NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
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2004年の動向
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(1)「バイオガスブーム」の到来
 今はまさに、「バイオガスブーム」といっていいだろう。ちまたに報告書、関連書籍はあふれているし、バイオガス利用に取り組もうとする団体やバイオガスプラントを手がける企業は大小とりまぜて星の数ほどあるといっても大げさではなく、スウェーデンやドイツといった先進地域への視察もまさに「殺到」している状態である。
 では我々は何か手ごたえをつかんでるのだろうか? 明るい未来が開けているのだろうか? 多くの人々の努力にもかかわらず、なかなかその答えが明らかになってこない。
 バイオガスプラントは、二酸化炭素削減、メタンガス削減といった温暖化対策、臭気防止、水質汚染防止、土壌防止などの観点から環境維持に大きく寄与するものであり、相応の優遇策、助成策のもとで推進されるべきものである。

(2)世界で定着するバイオガス利用
 バイオガスの利用の歴史は古く、世界に数多くの利用技術や利用方法がある。とりわけドイツ、オーストリアやスカンジナビア諸国ではエネルギー政策の一角を占めるほど一般的なものとなっている。また、アジアを中心とした開発途上国では昔ながらの方法ではあるが、生活の中に溶け込んでいるなど、それぞれで社会システムの一部となっている。
 日本のバイオガス利用はその狭間にあって、コストと効率性と副産物処理の問題に苦しんでいる。また季節・日時変動などにより単独の安定供給が難しく、実用化、事業化ベースに乗っているものはまだまだ少ないのが現状である。

(3)バイオガスの有効利用を目指して

 バイオガスの効率的な利用には技術開発による小型化が進んでいるものの、100kw/日といった一定以上の発電を可能とするガスと相当程度の熱利用先の確保が必要である。また売電価格が低迷している中で、エネルギーの自家消費が有利となってくる。
 こうした条件を満たしているのは、現時点では大工場、工場団地などでの自家利用である。すでにキリンビール神戸工場を始めとして、数多くのビール工場でUASB(高速メタン発酵)方式などを利用した、有機廃水処理型コジェネレーションシステムが稼動している。また他の有機排水においても、利用技術が相当程度確立しつつあり、食品加工業界などでの導入の動きが進んでいる。
 計画的な生産(廃棄物の発生)が行われる大規模工場での成功を足がかりとして、今後は中小規模の食品加工業や畜産分野などにその応用が広がって行くことが期待される。が、そのためには工場団地など一定エリアでの面的な利用を前提とした、事業化の可能性を事前に検証する可搬式検証装置のより一層の実用化、ガス供給のための都市ガス・LPG併給、大規模コージェネシステムとの組み合わせ、吸着貯蔵などの高効率なガス貯蔵方式などの開発が必要不可欠になってこよう。

■富士ヶ嶺(ふじがね)バイオセンターのバイオガスプラント(提供:上九一色村)


 
「搬入タンカー・ガス貯留層」
 

「ガス貯留・脱硫層
 
 
  「バイオ ガス発電機
 
し尿の好気性発酵後の液肥散布風景
(提供:株式会社モリタ)
 



 「100万人のキャンドルナイト」*1というイベントがある。「スロー・イズ・ビューティフル」の著者である辻信一氏や音楽家の坂本龍一氏らの呼びかけで、2003年夏から始まった。夏至や冬至の夜、8時から10時まで「でんきを消してスローな夜を」と、ロウソクの光で子どもに絵本を読んだり、しずかに恋人と食事をしたり、省エネや平和や、世界のいろいろな場所で生きる人びとのことを思いながらすごすというものである。
 2004年の6月には環境省もタイアップし、小池百合子環境大臣も東京タワーのライトアップを消すイベントに参加。全国239カ所でイベントが開催され、参加者650万人(主催者発表)というお化けイベントになった。

 このキャンドルナイト、レストランやイベント会場、あるいは地域おこしのイベントとの相乗りでどんどん拡がっている。スローな時間をすごすためのキャンドルナイトなら、そのロウソクは化石燃料由来のものではなく、ミツバチの巣を原料とする蜜蝋ろうそく(特に国産の手づくりロウソク)、和ロウソク、植物油のランプなどバイオマス由来の灯りがふさわしいのではなかろうか。さらにそれをきっかけに、家族の誕生日や何かのイベントの際に、バイオマスの灯りをともす人々が増えるかもしれない。各地で菜の花プロジェクトやヒマワリプロジェクトが取り組まれており、その中で蜂蜜の利用を挙げているところもあるが、さらに蜜蝋を手近に使える「バイオマス」として捕らえてみてはどうだろうか。

 また、家庭でできるバイオマス利用として、よく木質ペレットストーブが挙げられるが、薪ストーブや火鉢、七輪、暖炉、囲炉裏、五右衛門風呂、そしてヨーロッパなどでは今でも当たり前に使われている薪をくべる調理用キッチンストーブ*2なども、もっと見直されてもよいのではないか。従来の五右衛門風呂をそのまま使うのは現代生活の中でなかなか難しいと思われるので、例えばペレットストーブに給湯機能をつけるなど、もっと簡便にバイオマスでお湯が沸かせるようアレンジされた商品である。スローライフへの関心の高まりとともに、「炎のある生活」を求める人は増えている。換気や火事などの安全性には充分な注意を払う必要があるが、実は、こんなところにも、バイオマス・ビジネスの芽があるかもしれない。

〈バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき〉

オーストラリア産 キッチンストーブ
(写真提供:株式会社ハーツ東海)
国産の蜜蝋ろうそく 
*1 100万人のキャンドルナイトHP
*2  オーストラリア産 キッチンストーブ
参考文献:深澤光『薪のある暮らし方』創森社