バイオジェット燃料の開発を鈍らせる可能性がある。そもそも、コロナ流行の前から原油価格が下落し、マイナスの価格がついたこともあり、バイオエネルギーには厳しい状況が予測されていた。

他方、コロナ後の経済回復は、より持続可能な社会への転換の機会として捉える「緑の回復」とするべきである。テレワークが常態化し、ウェブ会議が国内外を問わず一般的なものになったことにより、航空部門だけではなく、様々な交通需要が減少すると考えられる。よりスマートで豊かな暮らし、持続可能な社会への転換に向けて、バイオエネルギー業界自身もイノベーションの源泉となれるかが問われている。

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<自然エネルギー財団上級研究員 相川 高信>

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  • *1  REN21, Global Status Report, Renewable各年版より。IRENAのRenewable Energy Statistics 2019によれば、2017年時点で、容量ではブラジルについで世界2位、発電量ではアメリカに次いで同じく世界2位となっている。
  • *2  Hu Wenping, Development of Cofiring Biomass with Coal in China, IEA Clean Coal Center, Cofiring Workshop 9, Kokura, 2020年2月
  • *3  Bioenergy Europe, Statistical Report 2019, Report Pellet
  • *4  Exclusive: China suspends national rollout of ethanol mandate – sources, Reuters, 2020年1月8日記事
  • *5  自然エネルギー財団(2020)中国におけるエネルギー構造転換と自然エネルギーの拡大
  • *6  Hu Wenping 同上
  • *7  IRENA(2019) Advanced Biofuels, What holds them back?
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