








2026年7月、欧州では気温が44℃に達し、多数の死者が出た。2026年6月の世界の海水温は過去最高を更新し、気候変動を体感する日々である。
一方で、米国トランプ政権は3月にイランを攻撃、石油の大動脈であるホルムズ海峡の航行がままならなくなり、世界経済に大きな影響を及ぼしている。

そうしたなかで、日本でも排出権取引制度が開始され、金融商品取引法等改正法が成立するなど、気候変動対策が進んでいる。この金融商品取引法等の改正では、原則GHGプロトコルに基づいた気候変動開示基準(SSBJ基準)に沿った有価証券報告書の作成の義務付けなどを規定している。2026年1月、このGHGプロトコルの「土地セクター及び除去基準」が公開されたが、この基準では、バイオマス製品を無条件に炭素中立とは見なしていない。はたして、どのようなバイオマス利用が気候変動や生物多様性を含む持続可能性に資するのか、今後も注視していく必要がある。

2026年度より、FIT/FIP制度の1万kW以上の規模における輸入バイオマスなどの一般木質バイオマス区分での新規認定は支援対象から外された。しかし、2025年には一般木質バイオマス発電の稼働容量は488万kWに上り、木質ペレットの輸入量は前年比35%増の864万tと大幅に増加した。PKSと合わせた輸入総額は4,000億円に迫る。日本の木材生産額が3,276億円(2024年)であることを考えると、この金額は、国内の再エネや林業振興に向けるべきだと考えられる。
2025年度のバイオマス持続可能性ワーキンググループでは、輸入木質バイオマスの持続可能性の証明方法に係る確認項目と参考基準をまとめた(2025-2026年のFIT/FIP制度の動向 2.バイオマス持続可能性ワーキンググループにおける検討等)。これまで、実質的に「合法性」に留まっていたことを考えれば前進だが、日本のバイオマス発電が海外の森林破壊や社会への悪影響を回避するには至っていない。EUDRが生産地情報を求めているように、森林認証では持続可能性の担保が確保しきれていないことが明らかになりつつあり、より実効性のある施策が求められる。GHG基準も2022年以前の認定案件では自主的取り組みに留まっているが、しばらくの準備期間の後、義務化することも考えられよう。
また、2025年4月の長期脱炭素電源オークションの制度見直しで、1万kW以上の一般木質等のバイオマス発電は対象外とされたが、2026年度の議論で再び対象とすることが議論されている。輸入バイオマスを使う大型バイオマス発電は、熱利用が困難なため利用効率が低く、GHG排出量も多い。コヤマやダイハツ工業のようにバイオマスを石炭代替として産業用熱利用に使う取り組みも進んでいる(国内の動向 3.国内の利用状況・事例等)。限られた持続可能なバイオマスは、産業用熱利用など他の再エネでは代替が困難な用途へ向けていくべきだろう。

PRIポリシーレポートが指摘しているように木質バイオマスのカスケード利用の最上位は、自然生態系の保全である。気候変動対策として、燃やさないことが最適の選択肢となる可能性も考える必要がある。また、海外のバイオマスをはるばる輸入して日本で使うよりも、生産地での利用に関与することで、環境価値を得る方法もある。さまざまな観点を考慮しつつ、経済的・環境的・社会的に適正なバイオマス利用を追及すべきだろう。

2025年-2026年にかけても、バイオマス産業社会ネットワーク等の環境団体は、精力的に輸入バイオマスの問題に取り組んできた(輸入バイオマスの問題 4.環境団体による輸入バイオマスの持続可能性に関する活動)。特に、2026年3月には、ここ数年の活動で収集した知見をまとめた、書籍『私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策 輸入木質バイオマス発電をめぐって』が築地書館より出版された。6名の執筆者により、燃料生産地の課題や持続可能性の確認方法、算定方法の再検討、今後の木質バイオマス利用などについて解説したものである。本書がこの問題について、広く理解の助けになれば幸いである。


<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>



