はじめに 
 トピックス 
 2003年の動向 
 資料編 

 

企業の社会的責任(CSR)とバイオマスの利用

(1)企業の社会的責任(CSR)元年

2003年は、日本の「企業の社会的責任 (CSR)」元年と呼べるほど、CSRへの関心が高まった年だった。国連のアナン事務総長が提唱するグローバル・コンパクト*(下参照)には、キッコーマン、富士ゼロックス等の日本企業も参加し、その数は増え続けている。
 一定以上の規模の企業において環境報告書の作成が当たり前になってきたが、さらに先進的な企業は、環境だけでなく職業倫理や社会活動など社会的側面も取り入れた「サステナブル報告書」に転換しはじめている。

グローバル・コンパクトの9原則
人権保護、人権侵害に加担しない、団体交渉権の確保、強制労働の排除、児童労働の廃止、雇用差別の撤廃、環境問題の予防的アプローチの支持、環境への責任のための一層のイニシアチブ、環境保全技術の開発と普及の促進
※参加企業はアナン事務総長に 誓約書を送り、活動状況を公開する。

*グローバル・コンパクトについて詳しくは、http://www.unic.or.jp/globalcomp/等を参照

 

(2)原料調達時における社会的配慮

 CSRで最近注目されるのは、本社だけでなく、部品の仕入先や外部発注先の環境・社会的配慮も求める取引先企業(サプライチェーン)問題である。だが、例えば携帯電話に使われるタンタル鉱石が、大量の子ども兵士を使う武装勢力が支配するコンゴで採掘されているが、メーカーが把握しきれていないなど、原料調達の社会的配慮には困難さがつきまとっている。
 一方、リコーが2003年6月に制定した「リコー及びリコーファミリーブランド紙製品に関する規定」では、リコーが定義する「保護価値の高い森林」(原生林、絶滅危惧種の生物が生息する自然林など)の保護のため、制定した規定に従い、仕入先の確認を求め、取引の継続・停止等を決定する。こうした取組みにより、森林保全への配慮がより広い範囲に広がっていくことが期待される。

 

(3)金融界などへの波及

 金融においても2003年10月、みずほコーポレート銀行が、途上国等への大型融資案件に対して「環境・社会配慮」を組み込むエクエーター原則を導入することを発表。また、日本政策投資銀行は、環境格付けにもとづき、環境配慮を行う企業を優遇する融資制度を2004年度からスタートする方針を打ち出した。
 環境や人権、労働問題などに配慮しているかどうかで投資する企業を選択する「社会的責任投資(SRI)」も、今年、特に脚光を浴びた。日本では住友信託銀行が、SRIファンドを設け、2003年12月には、個人向けのSRIファンド投信も発売している。

 また、日本人の経営するベンチャー企業がアマゾンの持続的な農法、アグロフォレストリーでつくられたフルーツに限って提供するジュースバーを開店するなど、消費者にダイレクトに環境や社会への配慮を打ち出す例も出ている(下写真)。
 こうした動きは、バイオマス資源の持続的な利用にも密接な関係がある。今のところ、直接、CSRやSRIでバイオマス利用に言及する例はまだ見られないようだが、今後、地域社会と生態系への配慮を求められる一方で、持続的に利用すれば半永久的に使うことができるバイオマス資源が、「持続的な資源の利用促進」といった形で、CSRに取り込まれる可能性は高いと考えられよう。

(写真提供:クプアス・インターナショナル・ジャパン)