国の動き

 2003年は「バイオマス・ニッポン総合戦略」が本格的に始動したこと、RPS法の施行など新エネルギー施策が本格化したこと、バイオマス燃料由来の自動車燃料利用の動きが本格化したこと等、今後のバイオマス利活用に大きな影響を与える出来事のあった年であった(「トピックス」の項参照)。
 さらに、2003年は国と地方の動きの接点として、構造改革特区が正式にスタートしたことでも重要であった。とりわけ、バイオマスを含めた新エネルギー利用の上では、重要なターニングポイントとなりうる「特区」が青森県むつ小川原開発地域(16市町村)及び八戸市(計17市町村)で認定された。
 この環境・エネルギー産業創造特区は、エネルギー最適利用モデルや温室効果ガス排出削減モデルの先進地域として、世界に貢献する「環境・エネルギーフロンティアの形成」を実現しようとするものだが、そのなかでも規制緩和項目として、従来、親会社−子会社など資本関係などがある場合に限定されていた電力の供給形態を、こうした密接な関係がない場合でも供給可能とする制度が導入され、これにより、分散型電源普及のための実証研究やコジェネレーション設備の共同利用、バイオマス発電など新エネルギーの導入促進や事業活動に伴うエネルギーコストの削減などが期待されることになったのは大きな前進と言えよう。現在準備中の事業としては、八戸地域新エネルギー等地域集中実証研究事業等があり、今後の実証結果が待たれるところである。


(出典:青森県「環境・エネルギー産業創造特区について」資料)

 

コラム◇「バイオマス・ニッポン総合戦略策定から1年を経て」
<農林水産省大臣官房環境政策課資源循環室農林水産技官 葛原祐介>

 バイオマス・ニッポン総合戦略が2002年12月に策定されてから1年が経ちました。「バイオマス」は徐々にではありますが、着実にその裾野を広げていると感じています。実際に私どもの職場には、毎日、自治体や企業、NPO、マスコミ、学生の方まで多くの方からご相談が寄せられます。その内容は、「バイオマスって何?」から「こんなプランでバイオマスの利用を始めたいのですが」という具体的なものまで様々ですが、皆さん熱心に話をして頂けるのが何よりも心強く思われます。

 しかしながら、バイオマスの利活用というのは、現状ではまだまだ楽しいことばかりでもありません。一例としてコストの話をすれば、赤字が出なければ御の字というのが正直なところでしょう。そのような状況だけに、実際に地域や企業でバイオマスの利用を始めようという話をされる方を伺っていると、それぞれの方が先の不透明な中で感じている重圧と、それを承知の上でもなおチャレンジしようという熱意を感じざるを得ません。そうした一つ一つの芽が花開くよう、私どもも日々業務に励んでおります。

 一方で、寄せられるご相談の中には、非常に安易と思えるものもあります。例えば、「この規制は面倒だから何とかならないか」、「とにかく施設を建てたいから補助をしてほしい」といったことを言われます。確かにバイオマスの利活用は国家戦略であり重要な事ですが、バイオマスと付けば何を言ってもいいというものではないと思います。いかなる規制にもそれぞれ意味があり、ただ無くせばいいというものではありません。また、国の支援も貴重な税金で賄われているのですから、無鉄砲なお金の使い方をするわけにはいきません。このような話を聞きますと、「あまりありがたくないご声援」と思わざるを得ません。

 バイオマスの利活用を進めるためには、既に出来上がった社会システムを変えていく作業が必要になります。これは一朝一夕でできるものではなく、一人の力でできるものでもありません。試行錯誤を重ねながら、慎重に一つ一つの課題を克服し、多くの人の心を束ねていくという骨の折れる作業だと言えるでしょう。
 このように申し上げると、何やら苦しい話のように思えますが、実は結構楽しく仕事をさせて頂いています。なぜなら、バイオマスに関わるすべての人に共通する思いかもしれませんが、これは「夢」のある仕事だからです。バイオマスは、必ずや地域の活性化や新しい産業の創出につなげられます。しかも、各地の取組みの積み重ねが全体として、温暖化防止や循環型社会の形成に貢献できるわけです。暗い話の多い昨今ですが、今がまさにバイオマス・ニッポンの夜明けと言えるでしょう。これが燦然と輝く太陽となる日を夢見て、皆さんとともにがんばっていきたいと思います。

 はじめに 
 トピックス 
 2003年の動向 
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