








2025年においても一般木材バイオマス発電の稼働が相次ぎ(コラム①参照)、木質ペレットやアブラヤシ核殻(PKS)の輸入量はさらに増加した。木質ペレットは2024年の638万t から2025年には864万tに35%増と大きく増加し、PKSは600万tから710万tへと18%増加した(図4)。木質ペレットはベトナムからの輸入が7割増の568万tと大幅に増加し、全体の2/3を占めた。木質ペレットとPKSの輸入量の合計は1,574万tとなり、合計輸入額は3,948億円に上った。CIF平均価格はPKSが20.3円/kg、木質ペレットが29.0円/kgと2024年よりやや下がったが、依然として高止まりしている。

図4:PKSおよび木質ペレット輸入量の推移
※木質ペレットの2023年以前では、マレーシア、インドネシアは「その他」に含まれている。
出所:On-site Report No.691ほかよりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

2025年のマレーシアからの木質ペレット輸入は47.2万tとなっている。2026年の1-4月の4カ月間で19.3万tであり、このペースであれば年間60万t近くになると推定される。2025年の日本のペレット輸入の2/3がベトナムからだが、ベトナムからもこれ以上増やすことは簡単ではなく、北米からの輸入が増やしづらい状況の中で、インドネシア、マレーシアなど東南アジアからの輸入が増加傾向にある。

日本はマレーシアのサラワク州から木材を輸入してきたが、従来から違法伐採をめぐる問題が指摘されてきた【*14】。サラワク州の木材輸出収入は近年、低下しているが、木質ペレットの出荷量は2025年に前年比で60%増加しており、日本が貿易額の過半数を占めている【*15】。2025年7月、環境団体バイオ・フューエル・ウォッチは、オランダに輸入されているSBP認証を受けたマレーシア産木質ペレットが、オランダのバイオマス持続可能性基準SDE++に準拠しない可能性について申し立てを行った【*16】。
また、サラワク州で活動する複数のNGOが、大手木材会社サムリン・グループについてFSCに苦情を申し立てた。これは、違法木材の違法伐採または取引、伝統的および人権の侵害、高い保護価値の破壊、および2017年から2022年までの間に森林を植林地または非森林利用に著しく転換することに関連している。

HUFFPOSTに掲載された記事によると、マレーシアの大手木材企業シン・ヤン・グループ傘下のZedtee社がサラワク州の先住民の同意を得ずに先住民族の伐採を行い、コミュニティが抗議すると、同社は土地を奪うために住民を追い出そうとした【*17】。
持続可能性リスクが高いサラワク州のような地域由来の木質ペレットは、SBP、PEFCといった森林認証を取得しているだけでは持続可能性を担保することは困難なケースがあり、きめ細やかなデューデリジェンスが求められよう。

2026年6月、メコン地域の環境問題を扱うローカルジャーナリストのメディアであるMekong EYEは、日本等へ輸出しているベトナムの木質ペレット工場の公害について報じた【*18】。ベトナム中部のペレット工場付近の住民は、粉塵や悪臭の被害に遭っている。副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、その他の呼吸器系の病気の症例が報告された。

2025年8月、下関バイオマス発電所の荷役・陸上運送を請け負っている港湾事業者の倉庫内で輸入木質ペレットによる火災が発生した【*19】。同年12月、佐賀県唐津港でレノバが輸入したベトナム産木質ペレットから火災が起きた。燃料の陸揚げをする前に貨物船の船上および荷下ろしした積み荷からも出火したとされる【*20】。2026年3月、バイオマス混焼を行っている中国電力の新小野田発電所で、灰の吸引作業をしていた作業員が生き埋めとなり、病院に搬送されたが死亡した【*21】。
相次ぐ木質ペレット関連の火災・爆発事故に対応して、2026年2月経済産業省は、発電用火力設備に関する技術基準を定める省令等の一部改正を行った【*22】。主な改正内容としては、燃料の受入設備、貯蔵設備及び運搬設備について粉じんの除去や着火源の対策、燃料の発酵による自然発火の防止に係る技術基準を追加し、バイオマス燃料の受入設備、貯蔵設備及び運搬設備について、新たに破損事故の報告対象として追加した。
カーボンフロンティア機構は、令和6年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(バイオマス発電設備の事故防止のための調査)事業報告書を2025年3月に公開した【*23】。同年12月、調査内容を簡潔にまとめた「バイオマス発電設備の事故防止のための有効対策」も公開した【*24】。

2026年6月、「バイオマス発電に関する防火・防爆指針」【*25】が発行された。火力原子力発電協会がまとめたもので、243頁にわたって木質バイオマス発電における安全対策やリスク低減対策などについて詳述されている。木質ペレットの取り扱いでは、①長期保管で自然発熱・発火の怖れ ②積み付けの高さが高すぎるとリスクも高まる ③衝撃を加えると粉化するため、搬送速度や落下高さなどペレットの取り扱いに注意が必要 といった課題を挙げ、木質バイオマス発電設備の安全対策として、受け入れ設備、貯蔵設備、搬送設備、燃焼設備、集塵装置等その他の共通設備それぞれについて、具体的な対策を示している。また、リスクアセスメントについて、具体的なリスク低減対策事例項目を挙げ、44の事例の事故シナリオとそれら事故のリスク低減対策事例を記述している。管理のための定量的数値例としては、木質ペレットの貯蔵期間をバンカーでは14日間、サイロでは原則60日とするといった事例が紹介されている。


筆者ら地球・人間環境フォーラムでは、現地の状況をより深く理解するために、2025年8月と26年5月にスラウェシ島ゴロンタロ州のペレット生産地を訪問した。

ゴロンタロ州の位置
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インドネシアからの木質ペレット輸入量は、2023年から25年の3年間に6.7万tから40.5万tと6倍以上に急増した。輸入ペレットの約半分はスラウェシ島北部にあるゴロンタロ州から来ている。秋田県より少し小さい州に約120万人が暮らし、トウモロコシやココナツ、米生産などの農業が主要産業で、インドネシアの中でも貧困率が高い州のひとつとされてきた。

スラウェシ島は、東南アジアとオーストラリアの境界にある“ウォーレシア・ホットスポット”の一部で、コンサベーションインターナショナルが指定する「生物多様性ホットスポット」の一つである。地学的・地理的に特異な成り立ちと生物学的な隔絶により、その地域にしか生息しない「固有種」が極めて多く、生物多様性が特に高い場所として知られ、スラウェシ島にはIUCNなどが定めたKBA(Key Biodiversity Area:絶滅危惧種や固有種の生息に極めて重要な地域)が393カ所も存在する。

ゴロンタロ州も例外ではなく、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストによると、少なくとも哺乳類10種、鳥類4種、爬虫類2種、両生類1種の絶滅危惧種と、哺乳類5種、爬虫類1種の準絶滅危惧種が生息している可能性がある。ゴロンタロ州の森は「高い保護価値:HCV1(種多様性:絶滅危惧種や固有種を含み、生物多様性が極めて高いエリア)」に該当する。スラウェシ島の固有種には、バビルサ、セレベスツカツクリ、クスクスの他、メガネザル10種以上、8種のマカク(サルの仲間)などがいる(写真)。近縁の種が複数に分化して今も進化を続けており、近年も哺乳類の新種が見つかっていて「進化の実験室」とも呼ばれている。

写真:熱帯林に生息するスラウェシの絶滅危惧種(クマクスクス、クロザル)
©地球・人間環境フォーラム

ゴロンタロ州には現在2ヵ所の木質ペレット工場があり、4ヵ所の「エネルギー植林コンセッション(HTE)」がペレット原料を供給している。HTEの面積は合計10万haに及び、2025年だけで2000ha(山手線内の1/3の面積)以上の熱帯林がペレット原料として伐採され、早生樹への転換が進められている。これらのHTEは複数のKBAに隣接するバッファーゾーンに位置している。

スラウェシの熱帯林を伐採した原料で生産された木質ペレットは、日本と韓国に向けて輸出され、インドネシア国内では利用されていない。日本では木材を燃焼した際に排出される、石炭燃焼からの排出量よりも多いCO₂は、「過去に森林が吸収した」ものであるとしてゼロとカウントとされている。熱帯林を大面積で伐採し、早生樹の単一植林に替えて4-5年置きに伐採を繰り返すこの仕組みは、絶滅危惧種を更なる危機に追いやり、熱帯林が長年蓄えた大量の炭素を燃焼により瞬時に大気中に放出し、失われた森は二度と回復することはない。
ゴロンタロ州のペレット生産地では、法的義務である環境影響評価の公開が行われないまま事業が進められている。また地域住民がペレット企業に対して住民への利益分配を求めるデモを行っており、この5月には複数の逮捕者が出て1ヵ月間拘留されるなど、地元住民との紛争と言える状態に陥っている。
この例はインドネシア各地で数十件あるペレット輸出を目的としたHTEの一つであり、他のコンセッションにおいても類似の問題が起きている可能性がある。日本の政府や企業が推進するSDGsの15.2の目標は「森林減少を2020年までに食い止める」である。私たち日本の「再生可能エネルギー」のために熱帯林の伐採が続く現状は早急に解消される必要がある。

<地球・人間環境フォーラム 飯沼 佐代子>

バイオマス産業社会ネットワーク、地球・人間環境フォーラム、ウータン・森と生活を考える会、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、マイティ・アース、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)等の環境団体は、協力して輸入バイオマスの持続可能性に関わる活動を続けてきた。
2025年後半~2026年前半にかけての主な活動は、表3の通りである。
表3:環境団体による輸入バイオマスの持続可能性に関する主な活動一覧


地球・人間環境フォーラムやバイオマス・アクション・ネットワーク等の環境団体は、2025年10月、レポート「バイオマスに投じられる巨額の資金:森林ではなく補助金を削減すべき理由」を発表した【*26】。英国、韓国、日本等は、2002年から2024年までの 22年間で、バイオマスに対して約 2,500億ドルの補助金を支出した。

2025年7月、世界の4つの環境団体は、レポート「持続可能なバイオマスプログラム(SBP):持続不可能なものを認証する」を発行した【*27】。SBPは日本のFIT/FIP制度においても輸入木質バイオマスの持続可能性を確認する方法として認められているが、同レポートにおいてSBPは、森林監査の実施がない、炭素排出を無視している、原生林の伐採を容認している、先住民族の同意が充分でないといった点を指摘し、グリーンウォッシュとなっていると指摘している。



2026年4月1日、資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン」と林野庁「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」が改正された。
海外の日本向け燃料生産地では、天然林・原生林由来の丸太がペレットに加工され、伐採後に単一樹種の植林が行われる事例が報告されている。また、北米の多くのペレット工場では、環境法令違反が広範に繰り返され、規制値を超える大気汚染物質の排出により地域住民に健康被害が生じている。2025年度も、国内外のNGOから、日本政府や関連事業者に対して生産地の問題を訴える要請書が相次いだ(トピックス2 表3参照)。

要請書の内容としては、日本政府(経済産業省・林野庁)宛では、●天然林由来の燃料を支援対象から除外すること ●森林から加工工場・港までの完全なトレーサビリティと情報公開を義務化すること ●環境法令違反や地域住民の健康被害を引き起こしている燃料の支援対象からの除外 ●認証制度への依存を見直し、事業者によるデューデリジェンス実施を義務化すること である。
「生物多様性ホットスポット」である、インドネシア・スラウェシ島のペレット生産および調達に関与する日本の事業者に対しては、以下の要請が行われている。●固有種および絶滅危惧種リストの公開 ●生態系の保全・回復措置の詳細な説明 ●木質ペレット生産のための熱帯林伐採、熱帯林(天然林)由来のペレット調達の停止。

しかしながら、今般のガイドライン改正でも、天然林・原生林の伐採や植林地への転換、大気汚染・環境法令違反と関わる燃料の排除が明記されず、実効性のある規制は先送りされた。大きな問題として、こうした持続可能性の証明を「認証制度」に依存している点がある。生産地で起きている前述のような問題は、認証だけに頼っていては対応ができない。
改正ガイドラインでは、FSC、PEFC等の森林認証に加えて、新たにGGL(Green Gold Label)とSBP(持続可能なバイオマスプログラム)の利用が認められているが、これらは、森林管理の現場で持続可能性を審査・認証している制度ではない。SBPでは、他の森林認証において最低限のリスク評価や合法性確認しかされていない「管理木材」を、厳しい基準をクリアした森林管理認証材と同等に「持続可能」と認めていることが指摘されている。また、GGLは、欧州では「廃棄物や残材を使っている」と事業者が報告すれば、ペレット工場の監査をせずに認証を与えていることが報告されている。

PEFCは国別認証との相互認証を行っており、認証の基準や現場の監査体制の厳格さは、国や地域によって差異が大きい。世界的に最も信頼されているFSCの森林管理(FM)認証であっても、インドネシア・スラウェシ島ゴロンタロ州など絶滅危惧種が多数生息する保護価値の高い森林が認証されている事案が報告されている。ベトナムの木質ペレット業者がFSC認証偽装により認証を取り消されたように、事後的に認証が取り消される例もある。また、これら認証制度(FSC、PEFC含め)の基準では、加工工場の環境法令違反・大気汚染が規制の対象となっていない。
改正ガイドラインのその他の課題は下記のとおりである。詳細はウェブページをご覧いただきたい【*】。

他のペレット輸入国(EU諸国、イギリス、韓国など)が持続可能性への懸念から規制を強め、補助金削減・停止の動きを見せている。日本は2027年には世界最大の木質ペレット消費国になるとみられ、今後、海外の森林と地域社会に与える影響と責任は、ますます大きくなる。日本政府も、ガイドラインの規制・基準強化を通じて、輸入木質バイオマス発電の支援削減・廃止に向けた道筋を検討する必要がある。

<地球・人間環境フォーラム 鈴嶋 克太>





