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2012年の動向

2. 国内の動向

(1)バイオマス利用の概要

エネルギー白書2012によれば、2010年に利用されたバイオマスエネルギー(廃棄物エネルギーを含む)は原油換算1,091万㎘で、一次エネルギー国内供給量56,995万㎘に占める割合は1.91%であった【34】。2011年3月末時点の廃棄物発電の施設数は306で、1,221に上る全ごみ焼却施設の25.1%を占める。発電設備容量は合計で170.0万kWである。

また、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)に基づき、2012年度に電気事業者に供給されたバイオマス発電電力は、約42億kWh(4,265,211,910kWh)、同じくバイオマス発電設備認定状況(各設備の容量にバイオマス熱量比率を乗じたもの)は2012年度末時点で認定件数377、発電容量は2,308,119kWとなっている【35】。

木材需給表によれば、2011年の薪炭材等の総需要量は、115万7,000㎥で、国内生産が20万5,000㎥、輸入が95万1,000㎥となっている【36】。

また、全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会の調査によれば、2010年度のバイオディーゼル年間製造量は8,652㎘で、製造コストは97.1円/ℓ(推定概算価格)だった【37】。

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(2)バイオマス政策の概要(FIT・木質バイオマス関連は、トピックスを参照)

政府は、バイオマス活用に関する関係府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)の連携の下、バイオマス活用技術の到達レベルの横断的な評価と事業化に向けた戦略の検討を行うため、2012年2月より「バイオマス事業化戦略検討チーム」を設置し、そこでの議論を踏まえ、2012年9月、「バイオマス活用推進会議」の第5回会合において、「バイオマス事業化戦略」が決定された【38】。

バイオマスのエネルギーポテンシャルは、2020年の利用率目標をすべてエネルギー利用で達成した場合は原油換算1,180万㎘、最大利用可能量であれば、1,850万㎘で、現在の一次エネルギー国内供給量(2010年)のそれぞれ2.1%、3.2%に相当する。また同チームでは、バイオマス利用技術のロードマップを策定し、バイオマス事業化のための7つの戦略として、出口・入口戦略などをまとめた。 さらに、バイオマス発電に関する規制改革の一環として、2013年3月、環境省は「バイオマス発電燃料の廃棄物該当性判断事例集」をまとめた【39】。

一方、2012年11月の行政刷新会議「新仕分け」で、木質バイオマス産業化促進整備事業などが予算計上を見送る評価結果【40】となるなど、2011年2月に発表された「バイオマスの利活用に関する政策評価【41】」以来、バイオマス政策の有効性にもたれている疑問を払しょくするのは容易ではないと見られる。

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(3)メタンガス利用等の動向

FITで40.95円/kW(税込)と、木質バイオマスの未利用材以上に高い買取価格がついたメタン発酵によるバイオガス発電も、企業の参入が相次ぎ、FITでの販売を目した計画が各地で続々と挙がっている。また、下水汚泥の燃料化も進められている。国土交通省もB-DASHプロジェクト【42】として超高効率固液分離技術などの開発や、下水汚泥エネルギー化技術ガイドライン【43】の策定等を進めている。日本下水道事業団は、地方公共団体のバイオガスなど下水道技術上の問題に関する助言・指導・調査・検討を行っている【44】。一般に自治体において、上下水道や廃棄物処理には多額の費用とエネルギーがかかっており、バイオマス利用も含め、コストおよびLCAに優れた処理・利用が行われることが望ましい。

また、新潟県の㈱開成は、食品廃棄物や下水汚泥からメタン発酵を行い、電力は北陸電力に売電し、熱は自社の温室に、液肥は農地に利用し、FITのバイオガスでの初の認証を取得した。同社はその経験を生かし、コンサルタント会社のWEDGE社と組んで、バイオガスのノウハウを伝えるフランチャイズ化を行っている【45】。

㈱開成のプラントのバイオガス発電機

㈱開成のプラントのバイオガス発電機

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(4)これまでの経験を今後のバイオマス事業にどう活かすか

バイオマス事業化戦略における「バイオマス利用技術ロードマップ」において、現状で実用化している技術として、チップ、ペレットなどの固体燃料化、直接燃焼、廃食油からのバイオディーゼル製造などが挙げられており、木質等のガス化、水熱ガス化、BTL、セルロース系発酵は、5年〜20年後に実用化する見込みとしている。

これまでのバイオマス事業では、補助金の一部に「先進的技術」を優遇したことなどから、まだ実用化されていない技術を使うプラントが多数建設され、事業として成立しない事例が続出した。実用化技術に挙げられた木質ペレット製造においても、原木を原料とする場合は、製材の際に出るおが屑を原料とする場合に比べてコストとエネルギーがかさみ、一定の生産量を確保するまでの間、経営を圧迫している例が多く見られる。

また、地域のバイオマス賦存量またはあるいは関係業者へのアンケートなどによる利用可能量をもとにプラントを設置すると、様々な理由から見込んだだけの資源が集まらないために稼働率が上がらず、不採算となる場合もある。さらに、官庁および自治体の公務員が数年で異動を繰り返すことが、安定したバイオマス事業を行う上での障害の一つに挙げられる。

バイオマス利用の状況は少しづつ改善している面もあり、今後、さらに進展を図りながら広がっていくことが期待される。

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