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2025年の動向

2. 国内の動向

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1. バイオマス利用等の状況

2026年5月、企業等に環境情報の開示を求める国際的な非営利団体のCDPは、異常気象リスクによる世界経済の損失額が8,980億ドル、約140兆円規模に達する可能性があるとする分析を発表した【*41】

2024年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は約9億9,400CO₂換算tで、前年度比1.9%の減少、2013年度比では28.7%の減少となった【*42】

経済産業省は、2024年度のエネルギー需給実績(確報)を取りまとめた【*43】。最終エネルギー需要は前年比2.0%減の11,280PJで、化石燃料依存度は0.6%減少した。

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令和6年木質バイオマスエネルギー利用動向調査によると、2024年にエネルギーとして利用した木質バイオマスのうち、木材チップの量は1,233万絶乾tとなり、1,150万絶乾tの前年に比べ7.2%増加した。そのうち、間伐材・林地残材等が10.8%増加の545万t、製材残材等が183万t、建築資材廃棄物が390万tであった【*44】

環境エネルギー政策研究所によると、2024年の自然エネルギー電力の割合は26.5%となり、前年の26.1%から微増で、バイオマス発電の割合は6.0%だった【*45】

東京大学の熊谷朝臣教授らの研究によると、日本の森林のCO₂吸収量は年間1億6,900億tとこれまでの推定の約2倍になることがわかった【*46】

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2. 政策等の状況(FIT制度関連についてはトピックス1も参照のこと)

2026年4月より排出権取引制度が開始された。直近3年度の平均排出量が10万t以上の制度対象者は、CO₂の直接排出量等を算定し、届け出をし、移行計画を提出する必要がある【*47】。また、2028年度より化石燃料輸入事業者に対する化石燃料賦課金が開始される。

2026年4月、金融商品取引法等改正案が閣議決定された。2027年4月の施行を予定する。同改正案では、東証プライム市場上場の一定要件を満たす企業に対し、原則GHGプロトコルに基づいた気候変動開示基準(SSBJ基準)に沿った有価証券報告書の作成の義務付けなどを規定している。時価総額の大きな企業から作成を義務付ける【*48】

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2025年9月に大阪で開催された「持続可能燃料閣僚会議」において、液体バイオ燃料、バイオガス、低炭素水素などの持続可能燃料拡大の生産と利用を2035年までに24年比で少なくとも4倍増にする目標を掲げた【*49】

バイオ燃料など次世代燃料の環境価値を明確にする「クリーン燃料証書」の創設が検討されている。資源・燃料分科会脱炭素燃料政策小委員会の第21回会合において、その具体的な制度案が示された【*50】

2026年3月政府は、公的機関が購入する電力を選ぶ入札方式を見直し、地域と共生が図られていない発電施設からの電力の調達を避けるといった内容の環境配慮契約法の基本方針の改定を閣議決定した【*51】

環境省は2025年 再エネ熱利用に関する技術概要を公表した【*52】。バイオマス熱についても事例を含め紹介している。環境省は、2025年度LD-Techリストに木質バイオマスボイラーを追加した【*53】。2026年3月、環境省の再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)の再エネ導入ポテンシャルメニューに、木質バイオマスが搭載された【*54】

第39回J-クレジット制度運営委員会は、バイオ炭使用型コンクリート方法論を新規策定した【*55】

木質ペレット燃料の日本農林規格(JAS0030:2023)が廃止され、2026年6月、新たな規格としてJAS0030:2026が制定された【*56】

2025年11月、固体バイオ燃料及び熱生成バイオカーボン第16回国際会議が東京で開催された【*57】

御殿場市は、自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和に関する条例を制定した【*58】。バイオマス発電も対象。函館市は再エネ発電施設の設置および管理に関するガイドラインを制定した【*59】

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3. 国内の利用状況・事例等

2025年から26年にかけて、バイオマス発電の環境価値の提供等が相次いで始まった(表6)。

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表3:環境団体による輸入バイオマスの持続可能性に関する主な活動一覧

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イーレックスは、2025年度長期脱炭素電源オークションにおいて11.2万kWのイーレックス新潟(仮称)で落札した【*70】。2026年8月、ブラックペレット初の国産製造拠点である福島パルムシーが福岡県葛生村で稼動した【*71】。リコーは調達する再エネ電力由来の評価制度を、生物多様性や資源循環、地域社会への配慮、人権、土地の有効利用も評価項目に加え、厳格化する方向で見直す検討に入った【*72】

ライノフラックスは、独自の「湿式ケミカルルーピング」技術を用いた1kWプロトタイプで木質バイオマス等による連続運転を実施し、累計240時間を超える安定運転達成した。独自技術で含水率の高い燃料でも高い発電効率を実現し、純度99.9%のCO₂を回収できることが確認された【*73】

木質ガス化CHPを販売していたウェグシャイトエントレンコが破産した【*74】。On-site Reportによると、同社のCHPは85基がFITリストに登録され、そのうち22基がすでに稼働している。

国際NGOスティールウォッチは、世界の鉄鋼企業の脱炭素化をスコアカードで示した。鉄鋼企業18社のスコアリングでJFEスチールは12位、日本製鉄は17位だった【*75】

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長野県のコヤマは、バーク(樹皮)やキノコ菌床由来のバイオブリケットをコークス代替として自動車部品製造で利用している(表紙写真)。石炭コークスと同程度のコストに抑え、現在、年間600tを使用している【*76】。コヤマで確立した技術を用い、2025年11月、ダイハツメタルとダイハツ工業は、ダイハツメタル出雲工場の鋳造設備であるキュポラ溶解炉での使用を開始した【*77】。2025年12月、アイシン高丘は、インドネシア西カリマンタンにPKSを原料とするバイオ成型炭燃料「Bio-M-Coke」生産工場を開業した【*78】

2026年4月、UCCグループのホーマーコーポレーションはコーヒーかすを燃料とするバイオマスボイラーを導入した【*79】。北海道帯広市の武田鉄工所は、小麦くずなどの農業残渣を燃料に活用する小型バイオマスバーナーを製造・販売している【*80】

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2025年10月、エア・ウォーターは長野県松本市にバイオマスガス化プラント、メタン発酵プラント、スマート陸上養殖プラント、スマート農業ハウスの4つの設備で構成される「地球の恵みファーム・松本」を本格稼働させた【*81】。戸田建設は、2.5kWの食品残渣を燃料とするバイオガス発電機を開発した【*82】。2025年8月、住友重機械エンバイロメントは、有機排水からバイオガスを製造する好気性消化ステムBIOIMPACT-ACを販売開始した【*83】

大阪ガスなどは、大阪府吹田市の三井ショッピングセンターパークららぽーとEXPOCITYにおいて、米国産バイオメタンの環境価値証明書を付与したカーボン・オフセット都市ガスを利用することに合意した【*84】。東京ガスなどは、海外産メタンを原料とした都市ガスを2026年度より供給することを合意した【*85】

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北海道のIT企業、HBAは、北海道鹿追町の実験圃場で、ジャイアントミスカンサス(オギススキ)の初収穫を実施した【*86】。ドローンを活用した圃場周辺の害獣監視やロボットソリューションによる農業支援など技術導入の検証を進める。

伊藤園などは、静岡県において茶殻とコーヒーかすを原料としたバイオ炭を製造し、静岡県の契約茶園で散布するバイオ炭循環モデルを構築した【*87】。ホンダトレーディングは、複数の農家を取りまとめてツル・ツタなどの有機系廃棄物からバイオ炭を製造し、農地に施用する同社のプロジェクトが、J-クレジット制度認証委員会で認証されたと発表した【*88】。熱海市の未来創造部は、流木や間伐材を効率よく資源化する密閉式製炭炉「未来炭化ユニット」を開発した【*89】

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日本航空は、マスバランス方式を採用したバイオマスプラスチックを25%使用した貨物固縛用ストレッチフィルムを順次導入する【*90】。廃食油等を燃料とするSAF製造時の副産物であるバイオマスナフサを原料とする。 東洋紡は、業界初の100%植物原料由来のポリエチレンフラノエート(PEF)フィルムを開発した。2026年6月よりサンプル提供を開始する【*91】

山陽製紙は、出がらし茶葉や赤シソの残渣などの廃棄物をアップリサイクルする販促物の制作を行っている【*92】

京都府福知山市は、下水汚泥を固形燃料として再資源化し、石炭の代替燃料として活用する「汚泥有効利用施設」福知山終末処理場汚泥有効利用施設を整備した【*93】

竹イノベーション研究会は竹の利用促進のため、関係者の組織化、商品・製品の紹介、新技術の紹介など様々な活動を行っている【*94】

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4. 国内の持続可能な航空燃料(SAF)・液体燃料の動向

持続可能な航空燃料(SAF)官民協議会は、SAF導入促進に向けた基本方針を取りまとめた【*95】。国土交通省の持続可能な航空脱炭素化に関する有識者会議において、空港を徴収主体とし、航空会社が利用者から代行徴収する空港インセンティブ方式の検討を開始した【*96】

鈴与商事とENEOSは、富士山静岡空港にてフジドリームアイランズに現物のSAF供給に代わるSAF環境価値の提供を実施する【*97】。日本製紙等は、国産木材由来SAF向けバイオエタノールプロジェクト「森空プロジェクト」に2023年から取り組んでいる【*98】。製紙会社とベンチャー企業、商社、川上・川上企業が参画し、2025年7月に、「森空バイオリファイナリー合同会社」を設立した【*99】

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JR東日本は、同社施設から排出される廃食油を原料とするバイオディーゼル燃料を、業務用車両の一部などで使用する【*100】。2025年11月、西日本鉄道は、国内初の100%廃食油等由来次世代バイオディーゼル燃料による営業列車を岡山エリアで運行を開始した【*101】。ユーグレナが供給している軽油に廃食油を原料とする水素化処理植物油(HVO)51%混合した「サステオ51」が、東急バスの路線バスに導入された【*102】

2025年12月、兼松などは、外航船舶向けにバイオ混合燃料の供給を開始した【*103】。2025年9月、伊藤忠商事は、日本郵船に対しバイオマス由来の低炭素メタノール燃料を販売し、韓国蔚山港での供給を実施した【*104】。商船三井ほかは、インドネシア南カリマンタンの炭鉱跡地で油糧植物ポンガミアの試験栽培を開始する【*107】

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コラム⑥ バイオ炭を活用した
地域循環型カーボンマイナスエコシステム

1.はじめに

近年、気候変動対策として「ネガティブエミッション技術(NETs)」への関心が世界的に高まっている。その中でもバイオ炭(Biochar)は、農業廃棄物・林地残材・竹・籾殻といった地域の未利用バイオマスを熱分解(炭化)することで炭素を長期固定しつつ、土壌改良・カーボンクレジット創出を同時に実現できる多目的技術として注目されている。そのため、地域の未利用バイオマスを起点としたバイオ炭製造・施用を通じた地域循環型開発モデルの構築が求められる。

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2.バイオ炭の多面的効果

2.1 炭素固定効果

植物は光合成によって大気中のCO₂を取り込む。通常、枯死した植物体は微生物分解により炭素が再放出されるが、350〜700℃での嫌気性熱分解(炭化)により、バイオマスに含まれる炭素の約50%を安定した固体炭素として土壌中に数百〜数千年間固定できる。これは比較的低コストで地域において実施可能な技術であり、世界全体で年間最大3億4,000万t-CO₂の除去ポテンシャルを持つとされる。

2.2 土壌改良材としての効果

バイオ炭の多孔質構造は土壌の保水性・通気性・陽イオン交換容量(CEC)を向上させ、肥料成分の溶脱を防ぐ。土壌微生物の生息地ともなり、菌根菌等の有益微生物を増やす。さらにカドミウム・鉛などの重金属を吸着・固定し、作物への移行を抑制する効果も確認されている。農業グレードでの標準的施用量は1〜5t/ha(作土層20cmとして容積比0.25〜1.25%)であり、砂質土や酸性土壌での改善効果が特に顕著である。

2.3 カーボンクレジット創出

国のJ-クレジット制度などの認証スキームに基づき、バイオ炭による炭素除去クレジット(方法論AG-004)を申請することができる。バイオ炭カーボンクレジットは炭素削減にとどまらない炭素除去手法であり、国内外で注目が高まっている。今後、地域における社会実装を通じたマネタイズの可能性は大きい。

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3.地域循環型開発モデル(カーボンマイナスエコシステム)の構築

バイオ炭を活用した二酸化炭素除去を実現するためには、システムの社会実装が必要である。カーボンマイナス(ネガティブ)エコシステムの全体像を以下に示す。関係するステークホルダーとして、提供サイドにはバイオ炭生産サイドと貯留サイド(農地貯留)が、活用サイドにはカーボンオフセットサイド(企業)とブランド活用サイド(農作物等販売)が挙げられる。またそれぞれのステークホルダーをつなぐプラットフォームとして、2022年に立命館大学内に日本バイオ炭コンソーシアムを設置した(図)。

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図:バイオ炭を活用したカーボンマイナスのプラットフォームとビジネスエコシステム

図:バイオ炭を活用したカーボンマイナスの
プラットフォームとビジネスエコシステム

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4.おわりに

現在、立命館大学日本バイオ炭研究センターでは、バイオ炭規格の改定に向けた研究を進めており、日本国内はもとより東南アジアを中心としたバイオ炭品質規格の共通化を企図して国内外の研究機関と共同研究を行っている。また、2030年の二酸化炭素削減の節目に向けて、日本バイオ炭コンソーシアム会員らとともに、バイオ炭による二酸化炭素除去の社会実装の一層の促進に取り組んでいる。

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<立命館大学日本バイオ炭研究センター名誉センター長(上席研究員) 柴田 晃>

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