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トピックス

1 2021年における主なバイオマス政策の変更等

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1. 第六次エネルギー基本計画

2021年10月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画【*1】では、2020年に菅首相が2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言したことを受け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再エネを最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す内容となった。

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第6次エネルギー基本計画におけるバイオマス関連部分抜粋

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5 (5) ④ 電源別の特徴を踏まえた取組

(e)バイオマス

バイオマス発電は、災害時のレジリエンスの向上、地域産業の活性化を通じた経済・雇用への波及効果が大きいなど、地域分散型、地産地消型のエネルギー源として多様な価値を有するエネルギー源である。

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一方で、他の再生可能エネルギーと異なり燃料が必要であり、発電コストの大半を燃料費が占めているという特徴がある。このため、バイオマス発電の導入拡大に向けては、限りあるバイオマス燃料の安定調達と持続可能性を確保しつつ、燃料費の低減を進めることが課題となる。こうした課題を克服し、地域での農林業等と合わせた多面的な推進を目指していくことが期待される。

こうした中で、特に国産木質バイオマス燃料の供給拡大に向け、バイオマス関係省庁が連携して早生樹や広葉樹等の燃料材に適した樹種の選定や、地域に適した育林手法等の実証、木質バイオマス燃料の品質規格の策定等による市場取引の活性化等の取組を推進し、燃料費の低減と燃料材が重要な収益機会になりつつある林業者の経営の安定化の両立を図る。

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また、バイオマス燃料の持続可能性を確保するため、FIT・FIP制度においては、環境、社会、労働、ガバナンスの観点に加え、食料との競合、ライフサイクル温室効果ガスの排出量等の観点について専門的・技術的な検討を踏まえ策定する持続可能性基準を満たした燃料を利用することを求めていく。加えて、既に認定を受けた案件について、事業計画に沿った事業を行っていないことが確認された場合、再エネ特措法に基づき指導、改善命令、必要に応じて認定取消しを行い、適切に事業を行うことを求めていく。

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さらに、バイオマス発電及び熱利用等について、森林資源の保続が担保された形での木質バイオマスの熱利用・熱電併給に向けた施策を推進するとともに農山漁村再生可能エネルギー法等を通じて積極的に推進し、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を進めていく。加えて、家畜排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物などのバイオマスの利用や、耕作放棄地等を活用した燃料作物バイオマスの導入やコスト低減を進める。

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特に、大規模なバイオマス発電を中心に、競争を通じてコスト低減が見込まれるものについては、安定的かつ持続可能な燃料調達を前提に、FIT・FIP制度に基づく入札制を通じて、コスト効率的な導入を促す。

出典:経済産業省資料

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2030年度のバイオマス発電導入見込量は、2019年度導入量4.5GW(262億kWh)、現行ミックス水準6-7.3GW(394-490億kWh)に対し、改訂ミックス水準は努力継続のケースで7.2GW(431億kWh)、政策強化のケースで8GW(471億kWh)となっている。既認定未稼働の稼働は、2.3GW(135億kWh)としている。

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2. バイオマス持続可能性ワーキンググループにおける検討

経済産業省バイオマス持続可能性ワーキンググループは、2021年度に5回会合を開き、そこでの検討結果として、調達価格等算定委員会へ報告を行った【*2】

バイオマス発電燃料のライフサイクルGHG(温室効果ガス)排出について、算定式に関しては、復路便の扱い、土地利用変化を含む炭素ストックの変化に関する扱いについて整理した。

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GHG排出量の基準として

●比較対象電源を2030年のエネルギーミックスを想定した化石燃料による火力発電の加重平均、180g-CO2/MJ電力とする

●2022年度以降の認定案件(2021年度までの既認定案件のうち燃料の計画変更認定を受けたものを含む)に対し、2030年以降に使用する燃料について、化石燃料電源排出の70%減を達成することを前提に、制度開始以後、2030年までの間は燃料調達ごとに50%減を要求する 

●2021年度までの既認定案件については、ライフサイクルGHG排出量の基準に照らした最大限の排出削減に努めることを求め、当該取り組み内容等の自社ホームページ等での情報開示及び報告を求める。望ましい情報開示・報告のあり方は確認方法と合わせて今後検討する

確認手段として

●FIT認定時、燃料納入時に所定の削減率を下回ることを確認し、事業実施期間にわたりその書類を保存するとともに、報告を求める

●規定値(それぞれの燃料種類ごとのGHG排出量と見なされる値)の策定および確認手段の整理は、2022年以降速やかに検討する

●農産物の収穫に伴って生じるバイオマス以外の燃料(木質等)は、新たな第三者認証の活用や、独自の個別計算の仕組み、あるいはより簡便な確認方法(規定値等)を定めることを視野に検討する

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また、第三者認証スキームの追加については、以下のように整理された。

出所:令和4年度以降の調達価格等に関する意見 調達価格等算定委員会【*3】

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3. FIT制度におけるバイオマス発電の変更等

2022年度より、市場価格にプレミアムを上乗せするFIP(フィード・イン・プレミアム)制度が開始される。2022年~2023度のFIT/FIP入札制度の対象は、図1の通りである。一般木材等・未利用材・建設資材廃棄物・一般廃棄物その他バイオマスなどの複数の区分において、2,000kW 以上/未満でコストデータの傾向が異なることをふまえ、2023年度から2000kW以上のバイオマスでは、FIPのみの適用となる。

2022年以降、FITには自家消費型・地域消費型あるいは地域一体型の地域活用要件が課される(沖縄地域・離島等供給エリアは除く)。そのうちの地域一体型案件の対象に、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(農山漁村再エネ法)に基づいて市町村が認定する案件に加え、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づいて市町村が認定する案件が加えられる【*4】

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図1:2022年~2023年のバイオマス発電のFIT/FIP入札制度の対象

図1:2022年~2023年のバイオマス発電のFIT/FIP入札制度の対象【*5】

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2022年度の調達価格と調達期間は、表1のとおりであり、2023年度においてもメタン発酵ガス以外の調達価格は維持される。メタン発酵ガスについては、2023年度には、調達価格がFITは35円/kWh+消費税、FIPは35円/kWhに引き下げられる。

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表1:2022年度の調達価格と調達期間

表1:2022年度の調達価格と調達期間

※FITには消費税が加算され、FIPでは消費税は加算されない【*6】

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4. バイオマス熱拡大に向けた政策

第6次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギー熱についての記述が増え、拡大を目指す方向性が出されたが、図2のように2030年度のエネルギー需要に占める電力は28%程度で、残りは輸送及び熱が占めることを考えれば、さらに取り組みの強化が必要だと考えられる。

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図2:エネルギー需要・一次エネルギー供給

図2:エネルギー需要・一次エネルギー供給

出所:経済産業省 2030年度におけるエネルギー需給の見通し

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一方、同計画には、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーの使用の合理化(省エネ法上のエネルギー定義を見直し)、需要サイドでの(バイオマス等の)非化石エネルギーの導入拡大が盛り込まれた。

2021年12月に開催された経済産業省の第36回省エネルギー小委員会では、省エネ法の今後の方向性として、需要サイドの取組では、徹底した省エネを進めるとともに、自家消費再エネなど非化石エネルギーの導入拡大に向けた対策を強化していくことが必要、としている【*7】。非化石エネルギーへの転換に関する措置として、特定事業者(エネルギー使用量1,500kl以上)に対し、新たに、非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画および非化石エネルギー利用状況等の定期報告の提出を求めるとしている。

現行の省エネ法の目的は、化石エネルギーの使用の合理化であり、バイオマス等は対象外となっていたが、今後の方向性として、エネルギーの定義を見直し、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーに拡大する。また、事業者ごとに非化石エネルギーの利用割合を向上させる定量的な目標を設定してもらい、その達成を求めることを検討する、としている。

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日本木質バイオマスエネルギー協会は、2030年に向けた木質バイオマス熱利用導入目標案として、691.7万原油換算klという数字を挙げている。木質バイオマス熱利用の拡大内容を明確にするため、第五次エネルギー基本計画の目標を念頭に、同協会で木質バイオマス熱利用の2030年内訳を想定した。(図3)

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図3:2030年に向けた木質バイオマス熱利用導入目標案

図3:2030年に向けた木質バイオマス熱利用導入目標案

(日本木質バイオマスエネルギー協会作成)

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2021年9月、ボイラーの「伝熱面積」の規模要件を撤廃する大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令が閣議決定された【*8】。「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び簡易ボイラー等構造規格の一部を改正する件の施行について」が公布され、2022年3月1日から施行された【*9】。かねてより、ボイラーについてはバイオマスを燃料とした場合に他の燃料と同出力であるにもかかわらず、政令において定める伝熱面積の要件により規制対象となりやすく公平でないこと等から、燃焼能力のみによる規制にすべきとの旨の要望がなされていた。

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5. 再生可能エネルギー事業と住民への説明

経済産業省は、「地域社会における持続的な再エネ導入に関する情報連絡会」【*10】を開催し、地元理の促進などについて情報交換を行っている。2021年10月に開催された第5回会合資料によると、FITの再生可能エネルギー事業の不適切案件に関する情報提供フォームに寄せられた相談738件のうちバイオマスに関するものが8件であった*11。福島県伊達市、宮城県石巻市などで市議会より意見書が出されるなど、バイオマスでも地元住民の反対が相次いでおり、適切な対応が求められよう。

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6. 2021年のバイオマス発電の状況

2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が開始して以来、バイオマス発電の認定量・稼働量は大きく増加した。同制度により2021年9月時点で、計512カ所、303万kWのバイオマス発電所が稼働し、同じく780カ所803万kWが認定されている。稼働容量の2/3、認定容量の8割強が主に輸入バイオマスを燃料とする一般木材バイオマスの区分となっている(図4、表2)【*12】

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図4:再生可能エネルギー固定価格買取制度におけるバイオマス発電の稼働・認定状況

図4:再生可能エネルギー固定価格買取制度におけるバイオマス発電の稼働・認定状況

出典:資源エネルギー庁Webサイト【*13】より NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

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表2:再生可能エネルギー電力固定価格買取制度(FIT)における
バイオマス発電稼働・認定状況

(新規・2021年9月末時点)

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出所:資源エネルギー庁Website【*13】

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一般木材バイオマス発電の稼働が相次ぐなか、アブラヤシ核殻(PKS)や木質ペレットの輸入はさらに急増している。PKSは2020年の338万トンから2021年の435万トンへ3割近く増加し、木質ペレットは203万トンから312万トンへと大きく増加した。(図5)。

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図5:PKSおよび木質ペレット輸入量の推移

図5:PKSおよび木質ペレット輸入量の推移

出典:On-site Report No.502、503ほかよりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

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コラム① 2021年に稼働した主な木質バイオマス発電

1.木質バイオマス発電の動向

2021-2022年にかけて稼働した主な木質バイオマス発電所等は、以下のとおりである。

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表:2021年に稼働した主な木質バイオマス発電

都道府県 市町村 事業主体 規模kW 規模* 稼働
時期
FIT認定 備考
群馬県 沼田市 シンエネルギー開発 49   2020.3稼働   21.9より、熱は温浴施設「地蔵の湯」に供給
群馬県 渋川市 フォレストエナジー 40 40 2021.11営業運転開始 未利用材 排熱はいちごハウスに供給する予定
埼玉県 深谷市 深谷バイオマス発電所 1,990 1,990 2021.11運転開始 廃棄物 廃食油
神奈川県 茅ヶ崎市 利久 1,990   2021.7稼働 廃棄物 剪定枝
新潟県 村上市 ミナミインターナショナル 50     未利用材 村上市と災害時の電力供給協定書
静岡県 静岡市 協同組合森林施業静岡 100   稼働 未利用材  
岡山県 真庭市 銘建工業 4,990 4,990 2021.7完成予定 一般木質 木質チップ、破砕バーク、プレーナダスト
福岡県 大牟田市 大牟田第一発電所 22,100   2021.12運転開始 一般木質 シグマパワー有明
福岡県 大牟田市 大牟田第二発電所 22,100   2021.12運転開始 一般木質 シグマパワー有明
福岡県 苅田町 苅田バイオマスエナジー 74,950   2021.6運転開始 一般木質 レノバ他。木質ペレット、PKS、国内未利用材
大分県 大分市 大分バイオマスエナジー合同会社 22,000 22,000 2021.7稼働 一般木質 PKS、未利用材
宮崎県 串間市 串間市民病院 50 50 2021.10稼働   エントレンコ社製木質ペレットガス化CHP
熱は空調・給湯に利用、電気は全量自家消費
鹿児島県 さつま町 自然電力 1,990 1,990   未利用材 2021.6完工 未利用材約3万トン
沖縄県 うるま市 中城バイオマス発電所 49,000 49,000 2021.7運転開始 一般木質 イーレックス、九電工、沖縄ガス PKS、木質ペレット20~25万t 沖縄うるまニューエナジー
  • *  バイオマス分の発電規模
  • ** 出所:経済産業省Webサイト等よりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成
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未利用材を使う2,000kW未満の小規模と2万kW以上の大規模にほぼ二分された。宮崎県の串間市民病院には、ペレットガス化熱電併給設備および木質ペレットバイオマス蒸気ボイラーが導入され、発電(自家消費)、空調、給湯および殺菌用として施設内で利用される(写真)。群馬県沼田市のシンエネルギー開発の発電所は、ボルター社のガス化コジェネで、排熱は温浴施設「地蔵の湯」で使われる。このように、小規模では熱利用を行うケースが増えている。また、神奈川県茅ケ崎市の利久のように、剪定枝を燃料とする発電も増えている。こうした、これまで地域で有効活用されてこなかった資源が活用されることも望ましい方向と言えよう。岡山県真庭市の4,990kWの発電所を稼働させた銘建工業は、発電量の6割を自社で使用、残りをFITで売電する。

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串間市民病院に導入されたバイオマス利用設備

串間市民病院に導入されたバイオマス利用設備

(写真提供:高山バイオマス研究所設計施工管理)

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また、2021年度の一般木質バイオマス発電入札では、王子グリーンエナジー江別が18.50円/kWh、落札設備出力74,950kW、入札対象区分となるバイオマス燃料比率考慮後出力51,085kWで落札した【*】。

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コラム② パーム油等を燃料とする発電の動向

1.木質バイオマス発電の動向

京都府福知山市の三恵観光によるパーム油発電所は、住宅街に建設され、住民に騒音および悪臭で甚大な被害をもたらし、廃業していたが、2021年10月に完全撤去された(写真)。

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パーム油発電所跡地

パーム油発電所跡地

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持続可能性等の問題が指摘され続けてきたパーム油発電だが、近年のパーム油価格の上昇、新型コロナによる影響でパーム油の入手が困難になっており、稼働停止が相次いでいる。加えて、RSPO認証のIP、SGの供給は不足しており、「パーム油発電は事実上破綻」との報道もある【*】。つまり、パーム油発電は座礁資産化したと言えよう。

一方、宮城県石巻市でのG-Bio石巻須江の10万kW規模の植物油発電は、付近に住宅や小学校、保育所がある場所に計画されている(裏表紙写真)。石巻市議会、宮城県議会は全会一致で発電中止の意見書を国に提出する決議を行い、住民の活発な反対運動が続いている。

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