2022年度より、売電収入にプレミアムを上乗せした金額が再生可能エネルギー売電事業者に支払われるフィード・イン・プレミアム(FIP)制度が開始されたが、2024年度調達価格等算定委員会の検討で、バイオマス発電においてもFIP制度へ原則、移行することが決まった。具体的には、2027年度以降は50kW以上では新規認定においてFIPのみが認められる(図1)。ただし廃棄物の焼却施設に設置されるものについては、50kW以上2,000kW未満の範囲においてFIT(地域活用要件あり)かFIP(入札対象外)を選択することができる。
また、輸入バイオマス等を燃料とする一般木質バイオマス発電の1万kW以上では、新規認定については2026年度以降はFIT/FIP制度による支援の対象外となった。バイオマス発電の買取価格は、2026年度 において変更はない。
FIP制度の活用状況では、バイオマス発電では2024年3月末時点において新規認定で8件6.1万kW、移行で27件322万kWが導入されている【*2】。
図1:FIT/FIP/入札の対象(バイオマス)のイメージ
出所:令和7年度以降の調達価格等に関する意見
バイオマス持続可能性ワーキンググループは、2024年度に4回会合を開き、そこでの検討結果として、調達価格等算定委員会へ表1の通り報告を行った。木質バイオマスのGHG排出算定における森林劣化による排出等に関しては、議論継続となった。
表1:バイオマス持続可能性ワーキンググループからの報告
論点 | 2024年度の主な検討結果 |
---|---|
持続可能性 |
|
ライフサイクルGHG |
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※1 事業計画策定ガイドラインをパブリックコメントに付した上で、2025年度から適用を開始。
※2 ライフサイクルGHG既定値文書をパブリックコメントに付した上で、2025年度から適用を開始。
出所:令和7年度以降の調達価格等に関する意見
持続可能性ワーキングループ第29回会合で、バイオマス発電事業者のライフサイクルGHG基準自主的取組の情報開示について議論された。参加状況は図2の通りである。開示されたほぼすべてのデータで現在のGHG基準である50%削減水準を下回っていたが、2030年度以降の削減水準である70%削減水準を上回るデータも一部あった。情報開示においては、燃料収集地域について開示していない件数も多く、特に木質ペレットについて、2023年に126万トンが輸入されている米国から調達していることを開示した事業者はなかった。
ライフサイクルGHG自主的取組(2023年度実績)
※ライフサイクルGHG自主的取組は、事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)に定められている推奨事項(努力義務)
※2023年度末までに運転開始報告があり、間伐材等由来、一般木質バイオマス・農産物バイオマスの設備区分に加え、建設資材廃棄物の設備区分のうち使用燃料に一般木質バイオマス等がある案件を集計(n=283)。
※バイオマス比率考慮後の発電出力ベース。※参加状況に係る事業者のリストは、参考資料1を参照
輸入木質ペレットのライフサイクルGHG算定値の傾向
図2:ライフサイクルGHG自主的取り組み(2023年度実績)の状況
出所:第30回持続可能性ワーキンググループ 資料3
1) 2024年FIT/FIPバイオマス発電の概況
2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が開始して以来、バイオマス発電の稼働容量は急増した【*3】。2022年4月よりフィード・イン・プレミアム(FIP)制度も始まり、2024年末時点でFIT/FIP制度により、計729カ所、578万kWのバイオマス発電所が稼働し、同じく1,061カ所834万kWが認定されている。2024年末に比べ、73万kWが新たに稼働した。その9割弱は、輸入バイオマスを主な燃料とする一般木質バイオマスである。また稼働容量の75%、認定容量の78%は同じく一般木材バイオマスの区分となっている(図3、表2)。
図3:再生可能エネルギー固定価格買取制度における
バイオマス発電(新規)の稼働・認定状況
出典:資源エネルギー庁資料【*4】よりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成
表2:再生可能エネルギー固定価格買取制度における
バイオマス発電(新規)の稼働・認定状況
(2024年末時点)
メタン 発酵 |
未利用木質 | 一般木材 | リサイクル 木材 |
廃棄物 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2000kW 未満 |
2000kW 以上 |
||||||
稼働 件数 |
290 | 105 | 55 | 107 | 9 | 163 | 729 |
認定 件数 |
368 | 248 | 67 | 179 | 14 | 185 | 1,061 |
稼働 容量 kW |
107,052 | 72,880 | 506,709 | 4,360,899 | 134,502 | 599,323 | 5,781,365 |
認定 容量 kW |
157,186 | 161,577 | 606,238 | 6,509,381 | 188,957 | 721,258 | 8,344,596 |
出典:資源エネルギー庁Website【*4】よりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成
2) 木質バイオマス発電の相次ぐ稼働停止況
輸入・国産ともバイオマス燃料価格は10年前に比べて1.5~2倍程度高くなり、物価高でもFITによる買取価格は変わらないため、多くのバイオマス発電が苦慮している模様である。
国内では、ウッドショックで膨らんだ木材需要が一巡し生産量が落ちたこと、パルプ向け輸入チップ高騰の影響で製紙会社が国内でパルプ用チップの調達を行っていることなどから、地域差はありつつも国産燃料用チップの価格が高止まりしている。他にも建築費や人件費の価格上昇もあり、木質バイオマス発電所の稼働停止が相次いでいる。
静岡県富士市にある11.2万kWの鈴川エネルギーセンターは2024年12月、発電所の運用を停止した。同発電所は三菱商事パワー、日本製紙、中部電力の3社が出資して2013年に設立され、2022年度ごろに石炭から木質ペレットに燃料を切り替え、バイオマス専燃発電所として稼働していたが、採算が取れずに赤字が拡大していた。東京商工リサーチによると、負債総額は2024年3月期末時点で約535億円【*5】。
2025年1月、和歌山県新宮市にある新宮フォレストエナジーおよび関連会社2社が和歌山地裁より破産手続き開始決定を受けた【*6】。2021年に1,800kWの電力と3,800kWの熱を供給可能なバイオマス発電所を稼働させていたが、売り上げの伸び悩み・燃料のコストアップに加え、2024年秋ごろ発電プラントに不具合が生じ、業務を停止していた。
2024-2025年にかけて稼働した主な木質バイオマス等の発電事業は、下表のとおりである。 2017年に駆け込み認定された事業の稼働期限(期限を過ぎると20年の買取期間が逓減される)の理由もあって、輸入バイオマスを使う大規模な発電所が相次いで稼働した。
北陸電力の出力70万kWの敦賀火力発電所は、2024年11月、15%のバイオマス混焼を開始した。10.5万kWに相当する。2025年4月には七尾大田火力発電所でも同じく70万kWの15%での混焼を開始した。
表:2024-2025年に稼働した主な木質バイオマス発電
所在地 | 発電事業者名 | 規模(kW) | 稼働時期 | FIT 認定 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
青森県 南部町 |
曽我バイオマス発電株式会社 | 1,990 | 2024年 12月 稼働 |
未利用材 | |
宮城県 栗原市 |
株式会社ウェスタ・CHP | 49 | 2024年 2月 稼働 |
未利用材 | |
山形県 遊佐町 |
鳥海南バイオマスパワー株式会社 | 52,900 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | 木質ペレット(東南アジア、北米) 東北電力他 |
福島県 飯館村 |
飯舘バイオパートナーズ株式会社 | 7,500 | 2024年 9月 稼働 |
未利用材 | 間伐材4.5万t、バーク4.6万t 一般材0.4万t |
福島県 棚倉町 |
シーズ | 50 | 2024年 3月 稼働 |
未利用材 | |
福島県 古殿町 |
エクシオグループ株式会社 | 1,984 | 2024年 8月 稼働 |
未利用材 | ふるどの論田エコパワー Kombi Power Systemのガス化発電 |
福島県 会津坂下町 |
合同会社会津こもれび発電所 | 7,100 | 2024年 12月 稼働 |
未利用材 | 8万トンの間伐材、端材、建築廃材 東京エネシス |
茨城県 北茨木市 |
東京発電株式会社 | 1,990 | 2024年 7月 稼働 |
未利用材 | 磯原工業団地 |
埼玉県 東松山市 |
合同会社ハルディネロ | 1,990 | 2024年 4月 稼働 |
一般木質 | |
千葉県 市原市 |
市原八幡埠頭バイオマス発電合同会社 | 75,000 | 2024年 9月 稼働 |
一般木質 | 再熱方式。東洋エンジニアリングがEPC受注 |
新潟県 十日町 |
合同会社十日町バイオマス発電所 | 1,990 | 2024年 5月 稼働 |
未利用材 | AHT社500kW×4台 SEJ社 |
新潟県 聖籠町 |
新潟東港バイオマス発電合同会社 | 50,000 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | 東北電力、エクイス |
新潟県 阿賀町 |
株式会社ミナミインターナショナル | 50 | 2024年 7月 稼働 |
未利用材 | |
静岡県 御前崎市 |
合同会社御前崎港バイオマスエナジー | 74,950 | 2025年 1月 稼働 |
一般木質 | 木質ペレット(北米、東南アジア、豪州産)、PKS、未利用材。レノバ、中部電力 他 |
静岡県 袋井市 |
遠州フォレストエナジー合同会社 | 7,100 | 2024年 11月 稼動 |
未利用材 | |
愛知県 田原市 |
愛知田原バイオマス発電合同会社 | 74,950 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | 木質ペレット 大ガス、丸紅 |
愛知県 田原市 |
田原バイオマス発電所合同会社 | 50,000 | 2025年 4月 営業運転開始 |
一般木質 | 木質ペレット 石油資源開発、静岡ガス&パワー、東京エネシス他 |
三重県 松阪市 |
パワーエイド三重シン・バイオマス | 1,990 | 2025年 4月 商業運転開始 |
NON-FIT 廃菌床、建築廃材、RPF。PPSで電力供給 | |
三重県 鈴鹿市 |
合同会社ハルディネロ | 1,990 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | |
石川県 七尾市 大田町 |
北陸電力 七尾大田火力発電所2号機 | 700,000 | 2025年 4月 |
一般木質 | 石炭火力への混焼15% 木質ペレット |
福井県 敦賀市 |
北陸電力 敦賀火力発電所2号機 | 700,000 | 2024年 12月 |
一般木質 | 石炭火力への混焼15% 木質ペレット |
兵庫県 朝来市 |
生野銀山バイオマス発電所 | 899 | 2024年 9月 稼働 |
未利用材 | シン・エナジー、山田林業 独BIOENERGIE WEGSCHEID社のコジェネ150kW×6台 |
島根県 隠岐の島町 |
隠岐グリーンパワー合同会社 | 150 | 2024年 11月 稼働 |
未利用材 | 鴻池組、藤井木曽設計事務所、御池鐵工所 地元産ペレット1,080t |
広島県 神石高原町 |
ツネイシグリーンエナジー株式会社 | 790 | 2024年 12月 稼働 |
未利用材 | 廃熱は温浴施設で利用 |
山口県 山陽小野田市 |
山陽小野田グリーンエナジー株式会社 | 1,990 | 2024年 8月 稼働 |
未利用材 | 西松建設子会社 |
山口県 下関市 |
長府バイオパワー合同会社 | 74,950 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | 木質ペレット100% MOT総合研究所他 |
愛媛県 大洲市 |
大洲バイオマス発電株式会社 | 50,000 | 2024年 8月 稼動 |
一般木質 | 東南アジア産木質ペレット約20万トン 前田建設、JAPEX |
香川県 坂出市 |
坂出バイオマスパワー合同会社 | 74,950 | 2025年 6月 営業運転開始 |
一般木質 | 木質ペレット(年間約 32 万トン) 四国電力他 |
佐賀県 唐津市 |
合同会社唐津バイオマスエナジー | 49,900 | 2024年 11月 稼働 |
一般木質 | レノバ他。木質ペレット、PKS |
佐賀県 伊万里市 |
株式会社伊万里グリーンパワー | 46,000 | 2025年 4月 営業運転開始 |
一般木質 | インドネシア産PKS TESS |
熊本県 宇土市 |
株式会社熊本クリーンエナジー | 1,990 | 2024年 1月 稼働 |
未利用材 | CSネットワーク |
熊本県 八代市 |
合同会社くまもと森林発電 | 75,000 | 2024年 6月 稼働 |
一般木質 | 質ペレット、未利用材間伐材 エネ・ビジョン |
宮崎県 日向市 |
日向バイオマス発電 | 50,000 | 2024年 10月 商業運転開始 |
一般木質 | 木質ペレット、PKS、国産木質チップ 大阪ガス他 |
鹿児島県 志布志市 |
株式会社PMS | 49 | 2024年 3月-12月稼働 |
未利用材 | 49kW×13基 |
出所:経済産業省 事業計画認定情報Webサイト他より
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成