NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
2004年の動向
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2004年の動向
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 京都議定書の第一約束期間が始まる2008年まであと4年となった2004年、バイオマス関連でも実用化に向けて各種の技術開発が進められた。バイオマス関連の会議も多く開催され、世界的には5月にローマで第2回産業・気候保護のためのバイオマス国際会議(兼・第13回欧州バイオマス会議)が、8月にはビクトリアで「熱および化学的バイオマス変換の科学」ワークショップ、デンバーで第8回世界再生可能エネルギー会議および展覧会が開催され、各種の技術の発表が行われた。国内でも8月の日本エネルギー学会大会においてバイオマス関連の発表件数が過去最高件数を記録して3つのパラレルセッションとなったほか、11月のバイオマス関連部会・研究会合同交流会など多くのバイオマス関連の会議が開催された。

 最も興味深かったのは、米国CPC社のバイオマックスの発表であり、数メートル角のパッケージに木材のチップを供給するとガス化を行って数キロワットから数十キロワットの発電を行うことが可能である。我が国のバイオマスは多くの場合一日数トン程度しか集められず、規模が小さいために利用が困難な状況にあるが、この規模に適切な小型発電装置である。ビクトリアとデンバーで同時に発表されたが、効率や長時間運転の実証などの続報が期待される。また、液体燃料についての技術開発も進められており、糖やでんぷんと比べて安価で量の多い木材や草からのエタノール生産技術は日本、カナダ、米国、欧州などで実証を含めた研究が進められている。

 バイオマスの導入は変換技術だけではうまく行かず、収集、変換、利用、廃棄物処理などを含めたシステム的な捉え方が必要である。これに対して、我が国のバイオマス関連技術開発を推進しているNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、各種のバイオマス利用に共通な要素技術開発研究をスタートさせ、バイオマス導入への技術的サポートを進めている。さらに、NEDOでは2050年までのシステム的なバイオマス導入ビジョンを踏まえた技術開発を行うことを考えており、来年度以降、システムを踏まえた実際の導入に直接的に役立つ技術開発がさらに進められることが期待される。

<広島大学大学院工学研究科助教授/日本エネルギー学会バイオマス部会幹事 松村幸彦>


参考:日本エネルギー学会バイオマス部会HP


 バイオマス利用が社会で言い出されて久しいが、なかなかバイオマス利用が進まない。バイオマスは広く薄く散在しているが、炭酸ガスフリーで地球温暖化対策の最たるもので、環境によいと言われている。そしてバイオマスは再生される速度以上の速さで収奪しなければ、ほぼ永久に再生利用でき、原材料として、エネルギー源として持続可能な資源であると言われている。しかし、これまでの地下資源は取り扱いやすく、社会の仕組みが地下資源の活用を前提に組まれていることもあり、且つ技術・コスト的な側面からバイオマス利用促進に弾みがつかない。

 バイオマス利用技術は古典的な堆肥化、木材のペレット燃料化、せいぜいメタン発酵によるエネルギー回収利用などの発酵技術であり、これらを第一世代とすると、ブラジルのサトウキビからのエタノール発酵によるガソリン代替、アメリカでのクリントン前大統領時代からのガソリンへのエタノール製造・混入などの技術、カーギル・ダウ社によるトウモロコシ由来の生分解性プラスチックの製造開始などから見られる技術を第二世代とでもいうところ。

 これからを第三世代とし、これまでのバイオマス技術のブラッシュアップということで、ローコスト化技術開発、そして新しい技術の開発、たとえば急速炭酸ガス吸収植物育成固定技術、重金属を大量に短時間で吸収する植物育成、鉄鋼・非鉄と同物性素材開発、バイオマスへの放射能照射からの素材開発や海洋バイオマスの利用法、バイオミミクリーなどによる新しい視点からが新技術開発のポイントとなるのではないかと考える。つまり従来の地下資源に頼らず、すべてバイオマス由来に代替されるような時代の到来を夢見るものである。

 バイオマスを利用しつくし、経済的にも成立し、社会制度の中へ組み込まれ受け入れられるには、まだまだトリプルボトムライン的には厳しい状況と言わざるを得ない。
 今後、国、企業、学あわせ開発に力を注ぎ、あわせてバイオマス利用社会に転換するような新社会制度改革を行なわなくてはならない。なお、現在のバイオマス利活用技術分類を下記に記すが、もっと多くの技術が出現しないと、2050年に1990年比CO2の70%削減はおぼつかないし、2100年には化石燃料使用ゼロの想定も必要であろう。

表 バイオマス利用技術と原料・生産物
No.
バイオマス利用技術
原          料
生   産   物
ガス化(部分酸化) 一般廃棄物、廃プラスチック、
オイルスラッジ、廃タイヤ、廃油
・発電・熱回収・水素・アンモニア
・酢酸・メタノール・DME 他
メタン発酵 生ごみ、家畜糞尿、食品廃棄物、
農業廃棄物、各種汚泥、廃油
・バイオガス(発電、熱回収)
・水素b液肥
燃焼ボイラ 建築廃材、間伐材、各種汚泥、
食品廃棄物、家畜糞尿
・発電・熱回収
炭化 各種汚泥、生ごみ、家畜糞尿、
木質系廃棄物、 農業系廃棄物、
食品廃棄物
・炭化物・木酢酸
堆肥化 畜糞、生ごみ、各種汚泥、
食品廃棄物、農林漁業廃棄物
・堆肥
木質資源循環利用 建築廃木材、間伐材 ・リグノフェノール(熱硬化性樹脂)
・ポリ乳酸(生分解性プラスチック)
生分解性プラスチック 生ごみ、古米、木質資源、古紙 ・ポリ乳酸(生分解性プラスチック)

〈横浜市立大学客員教授 竹林 征雄〉