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トピックス 再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)の開始

1. 再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)の開始と概要

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1. 再生可能エネルギー電力買取制度の開始

2012年7月、日本でも再生可能エネルギー電力固定価格買取制度(FIT)が始まった。2012年度のバイオマス発電の調達区分・調達価格(買取価格)は、下表の通りである。調達期間はすべて20年間である。2013年度においても、これらに変更はない。

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表1:バイオマスの調達区分・調達価格(税込)

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表2:バイオマス発電設備認定状況(2013年1月末時点)

認定件数、(2013年1月末までに運転開始した認定設備件数)、認定出力(kW)

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今回の制度のバイオマスに関するポイントでは、以下のような点が挙げられる。

また、バイオマス発電に関して、林野庁は「発電利用に供する木質バイオマスの確認のためのガイドライン」を策定した【2】 。主な内容は以下の通りである。

この中では特に、間伐材などの「未利用木材」が1kWhあたり32円と高い買取価格がつき、林業関係者は沸いた。(実際には主伐材も含んでおり「森林由来木材」と名付けた方が妥当とも考えられる。)林野庁の資料では5,000kW規模のバイオマス発電の整備により、約12億円の電力販売収入があり、使用する燃料の量は概ね10万㎥で燃料購入費が7〜9億円、発電所運営および原料供給で50人以上の雇用を生むとしている【3】。 このFIT制度の開始を受けて、全国で60カ所以上の木質バイオマス発電の計画が検討されている(表3参照)。

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2. 今回の制度の問題点

今回の制度での問題点としては、以下のようなものが挙げられる【4】。

「新制度において個々のバイオマス発電を実際に買取対象とするか否かを判断するに当たっては、①既存用途から発電用途への転換が生じ、既存用途における供給量逼迫や市況高騰が起こらないこと、②持続可能な利用が可能であること(森林破壊や生物多様性に影響を及ぼさないこと。)、③LCA(Life Cycle Assessment)の観点から地球温暖化対策に資すること、等に配慮する必要があり、発電の用に供される個別のバイオマス燃料についてこうした要件をどのように設定、確認することが現実的であるかを踏まえた上で、その方法を具体化する必要がある。

このような確認を行うための判断材料として、個々のバイオマス燃料の由来等を特定可能とするような、トレーサビリティ確保の仕組み等を整備することも重要である。今後、経済産業省において、関係省庁と連携しながら、バイオマス発電の普及拡大に資するよう、適切な対象選定や具体的な仕組みづくりを検討していく必要がある。」

一方、林野庁が2012年3月に発表した木質バイオマスLCA 評価事業報告書【6】では、輸入材の輸送におけるCO2排出量が国産材の2倍程度になるとしている(下図)。生産、加工、輸送にかかる温室効果ガス排出が多いと、バイオマス利用の温暖化対策上のメリットがそがれる結果となる。特にバイオマス発電は発電効率が高くないため、熱利用に比べてこの点でも不利である。

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国内ペレットと輸入ペレットの製造および輸送におけるCO2排出量

図1:国内ペレットと輸入ペレットの製造および輸送におけるCO2排出量
(出所:木質バイオマス LCA 評価事業報告書【6】)

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バイオマスの持続可能性については、液体燃料で先行した取り組みが行われており、日本でも既にバイオエタノールの持続可能性基準が策定・施行されている。固体バイオマスにおいても英国、オランダ、ベルギーで持続可能性基準がすでに策定されており、EUにおいても2013年中の策定に向けて取り組みが行われている【7】。EU環境庁科学委員会は、2011年に発表した資料で、従来のバイオマス政策の前提は間違っており、現行システムの誤りは非常に大きく、このようなバイオマスの利用は、むしろ気候変動を悪化させるおそれがあり、この誤りを正すための条件として、土地利用転換の間接的影響を考慮すること、全炭素勘定(Full Carbon Accounting)を適用し、廃棄物・残材を最優先とし、食料のための土地を変換させないこと、といった内容を挙げている【8】。

現在、計画中の木質バイオマス発電において、買取価格の高い「未利用材」を大量に安定的に調達することは難しいため、輸入バイオマスの使用を考えている事業者も多く、早急な制度設計が必要だと考えられる。

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表3:発表・報道された主な木質バイオマス発電事業計画

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